家庭犬しつけインストラクター西川文二氏の「犬ってホントは」です。

クリッカーを知っていますか?  しつけに使う道具で、犬だけでなく、猫や他の動物にも使われています。これがしつけだけでなく、愛犬と飼い主さんの良好な関係づくりに役立ち、さらには両者の幸せホルモンも増えるとか! 今回は、まだまだ知られていないクリッカートレーニングの良さをお伝えします(編集部)学習理論を理解するのに最適と、前回紹介したクリッカートレーニング。
ご存知ない方もおられるかと思いますので、どういったものかを搔い摘んで紹介しましょう。
クリッカーとは、しかるべき場所を親指で押すとカチッと音がする道具のことです。
このカチッという音を鳴らしてすぐにフードをあげる。クリッカートレーニングは、まずこれを繰り返すところから始まります。
フードをあげると「やったぁ」と犬は喜びます。
「クリック音→フード」。これを繰り返すと犬はやがて、クリック音を耳にした時点で、「やったぁ、フードが出てくるぞ」と喜ぶようになるのです。

次に教えたい行動に対してクリッカーを鳴らす

「クリッカーの音」イコール「フードが出てくる前触れ」、と犬が理解したその先の流れは、以下のようになります
具体例を示した方がわかりやすいかと思いますので、亡くなった初代パートナードッグ「Pooh」に「おじぎ」を教えた手順を記しましょう。
「おじぎ」とは、プレイバウの姿勢のことです。バウはおじぎを意味するので「おじぎ」とよんでいるわけです。
実はプレイバウとほぼ同じ姿勢を、犬は伸びをするときにも見せます。
「Pooh」の場合はクレートから出てくると、必ずといっていいほどこの伸びの姿勢を見せていました。
そこで、伸びの姿勢を取るタイミングに合わせてクリック音を鳴らしてフードを与える。何度もやっているうちに、「Pooh」は伸びの姿勢をすると、クリック音が鳴ってフードがもらえると理解します。結果、私の前で頻繁に伸びの姿勢を見せるようになる。そういうことです。

合図を教えていく

さらに今度は、伸びの姿勢を取る直前に、合図(先行刺激といいます)をつけていきます。
「Pooh」は私の前で伸びの姿勢を頻繁に取るわけですが、先行刺激のないときの伸びの姿勢にはクリッカーを鳴らさないようにするのです。当然、フードも出てきません。
するとどうでしょう、先行刺激のないときに伸びの姿勢を取る頻度は減っていき、先行刺激(=合図)のあるときは確実に伸びの姿勢を取るようになっていくのです。
「おじぎ」自体は、もちろんクリッカーを使わなくとも教えてはいけます。
でも、クリッカーの方が、タイミングを逃さず効率よく犬に好ましい行動を伝えられ、学習理論の理解も深められます。
クリッカートレーニングでは、行動を理解するまで言葉を発しません。すなわち、ノイズ(ノイズに関しては前々回のコラムVol.18を参考に)を極力排除できる。だからこそ、犬の理解も早いのでしょう。
加えて、学習理論のひとつである“三項随伴性”、「先行刺激→行動→結果(=いいことが起きるなど)」も飼い主は身を持って体験、学習できます。だからこそ、学習理論の理解も深まる。そういうことなのです。

幸せホルモン(オキシトシン)の増加も起きているはず

メリットは他にもあります。
飼い主のことをよく見る犬と接している、そうした関係の飼い主と犬、両者のオキシトシンが増えることがわかっています。
クリッカートレーニングを理解している犬は、飼い主のことをキラキラした目でよく見るようになるのです。
すなわち、クリッカートレーニングは、飼い主と犬とのオキシトンの増加に、必ず貢献している。そういえるわけです。
あ、そうそう、思い出した。
かれこれ15年ぐらい前でしょうか。いぬのきもち本誌の付録にクリッカーがついてきた、なんてこともありました。
付録にクリッカーを再び! ぜひとも本誌の方で企画してほしいものですね。


文/西川文二
写真/Can ! Do ! Pet Dog School提供

西川文二氏 プロフィール

公益社団法人日本動物病院協会(JAHA)認定家庭犬しつけインストラクター。東京・世田谷区のしつけスクール「Can ! Do ! Pet Dog School」代表。科学的理論に基づく愛犬のしつけ方を提案。犬の生態行動や心理的なアプローチについても造詣が深い。著書に『イヌのホンネ』(小学館新書)、『いぬのプーにおそわったこと〜パートナードッグと運命の糸で結ばれた10年間 』(サイゾー)、最新の監修書に『はじめよう!柴犬ぐらし』(西東社)など。愛犬はダップくん(14才)、鉄三郎くん(10才)ともにオス/ミックス。