漫画家&TVウォッチャーのカトリーヌあやこ氏が、「秋山とパン」(テレビ朝日系 水曜25:56〜)をウォッチした。



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 ただ今楽しみでたまらん番組、「秋山とパン」。パン好きだという芸人、ロバートの秋山竜次が、都内のおしゃれパン屋を紹介する。

 一見グルメロケ番組。店員おすすめのパンを手にした秋山はおもむろに語り出す。

「玉葱(たまねぎ)コーンフォカッチャって、漢字とカタカナの組み合わせ。高輪ゲートウェイ駅みたいなね」。? 雲行きが怪しい。そしてあれよあれよと話は横滑りしていく。

「実は僕、(駅名選考の)会議みたいのに参加してるんですよ(嘘[うそ])」とのたまい、「漢字+カタカナ」というシステムのパイオニアは椎名林檎の歌「丸ノ内サディスティック」であると主張する。

「御殿場アウトレット」も「海老名サービスエリア」も「高橋メアリージュン」も、みんな椎名の影響を受けた結果。ていうか、パンどこー?

 パンを食べずに、ひたすら「『北海道バター』て、椎名林檎のアルバムに入っていても違和感ない」などと語る秋山。店員のけげんな顔が静かにズームアップされる。

 すると画面が切り替わり、奇抜なサングラスをした派手な金髪女が登場。テロップは椎名林檎って、え? 本人?

 しかし林檎(仮)いわく「漢字+カタカナのマナーは、それぞれが個々で活躍する語句と語句をバアーンッ!」。いや、これ金髪のヅラつけたADなんじゃない?

 とにかく何がホントで何がホラなのか、絶妙にあいまいなパンの皮をかぶった秋山の独り舞台。

 第2回では、やはりパンそっちのけでバンクシーとの仲良し話を展開。バンクシーは来日した時、必ず秋葉原のドーミーインに宿泊し、ホテルで振る舞われる夜鳴きそばと赤坂ラーメンが大好物。

 秋山の口からスラスラとバンクシー秘話が紡がれる。またも途方にくれるパン屋の店員の顔。

 そして某スタジオの壁に残されたというバンクシー(仮)の作品「ブラックサンセット」。海に沈む黒い夕日は、どこから見てもただの汚れだ。

 深夜のグルメものは、胃袋を刺激する「飯テロ」などと評されるが、ここはテロのない平和な世界。手だれの詐欺師に気持ち良く丸め込まれるような、秋山の狂気に優しく包まれる珠玉の番組だ。

 ちなみに、金髪サングラスで「バアーンッ!」とか言ってたお方は本物の椎名林檎でした。

カトリーヌあやこ/漫画家&TVウォッチャー。「週刊ザテレビジョン」でイラストコラム「すちゃらかTV!」を連載中。著書にフィギュアスケートルポ漫画「フィギュアおばかさん」(新書館)など

※週刊朝日  2020年11月6日号