『君の名は。』で名を上げたRADWIMPSの強力新譜!

『君の名は。』で名を上げたRADWIMPSの強力新譜!

 野田洋次郎率いるRADWIMPSが2年ぶりにニュー・アルバム『ANTI ANTI GENERATION』を発表した。音楽的な幅を広げ、果敢でたくましい姿勢を鮮明にした力作だ。



 話題のシングル「サイハテアイニ/洗脳」をはじめ、昨年のフジテレビ系のサッカーのテーマ曲となった「カタルシスト」、映画『空海−KU−KAI−美しき王妃の謎』主題歌の「Mountain Top」など、話題満載の曲が収録されている。

 本作でかぎを握るのは「洗脳(Anti Anti Mix)」と「PAPARAZZI〜*この物語はフィクションです〜」の2曲。

「洗脳」は、シングルとは異なるミックス。価値観の違いからお互い相いれない人間関係がテーマだ。MVでは“天使”のようなバラの花を抱えた白い衣装の少年と、“悪魔”のようなナイフを手にした黒い衣装の少年が登場し、人間の持つ二面性を表現している。

 わらべ歌「あんたがたどこさ」を引用し、“肥後”を“庇護”と置き換え、“どこ贔屓かってんで えっさほいさ生きた結果”と歌う。そのシニカルな一節はいかにも野田洋次郎的だ。

 育ててくれた母への感謝を口にしながら、“はみ出し”者と言われて逆上し、母親が動かなくなるまで殴り続けたと語り、“たとえそれが血のつながった肉親であろうと許すわけにはいかないのです”と狂気的な一節に続く。

「PAPARAZZI〜」は、野田が本作のリード・トラックにするべく主張したが、スタッフの意見で却下されたという曲だ。

 父親の職業についての作文を宿題として出される寸劇の「<宿題発表−skit−>」に続いて親子の会話がはじまる。父親の職業は“役者さん、ミュージシャン、スポーツ選手や著名人 家の前だとか仕事場でも どんなところだって張り付いて その人の日々の監視する”仕事で、記事にして“世間のみんなに知らせる”。“体力も根気もなきゃいけない とても大変な仕事”だと父親は語る。

“『君の名は。』の大ヒットが起こるとすかさず出てくるゲスなやつ”という一節からも明らかなように、野田自身の身の上に降りかかった体験をふまえての歌詞だろう。

“息子さん、苦節10年 成功してよかったですね”と親を直撃した記者に“ポッと出で出てきたわけじゃねぇ こちとらメジャーで10余年 こんな変わり者の俺の音楽を待ってくれてるファンたちと 絆を一つずつ作り上げ 毎度アリーナツアーやってんだ、バカが”とずいぶん威勢がいい。その結末は聴いてのお楽しみ。トラップ・スタイルを採り入れたバック・トラックにも注目される。

 野田が歌う通り、RADWIMPSの歴史は短くはない。結成は2001年。03年にインディーズ・デビューし、05年に2作目を発表。翌年の3作目『RADWIMPS 3 〜無人島に持っていき忘れた一枚〜』がメジャーから発売された。以後、『RADWIMPS 4 〜おかずのごはん〜』(06年)、『絶体絶命』(11年)、『×と○と罪と』(13年)といったアルバムや、「オーダーメイド」「DADA」などのヒット曲を生んできた。

 ヴォーカル、ギターの野田が作詞、作曲を手がける。求愛の心情を様々に表現する一方で、ユニークな曲名などが物語る通り、ユーモアやウィット、風刺や皮肉の利いた歌詞も特徴だ。最近ではヒップ・ホップとロックの融合を試みるなど、幅広い音楽展開も見せてきた。

 とはいえ、お茶の間でも知られるようになったきっかけは、大ヒットしたアニメ映画『君の名は。』の音楽を手がけたことだ。「前前前世」はじめ4曲の主題歌がビッグ・ブレイク。それ以前には地上波でのテレビ出演など皆無だったので、「PAPARAZZI〜」の記者氏はバンドの足跡をご存じなかったわけだ。

 さて、本作では3曲のコラボ曲も話題を呼んでいる。ONE OK ROCKのTakaと共演した「IKIJIBIKI feat.Taka」は、スピーディーでストレートなロック・ナンバー。どうやらセックスにおける男女の駆け引きを歌っているらしいが、真意のほどは不明。

 あいみょんとの「泣き出しそうだよ feat.あいみょん」は、ピアノをフィーチャーしたバラード。別れた恋人を思い続けている切ない追憶をテーマにしている。野田の伸びやかな歌と、あいみょんの素直で率直な歌が合っている。

 ニューヨーク在住のラッパーのMiyachiとSOIL & “PIMP”SESSIONSのタブゾンビを迎えた「TIE TONGUE feat.Miyachi,Tabu Zombie」ではタブゾンビのトランペットが鮮烈だ。

「Mountain Top」では、野田が『君の名は。』以来魅せられたというストリングス、オーケストレーションを採り入れている。

「万歳千唱」と「正解(18FES ver.)」は、NHKが昨秋に放送したテレビ番組『RADWIMPS 18祭』のために書き下ろした。

 前者は、17〜19歳の“18歳世代”の1千人と一回限りのステージを作り上げるという趣旨にちなんで“三唱”でなく“千唱”としたのだろう。アイリッシュ・テイストを織り込んだマーチ風の演奏をバックに歌われる。

 後者は、番組で収録された音源をそのまま収録。合唱曲が書きたかったという願いがかなったという。“答え”がある問いばかりを教わってきた学校生活を葬り、“僕だけの正解をいざ 探しにゆくんだ”“制限時間は あなたのこれからの人生”“採点基準は あなたのこれからの人生”と歌われ、“よーい、はじめ”と、新たな旅立ちを告げる言葉で締めくくられている。

 本作に収められたコラボ曲、映画提供曲、合唱曲などは、いずれも以前の彼らにはなかった試みであり、成果をもたらしている。

 昨年の横浜アリーナ公演を収録した映像作品『Road to Catharsis Tour 2018』も発売中。「ます。」「おしゃかさま」「棒人間」といった旧曲が目立つ中で、注目すべきは本アルバムに収録されなかった「HINOMARU」だ。“戦争を想起させる”などと批判され、物議を醸した曲だ。演奏に先立ち、野田が真意を説明している。アメリカで暮らしていたころに目の当たりにした自国を愛し、誇りに思う姿勢に触発されたことが同曲を書くきっかけだったと明かしている。生まれた国を愛するという率直な思いながら、“御霊”などといった歌詞がうさん臭さを伴う“愛国歌”と見なされて批判を被ったわけだ。ともあれ、見逃せない映像作品だ。(音楽評論家・小倉エージ)


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