眼の検査で脳卒中リスクがわかる! 高血圧や糖尿病、動脈硬化まで…

眼の検査で脳卒中リスクがわかる! 高血圧や糖尿病、動脈硬化まで…

 からだの中で唯一、血管を直接見ることができるのが眼だ。しかも脳に近い。眼の血管に異常があると、動脈硬化や脳卒中のリスクが高まるという。自覚症状がないため、検査を受けてわずかなサインも見逃さないことが重要だ。

*  *  *
 眼はからだの中で唯一、血管を直接、肉眼で観察できる器官だ。眼の奥にある眼底と呼ばれる場所を調べる「眼底検査」で、網膜にある血管の状態がわかる。

 この眼底検査により、緑内障や眼底出血など眼の病気のみならず、高血圧や糖尿病、動脈硬化など全身の病気や、脳卒中や心疾患などの重篤な疾患リスクのサインも見つけることができる。順天堂大学眼科学教室先任准教授の平塚義宗医師は、こう話す。

「眼の網膜は脳に近いため、網膜の血管の状態は、脳の細い血管の状態と強い関連があります」

 網膜の血管にはさまざまな異常が表れるが、特に注意すべきは、網膜に白い綿花のような斑点がある場合だ。これは「軟性白斑」と呼ばれ、網膜の血流が悪くなることによって、視神経線維がむくんでいる状態だ。

「網膜の所見とその後3年間の脳卒中の発生率を調べたとき、軟性白斑があると、白斑がない場合より脳卒中の発生率が約7倍になるという研究報告があります」(平塚医師)

 軟性白斑は、血糖値や血圧が高い人、動脈硬化が強い人などに多くみられる。だが、網膜の中心部にある黄斑という視力にかかわる部分に出ることはないため、視力に影響は出ず、自覚症状もほとんどない。眼底検査以外で見つけることができない。

 軟性白斑のほか、「細動脈瘤(網膜の細い動脈のコブ)」「斑状出血(網膜の小さな出血)」なども脳卒中発症リスクは通常より4〜5倍に高まる。「細動脈狭細(細い動脈がより細くなる)」「交叉現象(血管の交叉部分の異常)」「反射亢進(血管の血液が反射して金属のように見える)」の存在などは、まだ初期の段階だが、ない場合より発症リスクは2倍程度高まる。

 眼底の状態は、糖尿病とも深い関わりがある。網膜が傷み、視力が低下する「糖尿病網膜症」は、糖尿病腎症・神経症とともに糖尿病の3大合併症のうちの一つだ。眼底検査で網膜症を指摘されて初めて糖尿病に気づく人も少なからずいる。糖尿病網膜症は緑内障に次いで、失明原因第2位の疾患だ。

 平塚医師は現在、順天堂医院の糖尿病網膜症専門外来で糖尿病患者の診察もおこなっている。網膜に軟性白斑などの血管病変が見つかったら、糖尿病を改善する内科的な治療をおこなう。そして、定期的に眼の経過を見ていくことにより治療効果の判定が可能になるという。

「早期に血糖値や血圧をコントロールして正常な範囲内に戻していくことができれば、軟性白斑があったとしても消失し、網膜もきれいな状態に戻ります。定期的に眼底検査をおこなうことで、糖尿病の治療の進み具合もわかります。病変の消失は、高かった脳卒中発症リスクも低下したということです」(同)

 網膜の異常から、早期発見、早期治療で重篤な病気のリスクも軽減できるのだ。

■視覚の改善が介護予防になる

 一方、高齢者の場合、眼底検査を受けると、同時に白内障も見つかることがある。早めに発見できれば、手術をおこなうことで、その後の寝たきり、転倒予防にも役に立つ。

 視覚障害があると、歩行速度や活動レベルを低下させるため、衰弱や転倒につながる。「衰弱」「骨折・転倒」は脳卒中、認知症に次いで、介護が必要になる原因の第3位と第4位という調査報告がある。

「その人が持ちうる最高の視覚で生活すること」が介護予防になると平塚医師は言い切る。「寝たきりにならず、健康に長生きする健康寿命を延ばすのに視覚は非常に大きな意味を持つ。にもかかわらず、眼は放置されていることが多いのです」(同)

 自治体における健診制度においても、以前は医師が必要と判断すれば実施できた眼底検査が、2008年の特定健診(メタボ健診)導入により、血糖、血圧、脂質、腹囲が全て一定の基準に該当したうえで医師が必要と認めるものしか実施されないことになった。その結果、メタボ健診における眼底検査受診率は現在0.7%以下と、以前の100分の1程度に減少してしまっているという。自治体によっては、住民全員が眼底検査を受けられるところもあるが、実施有無は自治体に委ねられており、地域格差は大きい。

 ちなみに健診でおこなわれることの多い眼底写真の撮影は、2〜3分もあればできる。眼底を撮影する眼底カメラも、今では瞳孔を開く散瞳薬が不要なものが一般的なため、からだへの負担も少ない。それにもかかわらず、健診制度の大きな変化のために受診率は低下している。

 日本は糖尿病患者の年間眼底検査受診率が先進国では最下位の37%(先進国平均57%)。眼底検査の受診状況では後進国といえる。

 また現在、世界的に問題になっている視覚障害最大の原因は「未矯正の屈折異常」、つまり、適正な眼鏡やコンタクトレンズを装用できていないことによる視覚異常だ。それらが視覚障害全体の43%にも及ぶ。視力は年々変動するにもかかわらず、昔作った眼鏡を使い続けてしまうなど、実はよく見えないまま生活している人は多い。それも立派な視覚障害と平塚医師は話す。

「数年に一度は眼鏡やコンタクトレンズの度数が合っているかを確認してほしいですね」(同)

 健康寿命を延ばすうえでも、「見えて」「歩けて」「食べられる」という3要素が大事になってくる。整形外科は「ロコモティブシンドローム」として運動器障害の予防、歯科では「8020運動」として「80歳になっても20本以上の歯を保つ」デンタルヘルス啓発運動を推進し、一般的にも評価を得ている。

 その点、眼科の啓発運動はやや遅れ気味だ。視覚障害を減らすことは、健康寿命の延伸に寄与することがわかっているのにもかかわらず、厚生労働省が進める「健康日本21」の目標項目のなかにも視覚に関する記載はない。眼の健康の重要性がいまだ広く世間一般にも認知されていないことを平塚医師は危惧する。

「眼の病気のみならず生活習慣病など全身の疾患、脳卒中などの重篤な疾患リスクまでわかるのですから、ぜひ40歳を過ぎたら一度は眼底検査を受けていただきたいです」(同)

(取材・文/石川美香子)

おすすめ情報

AERA dot.の他の記事もみる
主要なニュースをもっと見る
社会のニュースをもっと見る
経済のニュースをもっと見る
政治のニュースをもっと見る
国際・科学のニュースをもっと見る
エンタメのニュースをもっと見る
スポーツのニュースをもっと見る
トレンドのニュースをもっと見る
生活術のニュースをもっと見る
地域のニュースをもっと見る

生活術のニュースランキング

ランキングの続きを見る

生活術の新着ニュース

新着ニュース一覧へ

人気記事ランキング

ランキングの続きを見る

東京の新着ニュース

東京の新着ニュースをもっと見る

コラム・街ネタ

東京のコラム・街ネタをもっと見る

特集

特集一覧を見る

記事検索