3月17日に最終回を迎えた「10の秘密」(フジテレビ系)。主演の向井理をはじめ、仲間由紀恵、渡部篤郎など、名だたる俳優陣が出演していたとあって、話題を集めた作品だった。しかし、このドラマで最も注目されたのは主題歌を担当したシンガーソングライターの秋山黄色(24)かもしれない。



 秋山は、3月4日に発売された1stアルバム「From DROPOUT」でメジャー・デビューしたばかりの新人アーティスト。ドラマの主題歌「モノローグ」は、秋山がドラマ用に書き下ろした楽曲だ。2月からYouTubeで公開されているMVは、すでに動画再生回数900万回を突破している。16日に放送された「CDTVスペシャル!卒業ソング音楽祭2020」(TBS系)では、ブレイクを予感させるアーティストとして紹介され、生放送で圧巻のライブパフォーマンスを披露。番組内で音楽プロデューサーの蔦谷好位置は「ロックシーンを引っ張っていくような存在」と高評価し、音楽誌「ROCKIN’ON JAPAN」の山崎洋一郎編集長は「ミュータントのようなエイリアンのような、新しい時代の新しい才能。本物のロックアーティスト」と絶賛した。

 音楽メディア以外への露出が極端に少ない秋山がAERA dot.のインタビューに応じた。

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――日増しに注目度が高まっていると思います。今の自分の現状をどう感じていますか?

 素直に嬉しいです。でも僕としては一年前と何も変わっていないのが正直なところです。本人って意外とそういうのが分かりづらいというか、周りよりもあまり感じられていないのかも。ただ、自分が思っている以上の反応が返ってきてるっていうのだけ、肌感覚でなんとなく伝わっています。

 たまに「曲にすごく救われました」なんて言われることもあって嬉しいんですけど、僕は救う気なんてまったくないんです。僕の曲は、独り言みたいな歌詞もあれば、優しい歌詞もあるしバラバラ。色んな作り方をしているので、感じ方も人それぞれだと思う。僕が積極的に思いを届けようと思って書いてる歌詞のほうが刺さる人もいれば、そうじゃない歌詞が刺さる人だっている。そう考えると聞いてる人がどう思うかは僕のコントロールの範疇にないと気がしますから。でも、刺激を与えようかなって思って作っている曲は多いので、ちゃんと狙い通りに届いてるんだなって思えて嬉しいですね。

●「モノローグ」制作秘話「人から頼まれた曲って絶対答えがある」

――話題となっている「モノローグ」はドラマ主題歌のために書き下ろしたそうですね。難しさはありましたか?

 正直にいうと、かなりとまどいましたね。ドラマの制作サイドからも細かいオーダーみたいなものがいくつかありましたし、誰かにオファーされて作曲すること自体も初めてでしたから。でも指示されたポイントさえちゃんとおさえていけば、意外と簡単にできるだろうと考えてはいたんですけど、最初出来上がった曲が全然好きになれなかった。決定的な何かが足りなかったというか……もう絶望しましたね。

 歌詞に関しても、一人の感性では絶対ダメだと思ったので、とにかく周りからヒントを得ようと、一緒に作業しているチームに「ここはどうなんでしょうか?」とか「パッと聞いてどう思います?」みたいなすり合わせを嘘だろっていうぐらいとにかく繰り返して、少しずつ正解に近づけていった感じです。

 人から頼まれた曲って絶対答えがあると思うんです。その人がビビッとくるものが必ず。普段の曲作りには答えってないので、究極的に自由というか、曲が良い悪いもない。だから、「モノローグ」に関しては、そういう言い訳が一切できなかったので、だいぶ苦しみました。でも結果的に良い作品になったと思います。

――「モノローグ」は日本語訳で「独白」。曲にはどんなメッセージが込められていますか?

 主題歌って、テレビの映像とともに流れるっていうイメージがすごい強くて……そんな状況だと、歌そのものが独立して、ストレートに言葉を伝えることって不可能なんじゃないかなと思いました。だから、言葉で分かってくれっていうんじゃなく、態度で共感してくれっていう歌詞にあえてしています。

 内容に関しては「ああすればよかった」「こうすればよかった」っていうことの連続。普通、歌詞って、曲の最後あたりである程度の落とし所みたいなものつけるんです。例えば、「色々あった……でも、がんばろう」みたいな。今、日本で支持されている曲って、そういう歌詞の流れみたいなものがあるんですけど、「モノローグ」はひたすらずっと悩んでいる。わかりやすくいうと、めちゃくちゃ後悔してるんです。でも、それでいいんですよ。心の中で後悔することって腐るほどあるし、それをただ単純に「頭に思い浮かべるだけ」なのと、「自分自身に問いかけること」って全然別物。結局、「独白=モノローグ」も自分との対話になってるんだよっていうこと。それをするかしないかが重要なんです。それを乗り越えた時に、また新たなステップが見えてくるんだよっていうのが伝わったらいいなって思っています。

●「From DROPOUT」って僕の中ではポジティブな意味

――先日、1stアルバム「From DROPOUT」が発売されました。なぜ、このタイトルに?
 
 これ、ぶっちゃけるとかなり突貫で決まりました。「そろそろタイトル決めようね」って空気感がだんだん流れてきて、すごい苦しいなって思ってて……(笑)。当初は、メジャー感のある明るくて“希望”っぽいタイトルにしようとは思ってたんですけど、なかなか決まらないから、先にCDのジャケットを作ってみたんです。元々僕が友達と一緒に写っている写真をベースにしたんですけど、これが思いの外、よく出来て、すっかり気に入っちゃって(笑)。決して明るい絵じゃないんですけど、作っている時もすごい楽しかった。だから、この絵にはメジャー感のある言葉って合わないなと思って、結局、ジャケットから連想してタイトルをつけました。

 アルバムタイトルからはすごい落ちこぼれみたいなのを想像するかもしれないけど、僕の場合は単に迷惑をかけてきた人。誰がみてもわかりやすく不幸な人ってわけでもなく、別にそれが面白く消化されているわけでも悲劇のヒーローってわけでもない。しょうもない部類なんです。ただ僕は特別ではない自分に悲観してるわけじゃない。「From DROPOUT」って、僕の中ではポジティブな意味。今までの自分に結局後悔してるかしてないかだと思う。僕はまったく後悔していないので、このタイトルで良かったなって思っています。

●ロックな奴ってロックしか作らないからロックって棚に置かれるだけ

――そもそも秋山さんが音楽に触れたきっかけは?

 あんまり覚えてないですけど、たぶん、小学生低学年くらいの時、友達のウオークマンで、ロックバンド・BEAT CRUSADERSの「HIT IN THE USA」を聞いたのが初めて音楽に触れた瞬間ですね。それ以来、ずっと狂ったようにイヤホンで音楽を聞いていたのを覚えています。

 楽器やバンドに興味を持ったのは、アニメ「けいおん」の影響です。「けいおん」が放送されていたのは、僕が中学2年生の時。「けいおん」で描かれている世界って日常系っていわれるアニメで、当時の僕からするとタイム感がすごいリアルだったんです。同じアニメですが、たぶん「BECK」だったらそこまで影響されなかったと思います(笑)。ちなみに高校生の時は、米津玄師さんの「diorama」ってアルバムを毎日聴いて登校していました。

――秋山さんの音楽はロックと称されることが多い印象ですが、ご自身のジャンルって何だと思いますか?

 僕はJ−POPなんですかね? 自分ではそこまでジャンルって意識していません。

 ロックってことでもないし、ロックっていわれるであろう曲はありますけど、ヒップホップの時もあるし。ジャンルって、たぶん曲ごとだと思うんです。ロックな奴ってロックしか作らないからロックって棚に置かれるだけ。ヒップホップもR&Bの人もそう。

 これからは僕みたいにジャンルがバラバラなアーティストって今後いっぱい出てくると思うから、そういう棚を用意してほしいですね。

――これまでの活動で最も印象に残っている出来事はなんですか?

 メジャー・デビュー前に渋谷の「TSUTAYA O−Crest」でやった自主企画ライブですね。あの感覚は今でも鮮明に思い出せます。想像していたよりもすごい多くのお客さんがきてくれたんです。自分の曲をもうすでにお客さんが知っているっていう光景って、いざ目の当たりにすると、現実味がないというか、けっこうすごいなって。

 それ以前にもライブ活動はしていましたけど、一つ前のライブは3人しか人いなかったし。その反動も影響しているのかもしれません。とにかく衝撃でした。その後も、規模の大きいライブには何度か出させてもらいましたけど、あのライブは忘れられません。

――最後に、今後の目標を教えてください。

 どうありたいかっていうのは特にないですね。最近、僕はよく思うんですけど、音楽さえあればもう何もいらないんです。仕事って「お金」がテーマだったりもすると思うんですけど、僕は音楽が目的であってお金は手段に過ぎない。でも仕事って音楽が手段でお金が目的になるでしょ? 僕は、よく分からない偉人のおっさんが印刷されたものに、そこまで興味はないです。最低限は欲しいけど(笑) 僕は音楽で終わりでいいんです。

 そもそも、僕は音楽を仕事と思ったことはありません。他のメディアでも自分を「自称・無職」って語っていたりもするんですが、あれは「音楽を仕事と思っていないから僕は無職みたいなものだよ」っていう意味なんですね。これ、けっこうよく勘違いされてて困ります(笑)。他人からしたら、アーティストだし、作曲家だし、バンドマンだったりもしますけど、仕事っていう意識ではない。もちろん曲を作るうえでの精神的な負担はありますけど、仕事っていうレベルには達していないんですよ。要するに僕はかっこつけて「自称・無職」って言ってるんだよっていうのをわかってほしい(笑)。アーティストなんて、みんな無職であるべきってことなんですよ。

(構成/AERA dot.編集部・岡本直也)