「産業保健新聞」を愛読されている方のほとんどは、まだまだ働き盛り世代と思いますが、皆さんはご自身の高齢期であったり、はたまた定年退職した後について考えたことはありますか。
かつて日本の定年は55才が一般でしたが、現在は60才のところが多いですね。
また、最近では公的年金の支給開始年齢の引き上げや改正高年齢者雇用安定法、労働力の不足などから、定年年齢は65歳へと移るところが増えています。
人生100年時代という言葉もすっかり聞きなれましたが、自分自身の65才から先のイメージがはっきりできている方は本当に少ないと思います。
もちろん私もまだまだ未知の領域です……。
今回は、人間の老年期(高齢期)のパーソナリティについてわかりやすくご説明します。

老年期のパーソナリティ

そもそも老年期に特有のパーソナリティは、果たして存在するのでしょうか。
研究者であるニューガーテンたちは、アメリカのとある地域の老人を対象として約7年間、面接や心理テストを行い、加齢に伴うパーソナリティ変化を研究しました。
その結果、中年期から老年期にかけて比較的安定した共通の4つのパーソナリティ類型、すなわち「統合型」、「装甲ー防衛型」、「受身的ー依存型」、「非統合型」があらわれました。
また、ライチャードたちによる定年退職後の適応分析でも同様の結果が見出されました。
定年退職は大きな転換点ですが、その後の適応に最も強く関係するのは、やはりパーソナリティであったといわれています。
ライチャードたちは具体的に5つのタイプを見出しました。
以下ではこの5タイプを詳しくみていきます。

老年期における適応的なタイプ

最初に老年期における適応的なタイプを3つご紹介します。

円熟型
円熟型は、自分自身を現実的に受容できているために、老年期にたやすく適応できます。
また、日常の活動と自分のもっている人間関係に、純粋な喜びを見いだせています。
さらに人生を報いのあるものと感じており、過去を悔やんだり、現在の喪失を嘆くことなく年老いることができているといえます。
つまり、現在にベストを尽くそうと努力する傾向があるのです。

ライチャードたちは、対象とした老人のなかで、このタイプに入る者が最も多いとしています。

安楽椅子型
安楽椅子型は一般に受身的で、社会人としての責任から自由になれたことを喜び、満足しています。
年老いることは、不利をもたらすよりは安楽な満足をもたらすものと感じており、加えて他者に依存できる環境があり、それを楽だと感じています。

装甲型
装甲型は、年老いることの不安が強く、防衛的な傾向を発達させているタイプです。
仕事や活動を持続させることによって、身体的衰えや無力感から自己を防衛しています。
若いものには負けないと強く思う傾向があり、このタイプでは年齢が増すにつれて葛藤が深まることになるのです。

ライチャードたちは、以上の3タイプを適応的なものと考えた。

老年期における不適応的なタイプ

次に、 不適応的なタイプを2つご紹介します。

憤慨型
憤慨型は、人生の目的を達成できなかったという思いに苦渋を感じているタイプです。
憤慨型に分類される人たちは、年老いるということと自分とを調和させることができないでいます。
そして「あのとき、あいつがああ言うから」などと過去のある出来事や他者に対して強い怒りを感じているのです。
概して、振り返り、失望と挫折感を感じているタイプといえます。

自己嫌悪型
自己険悪型が過去を振り返り、失望と挫折感を感じているタイプです。
「あのとき、私がああしなかったならば」というように、その責任を自らに課し、自らを責め、自らの不幸を嘆いています。
年老いるにつれ、不満感と自分が無価値だという思いが強まり、うつ的になっていく傾向がみられます。

また、加齢によって変化すると考えられるのは、自己認知や他社認知といった認知的側面といわれています。
たとえば、歳をとるにつれて、男らしさや女らしさといったものにとらわれなくなったり、内面化の増大で自分を振り返るようになり、外界に対する関心は減少していくとされています。
もちろん、身体的な衰え、失病、そして認知症の発生率は年齢が高くなるにつれて上昇します。
来るべき老年期を迎える前に、皆さんも今のうちから「自分自身のライフサイクルを受け入れる」ということを大切にしてみてはいかがでしょうか。