また一人、往年の大スターが鬼籍に入った。

 1月21日、自宅で亡くなっているのが発見された宍戸錠さん(享年86)。「エースのジョー」として人気を呼び、赤木圭一郎、石原裕次郎、小林旭らと日活全盛期のスクリーンを彩り、悪役・敵役として時には主役よりも注目を浴びたものだ。



 そして映画界が低迷するや、軸足をテレビへ。ドラマだけではなく、バラエティー番組にもいち早く進出した。中でも「元祖どっきりカメラ」(1970〜89年、日本テレビ系)の司会者、だまし役は今でも語り草である。

 宍戸さんの後輩・日活ニューフェース第4期生で「元祖〜」では、赤いヘルメットの謝罪役だった野呂圭介さん(86)が振り返る。

「忘れられないのは、70年9月26日の放送。錠さんが白バイ警官になりすまして白昼、飲酒する、というシチュエーションでした。現場は新宿南口・甲州街道沿いにあった、角打ちができる酒屋。制服姿で現れるや升酒を飲み干して、何も知らない店主や居合わせたお客がどんな表情を見せるか……?」

 事前に決まっていたのは、ディレクターの合図で、野呂さんが番組の看板を持って現場に飛び出し、宍戸さんとともに店主にネタバラシする段取りだけ。

「錠さんが堂々と升酒をあおるもんだから、ビビった店主が110番したらしい。すぐに近くの交番から警官2人がすっ飛んできたのが見えたので、僕らは慌てて逃げたものです(笑)」

 しばしば番組のわなにかかり“カモ”にされた林家ペーさんは、真剣に司会に取り組んでいた姿を忘れられない。

「元々、大俳優ですから、台本にないアドリブやリアクションは苦手だったと思います。それでも根が真面目だからでしょうね。収録中は上着のジャケットに汗がにじむくらい緊張し、それでいて周囲にすごく気を使ってましたよ」

 酒豪で鳴らした錠さんとの酒席が思い出と語るのは、ペーさん同様に番組でよくだまされたガッツ石松さん(70)だ。

「俺はそれほど飲まないんだけど、ウマが合ったんだな。銀座のクラブ順子とかよく行ったよ。ブランデー、ウイスキー、錠さんはなんでもござれ、グイグイ飲む。でも酒で失敗した、なんて見たことがない」

 人気タレントにもかかわらず、腰が低かったという。

「ホステスさんであれ誰であれ、偉そうな言葉遣いはしなかったなあ。セクハラもしないしね。色恋より、お酒を飲むのが好きだったんだろうな」

 ロケディレクターなどで番組に関わった日本テレビの小杉善信社長(65)は「衷心よりご冥福をお祈りいたします」として、本誌に当時の思い出を寄せた。

「私が関わった中で錠さんの最高傑作は、スナックからヤクザの事務所に1分以内で模様替えするネタです。お客さんがトイレに行ったすきにその店をヤクザの事務所に模様替えするという大がかりな“どっきり”で、錠さんは大親分に扮し、『ここをどこだと思っとんのじゃ!』と、戻ってきた客にすごむというものでした。当然、お客さんは目をシロクロ、返事もしどろもどろ……ということで大爆笑大成功でした」

 数々の伝説を残し、宍戸さんは星になった。(高鍬真之)

※週刊朝日  2020年2月7日号