人と違い、言葉を話さない犬にとって、「噛む」ことは意思表示のひとつ。人の手や足を噛むのには必ず理由があります。そのため、噛みグセを直すためには、犬が噛む理由を考えて原因を取り除くことが大切です。

今回は、成犬に起こりがちな事例を解説しつつ、噛まれないための予防法をお伝えします。

※噛みグセの対策は危険を伴います。不安を覚える方は、愛犬が噛んでくるときの力の強さにかかわらず、ドッグトレーナーや犬の行動治療にくわしい獣医師に相談しながら行ってください。

犬が噛む、よくある理由


「遊びの延長で噛んでくる」ケースや「飼い主さんの関心を引こうとして噛んでくる」ケースではない場合、犬は噛むことで飼い主さんに対して「NO!」と意思表示している可能性が高いです。
たとえば、よくあるケースに、愛犬が苦手なお手入れを「無理やり」続けたり、愛犬が大切にしているものを「無理やり」取り上げたりすることで噛むようなった、という事例が挙げられます。

一度「噛んで嫌なことを避けられた」という経験を犬が積むと、「噛むことが有効」だと犬は学習します。何度も繰り返していると噛みグセがついてしまい、噛む行動が定着することもあります。

「噛まれるような状況をつくらない」ことが大切

噛みグセを直す・悪化させないためには、まず「噛まれるような状況をつくらない」ことが大切です。

また、今まで噛まれたことがなかったのに、突然噛まれた場合、体調不良が原因で「触られるを嫌がっている」こともあります。特に高齢の場合は、病気の関連にも注意が必要です。

このようなケースでは、根本的な原因を取り除かないことには、噛む行動は直りません。まずは病気の治療に専念し、触られるのを嫌がる部位はあまり刺激しないようにしましょう。

ここからは代表的なケースをさらに詳しく解説し、「噛まれないために行うべき」予防法をお伝えします。

首輪を付けるときに噛んでくる理由と予防策


首輪やリードを付けるときに噛んでくるケースは、体を拘束されることに対して嫌悪感や恐怖心があり、それを避けたいと思って噛んできている可能性が高いです。
このようなケースで噛む場合、犬は「体の拘束」を嫌がっているので、洋服を着せるときや足を拭くときにも噛むようになることもあります。
時間はかかりますが、首輪の装着を嫌じゃない・怖くないと分かってもらえるように、徐々に慣れさせる必要があるでしょう。

首輪や触られることに慣れさせる練習を

慣れさせるためには、日常的に首輪まわりを触る練習を行いましょう。リードをつけなければならない本番ではなく、別の機会に練習することがポイントです。

やり方は、おやつを手に持って、犬が自分から近づいてきたときに、首輪付近を軽く触り、おやつを与えます。犬が自ら近寄ってこない場合や、触ろうとするとうなる場合は、中止してください。

また散歩に行く前に首輪やリードをつけるときは、おやつを使って気をそらす方法がオススメです。愛犬がおやつを食べている間に、サッと首輪をつけるようにして、噛まれることを回避しましょう。噛む経験を積めば積むほど、犬の噛む行動は定着するので、繰り返しになりますが「噛む経験をさせない」という意識が大切です。

おもちゃを取ろうとしたときに噛んでくる理由と予防策


愛犬が大切にしているものを無理やり取り上げ、「返してもらえない」経験を積ませると、「飼い主さんは大切なものを奪う存在」と教えることになってしまいます。「無理やり」を繰り返すほど、愛犬は飼い主さんへの不信感を強めて、余計に守ろうとして噛むように。これはおもちゃだけでなく、ボールペンや靴下なども同様です。

「噛む経験」を積ませないためにも、飼い主さんが取り上げなければならないものは、愛犬に与えないように、拾わせないようにすることが一番です。誤食しそうなものは愛犬が見つけられない位置に置き、取ろうとするとうなったり噛んだりするような執着するおもちゃは渡さないようにしましょう。

「交換」や「離して」の練習を

愛犬がものを守って離さないときの対応は、愛犬が好きなおやつを与えて「交換」するように。一方的にものを奪われるよりも、おやつをもらえることで、犬も納得しやすいのです。

また、「離して」のコマンドを教えることもオススメです。あまり執着しないおもちゃで「交換」を繰り返し、「離して」と飼い主さんが言ったら、くわえているものを離すように練習しておくといいでしょう。

やり方は、「離して」と言い、おもちゃを離したらおやつを与えます。このときのポイントは、愛犬がおやつを食べたら、再びそのおもちゃを与えて遊ばせることです。そうすることで、愛犬からの信頼度も増すでしょう。

犬が噛む理由はさまざま。困ったら専門家に相談を

今回はよくあるケースと予防策を紹介しましたが、実際はいくつかの原因が重なり噛んできている場合もあるので、自己判断は慎重に。
噛んでくるときの強さや、そのときの様子によって、飼い主さんの対応も異なるので、迷ったときはドッグトレーナーや獣医師(行動診療科)などの専門家に相談しましょう。

参考/「いぬのきもち」2020年8月号『こんなとき愛犬に噛まれました』(監修:獣医行動診療科認定医・奥田順之先生)
イラスト/えのきのこ
文/ichi