「世界3大投資家」の一人とされるジム・ロジャーズ氏の本誌連載「世界3大投資家 ジム・ロジャーズがズバリ予言 2020年、お金と世界はこう動く」。今回は金融危機の最中で投資家がするべきこと。



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 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、世界的に株価が暴落している。こうした金融危機の時には、自分の知っているもの以外には決して投資しないことが肝要だ。

 もし、私が何かを「10」で買うように助言して、それが「20」になったとしたら、あなたは自分がどれだけ賢いかを自慢して回るだろう。その時は、助言したジム・ロジャーズの名前は決して出さない。

 でも、その時の選択が正しかったとしても、自分で導き出したわけではないので、「この先もっと買うべきか、ここで売るべきなのか」という次の一手がわからない。

 逆に、もし、私が言う通りに「10」で買ったものが、「5」に半減したとする。その時は、「ジム・ロジャーズほど愚かな人はいない」と文句を言うだろう。

 金融危機の局面でも「大丈夫、まだ買える」と考えることができる場合もある。しかし、もし何も知らないのであれば、何もしないことが一番いい。成功した投資家の多くは何もしない時間が長い。座って待って、何かを見つけたら、10年でも20年でも成長を待つ。だから成功した投資家の多くはたいてい何もしていないのだ。

 最も気を付けなければならないのは、買ったものが「10」から「100」になったような時だ。売って儲けを出した後も、「もっと何かしなければいけない」と思ってしまう人がいるが、それをやってはダメだ。こういう時は何もしてはいけない。

「ビーチでリラックスする」「窓を閉めて何もしない」「落ち着いて忍耐強くなる」など、他に何かを見つけるまでは何もしてはいけないのだ。投資家にとって、とても大事なことなのだが、それを守れる人は少ない。

 ドイツ人であっても、ロシア人であっても、日本人であっても、たいていは、「いつもゲームに参加していないといけない」と思ってしまう。投資家の悲しい習性だ。投資で一番大事なことはお金を失わないことである。資本を守るには、お金を作り出すことが極めて重要だが、まずは「お金を失わない」というルールを守らなければならない。

 私は安くて、落ち込んでいるものを買うのが好きだ。こうすれば、もし間違った選択をしたとしても、多くを失うリスクはないからだ。そして、誰も知らなかったり、注意を払っていなかったりするものを買う。チャンスは、人々が見過ごしているところに生じる。「何か面白いことが起きているか?」と聞いて回り、それを探し出せれば、必ず儲けが生みだされるものなのだ。

 ホットティップ(とっておきの情報)を欲しがり、今週金持ちになりたいと欲し、他人が言うことを何でも信じてしまう。そういう投資家は、自分の知らない分野にお金を投じるという愚かな行いを犯してしまう。

 もし、人生で合計20回しか投資ができないのなら、誰もが、もっと慎重になるだろう。インターネットの情報を見るだけで済ますのではなく、友達の話だけを信じずに、自分がよく知っているものだけを買うだろう。でも、多くはインターネットやテレビや新聞を見て、「私にも今できるはずだ」と思い込む。実はマーケットで金を儲けるのはそんなに簡単ではない。ほとんどの人が儲けられないのは、努力不足のまま、簡単に早く見つかる答えを求めるからだ。

 結論として、「何かをよく知っていない限り、投資はしてはいけない」「人生で20銘柄しか買えないと思い、慌てて行動せずに、とても慎重に何を買うかを決める」。これが実行できれば、投資家として成功するだろう。

(聞き手/守真弓・朝日新聞シンガポール支局長 構成/本誌・小島清利 監修/小里博栄)

※週刊朝日  2020年4月3日号