親の危険信号を察知する「実家の観察法」とは?

親の危険信号を察知する「実家の観察法」とは?

 うちの親は、まだ元気だから大丈夫──。そんなふうに過信し続けていると、思ってもみない事態を招くことになりかねない。親のふとした言動や部屋の様子に、「あれ?」と異変を感じたら、それは備えを促す“サイン”かもしれない。この夏の帰省で、さっそく試してみてほしい。



「しょっぱい!」

 3カ月ぶりに実家に帰省した山本由香さん(仮名・56歳)は、母親(76)が作った朝食のみそ汁を口にして、思わず叫んでしまった。みその量が明らかに多く、塩辛くてとても飲めたものじゃなかった。料理好きの母親は困ったような顔をして、こう言った。

「あらそう? ちょっとみその量、多かったかしら」

 そういえば、昨夜の晩ご飯も変だった。炒め物に入っていた豚肉が消費期限切れで傷んでいたようだった。味付けも以前と明らかに違う。こんなことはこれまでなかった。ふと部屋を見渡せば、物が散らかっていて、あまり掃除もされていないみたい。

 やっぱり、お母さん変だ──。

 その後、病院に連れていくと認知症と診断された。

「親の異変は、暮らす家や生活にそのまま表れてきます」

 在宅看護学を専門とする、柴山志穂美さん(埼玉県立大学准教授)は言う。

「親と離れて暮らしているなら、夏の帰省時に、親の様子はもちろん部屋の様子もよく見て。部屋を丁寧に見れば、おのずと生活ぶりも見えてきます」

 下記のリストは、こうした異変を確認する際に活用できる項目をまとめたもの。一つでも当てはまれば、注意したほうがいい。

【実家の異変チェックリスト】
1.料理の味付けが変わった、使う材料が減ってきた
2.インスタント食品が明らかに増えた
3.冷蔵庫内に消費・賞味期限切れのものが増えた
4.食器の洗い方が雑になった、しまい方のルールがなくなった
5.家の中が散らかっている
6.ドアノブやタオルかけなど、部屋の中でつかまれそうな部分にぐらつきが見られる
7.壁に手あかがついている
8.出かけるのを億劫がる
9.歩くのが遅くなっている、ふとしたときによろけがち
10.服装の組み合わせや化粧が変わった
11.財布の中が小銭でいっぱい
12.エアコンの温度設定がおかしい
13.水分をあまりとらない
14.トイレがにおう
15.同じものがたくさんある
16.テレビ番組のストーリーが追えない
17.新聞や本などを読まなくなった
18.水漏れなど、住宅のトラブルを放置している
19.未開封の郵便物がたまっている
20.ゴミの分別ができていない

 冒頭の山本さんのケースのように、異変を察知しやすいのが料理。味付けが変わったり、使う材料が減ってきたりしたら要注意だ。食材を切り、適度に火を入れ、味付けと、複雑な工程を重ねる料理は、段取り力や感覚、バランスが問われる分、変化が出やすい。以前と比べて、台所にインスタント食品が増えているようなら、料理をしなくなっている証拠だ。「最近、どんなものを食べてるの?」と聞いてみると良い。

 冷蔵庫内の様子にもヒントがある。消費・賞味期限切れの食材が増えていれば、要注意。食器の洗い方やしまい方にも変化が表れやすい。

 財布の中も見てみよう。小銭だらけなら、計算が面倒になり、お札ばかりで精算していることの表れだ。

 身体機能の衰えもチェックできる。ドアノブやタオルかけなど、部屋の中でつかまれそうな部分にぐらつきが見られないか、壁に手あかがついていないか。ぐらつきは、立つときに手すりが必要な証拠、壁の手あかは、伝い歩きをしている証拠だ。日常生活に支障が出ていることが考えられるため、注意する必要がある。

 また、この時期に注意したいのが、エアコンの設定温度や水分摂取。年をとれば温度の感じ方や口渇感にも衰えが見られるため、意識して確認すべき点だ。適切にエアコンを使えているかを測るには、においも一つの指標になる。

 異変を察知したら、それを確認し、そのときの親の反応までしっかり見ること。数多くの高齢者のリハビリに携わってきた田中康之さん(千葉県理学療法士会会長)は、取り繕おうとしたり、言い訳したりする場合は「そろそろ親を心配したほうがいいというサイン」だと指摘する。

「本人が自分の認知機能が落ちてきたことを認めたくない証拠。だから異変を感じたら、流さずにきちんと聞いて反応まで見ること。それが親の状態を測る指標になります」

 異変の兆しを読み取るには、普段の親の様子や生活ぶりについて、どれだけ把握しているかが鍵になる。

 では、親の生活ぶりについて探るには、具体的にどうすればいいのか。専門家が自分の親に対し、どう接しているか聞いてみた。

 前出の柴山さんのケース。母親(73)は、青森県の実家で一人で暮らす。5年前に脳出血で倒れたものの、現在は回復し要介護1の状態。車の運転はできなくなったが、まだ元気だ。しかし、今年に入って父(夫)を亡くし、近くに住んでいた弟家族も転勤で引っ越したため、柴山さんはこれまで以上に母を気にかけて見守るようになった。現在は月1ペースで帰省している。

 帰省時には、母親と丸一日は一緒に過ごす。寝るときも親と一緒の部屋。夜中のトイレの頻度や、トイレに向かうときの足取り、睡眠の深さなども知ることができるからだ。

「あえて家族には話さないような生活習慣までわかります。起床してすぐにストレッチしていることも、母と同じ部屋で寝て初めて知りました。短い帰省でも、同じ部屋で寝泊まりできれば、より密度の濃い情報を知れると思いますよ」

 実家から離れている間は、用事がなくても頻繁に電話する。それも、晩ご飯を食べ終えたころや週末など、「一人でいると寂しいかも」と思う時間帯を狙う。意地を張らずに素直に受け答えしてくれるからだ。

 電話では「今どこ? リビング?」「ご飯終わった?」「何食べた?」「何してた?」など、具体的な質問を重ねる。食事を終えた時間にかけてみて、生活のリズムが変わっていないか確認するときもある。柴山さんは言う。

「以前は用件をメールで済ませたり、用事があるとき以外に電話をかけることは少なかった。でも、こまめに電話をするようになってから、母の普段の生活を把握しやすくなりました。どんな生活をしているか知ろうと思って尋ねると、自然といろんなことが会話にのぼるはずです」

 会話では、間をつくることも意識。年齢を重ねればテンポ良く会話が進むとは限らない。言いたいことがあっても言葉がすぐに出てこないこともあるので、相手が焦らず話しだせるように、余白を設けているのだ。

※週刊朝日 017年8月18−25日号より抜粋

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