エンターテインメント界が新型コロナウイルスにより、甚大な被害を被っている。X JAPANのYOSHIKIさんは、当たり前に続く認識を改める重要性を指摘する。AERA 2020年5月4日−11日号から。



*  *  *
 9.11同時多発テロがあったころ、ニューヨークにコンドミニアムを持っていたんです。マンハッタンの高層ビルの39階にあったのですが、当時はそのような惨事が起きたことがあって、その場に行くのを躊躇するようになってしまいました。

 9.11は世の中のセキュリティー意識を劇的に変えました。でもそれは米国で起こったこと。今回の新型コロナは全世界レベルです。比べることではないのかもしれませんが、あえて言うならば、9.11の比ではない変化が訪れてもおかしくはないと思います。

 たとえば、これからはどんな場所であろうと「密集すること」に抵抗感が生まれる可能性があると思う。「人と同じものに触れる」ことも避けるようになるはずです。

 いまニューヨークや東京のような大都市には人々が密集して生活しています。だけど今回のことで、リモートワークでも仕事は成り立つということがある種証明された。じゃあ会社に行くのは週に1回でいいかもしれない、となった場合に、果たしてみんなが都会に密集して生活する意味はあるだろうか。

 そう考えると、エンターテインメントの世界も変わる可能性が強い。映画館やコンサート会場で、あの距離感でみんなが集まる世界にまた戻るのかといったら、僕はそうはならない可能性もあると思う。

 もちろん、エンターテインメントはいつの時代でも必要なものだと思います。変わるのは、そのあり方です。いままで当たり前のようにやってきたことが、今後も当たり前に続くわけではない。まず、世界がどのように変わるかを考えたうえで、グローバルな視点でエンターテインメントが存在するポジションを見極めていく必要があると思っています。もちろん、自分としてもできる限り、いま現在苦しんでいるライブハウスを含めた業界の方々に支援を行いたいと思っていますが、時代が変わるということを自分も含めて再認識しなければならないと思います。

――4月10日、YOSHIKIさんはニコニコチャンネルの自身の番組「YOSHIKI CHANNEL」で、ファンに自分の声を届けるため、LAの自宅から生配信を敢行した。事前準備から配信中の進行まで、すべての作業をたった一人で行う初の試みは、セッティングトラブルにより遅れてスタート。途中うっかりワインをこぼすなど、イメージとはかけ離れたドタバタ劇が展開された。

 昔、デヴィッド・ボウイさんと対談したことがあって、そのとき彼に「どこまでがステージの自分で、どこからが本当の自分なんですか?」と聞いたんです。彼は「いい質問です。でも難しい問題です」と言って、結局答えられなかった。

 僕もその日以来、ずっと考えているんです。人はみな「そう見られたい自分」と「本当の自分」があると思いますが、考えれば考えるほどその境界がわからなくなってくる。

 ただ、今回の新型コロナによって一つわかったことは、自分はアーティストである前に人間だったんだな、ということ。だからアーティストのYOSHIKIを強調する必要はないし、ありのままの姿をみなさんに見ていただきたいと思ったんです。それは全然かっこいいものではないかもしれない。自炊能力もほぼゼロですし(笑)。でもそんな部分も見ていただくことで少しでも笑ってもらったり、みなさんの心に寄り添えればな、と。

 きっとそう遠くない未来に夜は明けると思う。いまはみんなが暗闇の中にいる。でも、こういうときだからこそ見えるもの、ポジティブなことってどこかにあると思うんです。それをみんなで一緒に探していければと思っています。

 みなさんの健康を心より祈っています。

(構成/編集部・藤井直樹)

※AERA 2020年5月4日-11日号より抜粋