舞台「トムとディックとハリー」で初の兄弟役に挑む宇宙Sixの江田剛さん、山本亮太さん、原嘉孝さん。多くのエンタメが公演中止に追い込まれたこの2カ月を経て、公演にかける思いはより強くなったという。AERA 2020年7月13日号に掲載された記事で、演出家の中屋敷法仁さんと共に、その思いを語った。

*  *  *
 舞台「トムとディックとハリー」は個性も性格もバラバラな3兄弟が繰り広げる抱腹絶倒のコメディーだ。まじめな長男トム(江田剛)は養子を迎える面接を控え、朝から妻と大忙し。そんななか、お騒がせの問題児・次男ディック(山本亮太)が大量の密輸タバコと酒を持ってくる。さらに天然な三男ハリー(原嘉孝)がトムのために、とんでもない計画を思いつく。

江田剛(以下、江田):ようやくステージができる! という喜びを噛みしめています。今回の自粛でエンターテインメントの大切さを改めて感じていましたから。

山本亮太(以下、山本):わかりやすい笑いのなかに奥深い笑いがあってホントに楽しめる作品です。3兄弟役は僕らにとっては挑戦なので、バラバラな個性のなかに“兄弟感”を出せれば勝ちなのかな、と思っています。

原嘉孝(以下、原):単なるドタバタ劇ではなく、家族や兄弟の絆が伝わればいいですね。個人的には早口のセリフが多くてスピード感があるから、滑舌をよくして、内容に脳みそをついて行かせるのが課題です。

山本:でも今回、一番セリフが多いのは江田ちゃんだからね。

原:そうそう。幸ちゃん(4人組である宇宙Sixメンバーの松本幸大さん)も「江田ちゃんのセリフがすごく多いけど、大丈夫かな」って心配してた。

中屋敷法仁(以下、中屋敷):僕は我ながらこれまでもいろいろ頭のおかしい演出をしてきたと思うんですけど、実は今回が一番“あぶない”舞台なんじゃないか、と思ってるんです。

江田・山本・原:ええっ?

中屋敷:僕の異常な家族観や家族愛をみんなに押しつけているんじゃないかって。僕は姉が2人いて家族も異常に仲がいいんですよ。この舞台の3兄弟にもそれが反映されているのかもしれない。これだけバラバラな3人が離れず一緒にいるのがまずおかしいし、ケンカしても殴り合いにもならないし。

原:たしかに。僕がトムの立場だったらハリーを殴ってるな。「この忙しいのに、めんどうなこと持ってくるな!」って(笑)。

中屋敷:家族って面倒くさいけど、だからこそ愛おしい。それは今回の舞台のテーマでもある。3人はやっぱりグループだからか、兄弟の雰囲気が自然と出ているんですよね。

山本:それ、すっごく嬉しいです。実際のグループ内での役割は全然違うんですけどね。江田ちゃんは年長だけどポジション的には長男ではなくて三男か四男って感じ。

江田:原ちゃんは一番年下だけどかなりしっかりしてるしね。

──自粛期間中は、みなさんどう過ごしていましたか?

江田:僕は料理してました。レシピサイトを参考にキーマカレーや鶏肉の甘辛竜田揚げを。

山本:最初に作ったオムレツの画像を見たときは「ひどっ!」って思ったけど、どんどんレベルが上がっていったもんね。

原:でも、お皿のオシャレさでプラスアルファしてるよね?

江田:ははは。オンラインで料理対決もしたけど、それぞれの個性が出るよね。原ちゃんはおなかが満たされればなんでもいい系。亮ちゃんはたこ焼きオンリーだけど発想がおもしろくて、たこ焼き器でカステラを作った。

原:僕は自粛期間中、とにかくヒマでした。お客さんの前でパフォーマンスするのが一番だと思っているし、家でファンに向けてできることは限られてしまう。この2、3カ月で自分の感覚がなまってしまった気がして、久しぶりの舞台で「いつもどおりに、できるかな」って不安もあります。

山本:わかる。めっちゃ緊張するんじゃないかな、って。

江田:中屋敷さんは自粛中、どうされていたんですか?

中屋敷:引かないでほしいんだけど、レゴで宇宙Sixの4人を作ってそこから3人をとって、「トムとディックとハリー」の一人リハーサルをしていました。

山本:それはぶっちゃけ、引きます!(笑)

中屋敷:自分でも怖いから、もう全部壊した(笑)。

原:見たかったなあ!

江田:亮ちゃんは自粛中、いろんな人と電話してなかった?

山本:人の悩みを聞いたり、いろんな人の動画を見たりしながら「宇宙Sixでできること」をたくさん研究しました。

原:えらい。

山本:でも自粛当初は、エンタメ界にあきらめを感じていた部分もありました。舞台やライブを無理してやっても誰も得しないな、って思って。

原:いつ収束するかもわからないしね。必死にセリフ覚えた舞台が中止になったりもしたし。

山本:いったん「ゼロ」になったというか。でもいい時間でした。この2カ月がなければ先のことを考えるのを先延ばしにしていた可能性もある。ちゃんと自分と見つめ合えたなと。

──改めて舞台の見どころを。

中屋敷:グロテスクなほど生々しく、リアルな兄弟の関係性が見えるといいなと。3人とも身体能力が高いから、細かい表現が的確でうまいんですよね。目が泳いだりとか、目と手の表情だけであたふたしたりとか。全力をもってパフォーマンスしてくれているから本番も楽しみです。

山本:がんばります! 掛け合いの“間”や緩急の波のつけ方はもっと研究したいですね。

江田:人の出入りも多いし、ひとつ間違うと、全部セリフが飛んじゃうんで気をつけます。

山本:稽古中、「あ、江田ちゃん、頭のなかで台本読んでるな」っていうのがまだわかるからね。目が泳いでるもん。あれ? 会話してくれないぞ!って。

原:今回は江田ちゃんが一番、重要ですからね。お客さんは江田ちゃんの視点で物語に入ってくる。このお芝居のおもしろさは、それで決まるから。

山本:知ってる? いまプレッシャーかけられてるんだよ?

江田:知ってる。チクチクチクと撃ってこられてる(笑)。

(フリーランス記者・中村千晶)

※AERA 2020年7月13日号