今どきサラリーマンはなぜ祈る? “神頼み”事情を専門家が分析

今どきサラリーマンはなぜ祈る? “神頼み”事情を専門家が分析

 かしわ手を打つ乾いた音が静寂な境内に響く。サラリーマンの聖地、東京・新橋。飲食店が密集する路地奥にひっそりとたたずむのが烏森(からすもり)神社だ。平日の午後7時半。拝殿にひっきりなしにスーツ姿の男性が現れる。

「仕事の成功を祈りました」と話すのは、近くの商業施設「ギンザシックス」で働く36歳と29歳の男性2人組。

「神社を見かけたら毎回立ち寄ってお祈りしているんですよ。今も通りすがりに神社が見えたので入って頼んで、という感じです」

 所構わず参拝したくなる心理の背景には何があるのか。

「運命みたいなものを信じているので。商売には運も大事」

 スポーツ紙を脇に抱えた50代男性。祈りは数分間続いた。

「気持ちのリセットというか、自分と向き合う、という感じでしょうか。ここに来ると、すっとするんです」

 東京・大手町のオフィス街。重機がフル稼働する再開発エリアの一角だけが保全されている。平安時代の武将、平将門の飛んできた首を祀ったとされる史跡「将門の首塚」の敷地だ。

 ここは単なる聖地ではない。「撤去しようとしたGHQ(連合国軍総司令部)の重機が横転した」など、たたりがあるとの言い伝えも残る。首塚にお尻を向けて座らない会社もあるとか。近くのオフィスで働く男性(59)は言う。

「取引のときは社内に祀っているお稲荷さんに祈ります。ここに来るのは周囲が不幸や災厄に見舞われたとき。商売っ気がない、武骨な神さまという印象。そこが魅力なんです」

 先行き不透明な時代が人々を「祈り」に向かわせるのだろうか。国学院大学の石井研士教授(宗教社会学)はこう見る。

「日本人の宗教性の特徴の一つですが、神仏に祈って、うまくいかなくても呪詛(じゅそ)はしません。自分を超えた何者かにこうべを垂れ祈るとき、真摯(しんし)な心の状態になるんじゃないでしょうか」

(編集部・渡辺豪)

※AERA 2018年1月15日号

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