お笑いコンビ「ナインティナイン」の岡村隆史が4月23日深夜放送のニッポン放送「岡村隆史のオールナイトニッポン」で話した内容が物議を醸した。



 翌週30日には相方の矢部浩之が登場し、1時間以上に及ぶ公開説教をしたこともまた大きな話題になった。

 何か事があった時、世間の誰よりも一番の身内が厳しく批判する。これは危機管理の一つのセオリーであり、それによって“ガス抜き”がなされる場合も多い。

 普通に考えれば、今回もその作用を考慮した部分も幾分かはあったはずである。

 しかし、吉本興業、ラジオ関係者、芸人仲間らいろいろなところを取材してみたが、矢部の心の内側までははっきりと見えてこない。

 ただ、今回のことがあり、まず筆者の頭に浮かんだのが、2013年に矢部浩之と元TBSの青木裕子アナウンサーが婚姻届を提出した時の話だ。

 提出翌日の3月28日、矢部は取材に対し「その日になったのは彼女の意向で。大安の日やったんで、そうしようと」とサラリと説明したが、実はその裏には矢部の強い思いがあった。

 2013年3月27日。これは矢部の結婚記念日であるとともに、また別のものがスタートした日でもあった。フジテレビがインターネット向けの放送を標榜して立ち上げた「ゼロテレビ」の放送開始日。その中の番組の一つが「めちゃ×2ユルんでるッ!」だった。

 同番組は、タイトルからも推測できるように岡村と矢部が出演していたフジテレビ「めちゃ×2イケてるッ!」のスピンオフ的な番組で、司会は岡村隆史。

 このゼロテレビを立ち上げたのが「めちゃイケ」を生み出した同局の看板プロデューサーだったのだが、当時、そのプロデューサーの身辺に変化があった。

「番組制作の看板プロデューサーとして長らく活動していたのですが、畑違いの部署に異動になった。そこで立ち上げたのが『ゼロテレビ』。岡村さんが開局の目玉番組の司会に手を挙げたのは、もちろんプロデューサーへの恩義を感じてのことですし、そこで、矢部さんも自分にできる最大の恩返しが何なのかを考えたようです」(スポーツ紙デスク)

 長年、芸能界の話題となっていた自らの結婚をそこで発表すれば、当然世間の目が集まる。同時に、発表の場となったゼロテレビにも大きな注目が集まる。

■危機管理を超えた「本気」

「めちゃユル」に矢部が登場したのは3月27日午後11時ごろ。婚姻届を提出したのが同午後10時ごろ。夫婦になって1時間ほどで番組に出演している形だ。夫婦になりたてホヤホヤの状態、最も“旬”の状態で出ることがより一層、番組の値打ちを高めることにもなる。あらゆるところに「少しでもプロデューサーのためになれば」という恩返しの強い気持ちが表れていた。

 大切な人に何かあった時には、自分にできる一番のことを考え、それを実行する。一方、存在が大きくなればなるほど、あらゆる摩擦も生まれ動きづらくなる。今回、再びそれをやりきった矢部の姿勢からは危機管理を超えた本気がにじみ出ていた。

 20年以上、お笑いを間近で取材してきて、断言できることが一つある。

“いい人が売れる”

 売れるということは「またこの人と仕事がしたい。次も呼ぼう」がずっと続く状態のことを指す。面白いことはプロとして当たり前。それがなければ、プロ以前の問題。

 プロの中から、使いたいプロを選ぶ。これを選ぶのが人間である以上、芸人にとって、人間性というパラメーターは重要なポイントであり続ける。

 今年1月30日、お笑いコンビ「ロンドンブーツ1号2号」の田村亮が仕事復帰を果たした相方・田村淳とのトークイベント。それを見た時にも思い起こされた故・桂米朝さんが弟子たちに話していた言葉が、今回も繰り返し頭で響いた。

「面白い芸人にならんでもエエ。いい人間になりなさい」
                           (中西正男)