日韓の芸能事務所が共同で立ち上げた9人組ガールズグループ「NiziU」が始動した。一年がかりでオーディションを行ない、メンバーを絞り込んでいく過程は「スッキリ」(日本テレビ系)などでも紹介され、デビュー前から注目度は上々。6月30日にリリースされた「Make you happy」はiTunes Storeのランキングで首位を獲得し、幸先のいいスタートだ。



 そんななか、あるメンバーの「変化」が話題になっている。ミイヒ(鈴野未光)の激痩せだ。オーディション最終日には、敏腕プロデューサーとして知られるJ.Y.パークから「ごはん、たくさん食べてね」「少し痩せているから。わかった?」と声をかけられる場面もあった。

 ファンの反応も「努力の産物」「憧れる」という声があがる一方で「心配」「もしかして拒食症?」といった声が。また「ひぃちゃんの痩せ方と似てる」と指摘する人もいる。

 このひぃちゃんというのは、日韓合同ガールズグループ「IZ*ONE」の本田仁美のことだ。AKB48での活動を休止してこちらに専念中だが、やはり、ファンのあいだで激痩せが騒がれている。他の韓国人メンバーからも「あんまり食べない。心配してるよ」と言われるような状況だ。

 つまり、形は違えど日韓コラボ的なアイドルグループ企画のなかで似たことが起きているわけだ。それゆえ、日本以上にシビアとされる韓国芸能界のスタイル基準が影響しているのではという見方もささやかれている。

 ただ、たった2つのケースではサンプル数が少なく、因果関係を論じることは難しい。それに、アイドルグループのメンバーが激痩せすることは日本国内でも珍しくはないのだ。

 モーニング娘。にももいろクローバーZ、AKB系に坂道系……。なかには、拒食症などの摂食障害だったことを公表した人もいる。

 今年1月にも、monogatari(今年2月に解散)の丸海留希が自身のブログに壮絶な経験をつづった。体重が48キロから29キロ(身長157センチ)まで落ち、入院もしたという。また、6月にはSTU48の榊美優が体重を42キロから36キロ(身長151センチ)まで減らし、体調を崩した過去を自身のツイッターで告白。「1年目、痩せろと言われて」「1日に食べる量はお茶わん半分にも無いくらいの量でした」とのことだが、誰に「痩せろと言われ」たかについては明かしていない。

 そんななか、YouTubeでダイエットや体調管理について語ったのが島崎遙香だ。AKB時代にはセンターも務め、卒業後は女優として活躍している。

 彼女は6月に投稿した動画で、まず、中3のとき、46キロから38キロ(身長158〜159センチ)までダイエットしたことに言及。高1でAKBに入ったあと、リバウンドしてしまい「衣装さん」から「痩せなさい」と言われたことを機に、再びダイエットに取り組んだ。

 その方法は炭水化物や糖質、脂質を控え、低カロリーの食事に徹するというものだ。

「揚げ物は食べない。お弁当に白米が入ってたとしたら、半分とか半分以下、気持ち食べる程度だったり。ジャガイモとかバナナとかも炭水化物だから。卵もね、意外とカロリー高かったりするんですよ、煮卵とか。全部カロリーを調べたり、見たりとかして」

 その結果、自身のベスト体重とする42キロに戻せたという。ただ、その後「疲労や精神的なものが重なって」38キロまで落ち、ネットで「激痩せ」が取り沙汰されたりした。そこから45キロ近くまで増えたあと、現在は43.8キロとのことだ。

 AKB時代、握手会などでの塩対応が話題になったが、彼女は基本、自分に正直な人なのだろう。積極的に愛嬌をふりまかない分、うそをつくのも嫌いなようで、この動画にもそんな人柄があらわれている。最初のダイエットについては「まねしてほしくない」、激痩せが騒がれた時期には「病院でも栄養失調と言われた」と、その弊害についても警鐘を鳴らしており、そのあたりを踏まえて視聴すれば、健康的に痩せるための参考にもできそうだ。

 そしてもうひとり、YouTubeでかつての葛藤を語ったのが、元・モーニング娘。の尾形春水(おがた・はるな)だ。現役時代、こちらもネットで「激痩せ」が騒がれた。当時、35キロ(身長158センチ)まで減らしたという生活について、6月に投稿した動画で詳細を明かしたのである。

 その方法はやはり、炭水化物や糖質、脂質を避け、低カロリーにこだわるというもの。ランチが紙コップ1杯分のこんにゃく麺だったり、夜ごはんは「豆乳」だったり、仕事場にはもやしや寒天、豆腐を持参したりと、涙ぐましい節制を重ねた。

 そのダイエットには「痩せたら推してもらえる」というアイドルらしい動機が。実際のところ、痩せたことによる反応は賛否両論だったが、握手会などに来るファンはおおむね好意的な言葉をかけることになる。それが、彼女の心にこんな変化をもたらしたという。

「アイドルの場合は面と向かって言われることがすごいあったからさ。痩せてかわいくなったね、もうれしいけど言い過ぎるのは良くないと私は思います。私の場合はね。痩せてかわいくなったねがもはや脅迫みたいな、私が太ったら推し変するんやろうとか、私が太ったら干すんやろとか、そっちのメンタルになっちゃってたから」

 本来、承認欲求の満足にもつながるはずのダイエットが必ずしもそうならず、かえって苦痛をもたらしていたというわけだ。

 なお、彼女のこの動画投稿については、モー娘。の現役ファンのあいだから、メンバーがみな、こういうダイエットをしているような誤解を生みかねない、という声も聞こえてきている。それはもちろんその通りで、AKB系や坂道系だって、島崎のようなダイエットをする人は一部にすぎないだろう。

 ただ、その一部と他の大部分が、完全に分断されているわけではない。アイドルたるもの、痩せた太ったは大なり小なり共通の関心事だし、もっといえば、世の一般女性にとってもそれは同じはずだからだ。アイドルの場合、自分磨きの重要性やグループ内での競争意識、ファンからの評価といった独特の構図がそれを見えやすくしているだけで、体形のありようが承認欲求を左右しやすいのは世の女性全体の傾向といえる。

 だからこそ、冒頭のミイヒや本田仁美の激痩せについて、あれこれ気にしているのももっぱら世の女性たちなのである。アイドルが痩せたり太ったりすることに、自分たちの世界と地続きの普遍的な意味を見つけて、ざわつくのだろう。

 そういう意味で、アイドルの激痩せは当事者のみならず、現代女性が抱えるアイデンティティーの危うさをも体現している。アイドルは鏡のように、時代を映し出すのだ。

●宝泉薫(ほうせん・かおる)1964年生まれ。早稲田大学第一文学部除籍後『週刊明星』『宝島30』『テレビブロス』などに執筆する。著書に『平成の死 追悼は生きる糧』『平成「一発屋」見聞録』『文春ムック あのアイドルがなぜヌードに』エフ=宝泉薫名義の『痩せ姫 生きづらさの果てに』など。