西郷隆盛も? 帯津良一が説く「心の養生」

西郷隆盛も? 帯津良一が説く「心の養生」

 西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱する帯津良一(おびつ・りょういち)氏。帯津氏が、貝原益軒の『養生訓』を元に自身の“養生訓”を明かす。

*  *  *
【貝原益軒 養生訓】(巻第一の9)
養生の術は先(まず)心気を養ふべし。心を和(やわらか)にし、
気を平(たい)らかにし、いかりと慾とをおさへ、
うれひ、思ひ、をすくなくし、心をくるしめず、
気をそこなはず。是(これ)心気を養ふ要道なり。

 益軒は養生訓で心の養生について、繰り返し語っています。

「養生の術は先心気を養ふべし」(巻第一の9)

 体の養生のためには、まず心気を養うことが大事だというのです。では、どうすればいいのでしょうか。

「心を和にし、気を平らかにし、いかりと慾とをおさへ、うれひ、思ひ、をすくなくし、心をくるしめず、気をそこなはず」(同)

 と続きます。これが心気を養う大事な方法だというのです。

「心をしづかにしてさはがしくせず、ゆるやかにしてせまらず、気を和にしてあらくせず、言をすくなくして声を高くせず、高くわらはず、つねに心をよろこばしめて、みだりにいからず、悲(かなしみ)をすくなくし、かへらざる事をくやまず、過(あやまち)あらば、一たびはわが身をせめて、二度悔(くやま)ず、只(ただ)天命をやすんじてうれへず、是(これ)心気をやしなふ道なり」(巻第二の26)

 とも説いています。つまりは、「心をのびやかにする」ということでしょうか。

 かつて、がん治療に西洋医学だけでなく中国医学を取り入れようと、しばしば訪中していたころに、『祝●健康長寿』に出会いました。この書名の意味は「あなたの健康長寿をお祈りします」というもので、まるで年賀状の挨拶文みたいな本なのですが、内容は本場中国の養生の粋(すい)がちりばめられていてなかなかでした。

 養生の要諦として七つの項目をあげています。

(1)勤運動(運動にいそしむ)
(2)練気功(気功を練習する)
(3)節飲食(食事を節する)
(4)暢(ちょう)情志(心をのびやかにする)
(5)慎起居(正しい日常生活)
(6)適環境(環境に適する)
(7)補薬物(薬で補う)

 これを読んだとき、暢情志(心をのびやかにする)という言葉が印象に残りました。益軒も同じことを言っているのでしょう。

 西郷隆盛が愛読していたという佐藤一斎の言志四録のひとつ『言志耋(てつ)録』に次なる一文があります。

 心志を養うは養の最(さい)なり。
 体躯を養うは養の中(ちゅう)なり。
 口腹を養うは養の下(げ)なり。

「心気」ではなく「心志」と「志」が加わった分、一歩踏み込んだ心の養生になっています。

 私が長年続けている太極拳では調身、調息、調心ということを大事にしています。調身とは姿勢を正すことで、基本は上半身の力が抜け、下半身に気がみなぎった「上虚下実(じょうきょかじつ)」の状態です。調息は呼吸を整えることで、深く長い呼気を心がけます。調心は心を整えることで、まさに心気を養っている状態といえます。

 この調身、調息、調心は三位一体の関係にあって、心に気がかりなことがあると調心に翳(かげ)りが生じ、調身、調息もうまくいきません。逆に調身、調息を進めることによって、調心が深まるのです。

 これは太極拳に限らず、気功全般に言えることです。座禅やヨガ、瞑想も調身、調息、調心の三位一体の関係によって成り立っています。いずれも心の養生の術といっていいでしょう。

●=にんべんに「尓」、その下に「心」

※週刊朝日  2017年8月11日号

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