20年以上前の睡眠の影響で認知症に! 予防につながる眠り方を専門医が解説

20年以上前の睡眠の影響で認知症に! 予防につながる眠り方を専門医が解説

 睡眠には日中の疲れを回復させるだけではなく、脳の機能を維持するための重要な役割がある。最近は、適切な睡眠の量や質が認知症予防に効果があることがわかってきた。週刊朝日MOOK「家族で読む予防と備え すべてがわかる認知症2017」では、その方法を紹介している。

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「国民健康・栄養調査(平成27年、厚生労働省)」によると、一日の平均睡眠時間が6時間未満の人の割合は、約4割。日本人の睡眠時間は短く、その割合はこの10年で増加しています。また、この調査では睡眠時間が6時間未満の群は、6時間以上の群に比べて明らかに入眠困難や中途覚醒、早朝覚醒を訴える人が多く、睡眠の質が悪いこともわかりました。

 最近の研究では、睡眠の量や質は認知症と深く関わっていることが明らかになってきています。

 認知症の中で最も多いアルツハイマー型認知症の人の脳内には、「アミロイドβ(ベータ)」というたんぱく質が沈着していて、この物質が神経細胞を死滅させることで、発症すると考えられています。

 しかし本来、脳には、アミロイドβのような有害な物質を除去して脳機能を保つ働きがあります。その役割を担っているのが、睡眠です。2013年にアメリカのワシントン大学の研究班が「JAMANeurology」誌に発表した論文によると、入眠困難や中途覚醒、早朝覚醒などがある睡眠が不安定な人は、睡眠が安定している人に比べてアミロイドβの蓄積が5.6倍ということがわかりました。また、実験的に24時間覚醒を続けると、通常の睡眠をとった場合と比べてアミロイドβが増加したといった研究結果もあります。

 このアミロイドβの蓄積は、認知症発症の20年以上前から始まっているといわれています。久留米大学病院精神神経科教授の内村直尚医師はこう話します。

「人は眠ることで脳内の老廃物を排出し、脳のメンテナンスをしています。慢性的な睡眠不足で老廃物が長期間にわたって蓄積すると、脳の機能が低下し、認知症を発症すると考えられるのです」

 さらに、さまざまな研究から睡眠不足は記憶・学習能力を低下させ、糖尿病や高血圧、うつ病になるリスクを高めることがわかっています。これらの病気は、認知症発症のリスクでもあります。

 こうしたことから、若いうちから睡眠時間を十分に確保し、質のいい睡眠をとることは、認知症予防につながると考えられます。

 では、認知症予防のためには、毎日どれくらいの睡眠をとればいいのでしょうか? 睡眠時間を「6時間以下」「7時間」「8時間以上」の三つのグループに分けて、認知症発症リスクを調べた研究では、7時間の人に比べて6時間以下や8時間以上の人はリスクが高まるという結果が出ています。

「睡眠にはさまざまな役割がありますが、それを果たすには6〜7時間の睡眠が必要でしょう」(内村医師)

 とはいえ、高齢になるほど不眠に悩む人は増えていきます。

「40歳を過ぎると、加齢現象で“眠る力”は衰え、睡眠時間は短く、眠りは浅くなります。つまり高齢になるほど自分で眠る力を養うことが必要なのです」(内村医師)

■毎日30分の昼寝で“こまぎれ睡眠”を防ぐ

 眠る力をつけるためにポイントとなるのが、睡眠時と覚醒時のメリハリをつけること。睡眠評価研究機構代表の白川修一郎さんはこう話します。

「年齢とともに、日中の覚醒を維持する機能が落ちてきて、昼間にうとうとしている時間が長くなりがちです。けれどもこうした“こまぎれ睡眠”は、脳の活動を停滞させ、夜の不眠や中途覚醒などをもたらすのです」

“こまぎれ睡眠”を防ぐために有効なのが、午後の決まった時間に30分程度の昼寝をすること。毎日30分程度昼寝をすると、認知症を予防できるという研究報告もあります。ただし、1時間以上の昼寝は逆に認知症の発症リスクを高めてしまうので注意しましょう。

 図は快眠のための理想的な一日の過ごし方をまとめたものです。朝起きたら光を浴びてからだを覚醒させ、午後昼寝をすることによって、その後の活動性が高まります。特に有酸素運動をすることで、夜間の睡眠が深くなります。

 また、夕方以降のカフェインを控え、水分はとりすぎないようにする、就寝3時間前には夕食をすませるといったことも、質のいい睡眠のカギ。アルコールは寝つきをよくする効果はありますが、中途覚醒しやすく睡眠の質が低下するので、夕食時にグラス1杯程度がのぞましいでしょう。

 年齢を重ねると夜間頻尿が不眠の原因になることも。アルコールや水分摂取に気をつけていても夜間に3回以上トイレで起きる人は、過活動膀胱(ぼうこう)や前立腺肥大の可能性もあります。その場合、泌尿器科で治療を受けることで改善し、眠りの質もよくなります。

「日中は光を浴びて明るい場所で過ごし、食事や睡眠は決まった時間にとって、規則正しい生活を送ることが大切です」(白川さん)

(取材・文/中寺暁子)

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