門脇麦「監督から『昨日と顔が違う』とよく言われる」

門脇麦「監督から『昨日と顔が違う』とよく言われる」


 AERAで連載中の「いま観るシネマ」では、毎週、数多く公開されている映画の中から、いま観ておくべき作品の舞台裏を監督や演者に直接インタビューして紹介。「もう1本 おすすめDVD」では、あわせて観て欲しい1本をセレクトしています。

*  *  *
 チワワちゃんが死んじゃった。でも誰もチワワちゃんの本名を知らなかった──。岡崎京子原作の映画「チワワちゃん」は、友人の死をきっかけに若者が自分たちの生きた「瞬間」を振り返っていく物語だ。



 門脇麦(26)は「死んでしまったチワワちゃんがどんな子だったか」を、仲間に聞いて歩くミキを演じる。

「ミキ役はつかみづらい役でした。まず私自身、彼女たちのようにクラブで遊ぶような経験をまったくしてこなかったので。それに主人公だけれど、ミキが何を考えているかは、実は脚本にも描かれていなくて」

 役をつかむきっかけになったのは、衣装だ。

「衣装合わせで試行錯誤した結果、白いTシャツにパーカなどのシンプルな服装で収まりました。そんな格好で遊びに行けるミキは、実は自信と『核』があると自分では思っている人なのかな、と。私もグループ内で一歩引いて俯瞰しているようなところがあるので、そこはミキに似てるかもしれません」

 時代を超えて支持される岡崎京子作品への想いもある。

「時代が岡崎さんにようやく追いついた感じがしました。岡崎さんは華やかなスポットライトを浴びている人と、そういう人たちの『終わり』みたいなものをよく描いている。それはいまSNSでガッと火が付いて、でもパッと消えてしまう──そんな感覚にすごくリンクすると思います」

 自身の青春は4歳から始めたバレエだった。だが中2で道を断念し、高校時代は家でひたすら映画を観続けた。

「目標を失って『次の道を見つけなきゃ』と必死でした。何かを作ることに参加したくて、俳優を志したんです」

 デビュー後はさまざまな役に体当たりしてきた。いつも役によって印象が違う。「キメ顔」など作らず、どう撮られても気にしない──そんな自由さと、覚悟を感じる。

「覚悟というより、出来ないしよく分からないだけだと思います。私、左右で顔の骨格が違うんです。監督にも『昨日と顔が違う』ってよく言われます。でもいろんな見られ方をしていただけるのはこの仕事をする上でありがたいことだと思っています」

◎「チワワちゃん」
撮影当時26歳の新鋭・二宮健監督作。成田凌、村上虹郎など若手実力派が集結した。18日(金)から全国で公開。

■もう1本おすすめDVD 「愛の渦」

 門脇麦の名を世に知らしめたのは、やはり三浦大輔監督の「愛の渦」(2014年)だろう。全編123分のうち着衣シーンがわずか18分30秒、という設定も話題になった。

 あるマンションの一室に集まった男女8人。気弱なニート青年(池松壮亮)、茶髪男(新井浩文)、メガネの女子大生(門脇麦)──「セックスをする」だけの目的で集まった彼らは、緊張のなかで会話を始め、互いを探り合う。そして“行為”がはじまるが──?

 裸になった人間の会話から本音が露わになるシュールさ。重なる肉体と、つながらない心の滑稽さ。第50回岸田國士戯曲賞を受賞した劇団「ポツドール」の舞台を主宰者の三浦が自ら映画化し、「チワワちゃん」のプロデューサーでもある岡田真がオーディションで門脇を選出、三浦も門脇に惚れ込んだという。

 門脇は内気そうで実は性欲の強い女子大生を、大胆な濡れ場と繊細な芝居の振り幅で演じ、多くの新人賞を獲得した。朝の光のなかの痛烈なエンディングも利いている。

◎「愛の渦」
発売元:東映ビデオ
販売元:東映
価格3800円+税/DVD発売中

(ライター・中村千晶)

※AERA 2019年1月21日号


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