脳卒中 リハビリは病院間格差も

西城秀樹を苦しめた脳梗塞 リハビリ改善は病院間の格差も

西城秀樹を苦しめた脳梗塞 リハビリ改善は病院間の格差も

 63歳の若さで亡くなった西城秀樹さんは、2003年と11年の2回、脳梗塞を発症した。右半身麻痺の後遺症を抱えながらもリハビリを続け、懸命にテレビ出演する姿に胸を打たれた人も多かっただろう。

 年間に約11万人が死亡する脳卒中は、がん、心臓病、肺炎に次いで日本人の死亡原因の第4位だ。

 西城さんが発症した脳梗塞は、動脈硬化などが原因でできた血栓(血の塊)が脳の動脈に詰まる病気で、脳卒中の約6割以上を占めると言われている。発症して急性期病院で治療を受け、命の危険を脱したら、麻痺などの後遺症をいかに改善するかが重要となる。ここでは、かつて発症した人のリハビリ体験談を紹介する。



*  *  *
 千葉県在住の会社員、立花浩一さん(仮名・53歳)は51歳のときに脳梗塞を発症した。朝起きたら左手や足に重だるさを感じ、立っていられなくなった。家族が救急車を呼び、救急病院で点滴による保存治療を受けた。

 意識はずっとはっきりしていたが、入院中に左の手足の麻痺(左片麻痺)が進行。急性期のリハビリが始まり、1週間ほどで介助を受けながら歩行ができるまでになった。できるだけ早く自分で歩行し、「なんとか職場に復帰したい」という希望から、家族とインターネットで回復期リハビリのできる病院を調べた。

 立花さんは左片麻痺の中でも特に上肢の症状が強かった。東京湾岸リハビリテーション病院では手の麻痺に対する集中訓練(CI療法)を実施していた。このほか、家族が面会できる時間が長いこと、自宅から通いやすいことなどから、同院への転院を決意。発症から20日目に転院した。

 主治医で同院リハビリテーション科の森直樹医師はこう言う。

「立花さんには一日も早く社会復帰をしたいという強い希望がありました。リハビリの目標として退院までにバスや電車を利用して外出できること、趣味のサックスを再開することを挙げました」

 1日3時間のリハビリ以外にも、本人の歩行能力の改善に応じて看護師や家族の介助を受け歩行訓練や自主練習を実施。手の麻痺のリハビリもおこない、75日後に退院。退院から1カ月後には復職することができた。また、サックスも演奏できるようになり、現在も仕事を続けている。

 病気やけがによって、からだや心に障害を受けると日常生活や社会生活に制約が生じる。こうした人に対して、からだの機能を回復させ、自立した生活を送ることができるようにするための訓練などの過程がリハビリテーション(リハビリ)だ。

 このうち、回復期リハビリは命の危険を脱した後に集中的にリハビリをおこなう医療。手術などを中心に治療をする急性期病院でおこなわれるリハビリとは区別される。厚生労働省の主導により、2000年から医療保険の対象となった。

 回復期リハビリテーション病棟協会によれば、原因となる病気で最も多いのが脳卒中だ。現状よりも回復が見込める患者が対象で、車椅子が必要なケース、場合によってはベッドでの生活が中心となる患者も受けることができる。

 東京慈恵会医科大学病院リハビリテーション科教授の安保雅博医師は言う。

「リハビリが診療報酬上で評価されなかった時代は山間の病院などがリハビリを担っていました。現在は都市部にも多くの病院ができ、自宅や職場の近くでリハビリができるようになりました」

 回復期リハビリ病棟として認められるにはさまざまな基準がある。医師や看護師の配置のほか、立つ、歩くなどの基本動作の機能回復を担う「理学療法士」、食事や入浴など日常生活動作を担う「作業療法士」、言語障害や嚥下障害、さらには近年、増えている高次脳機能障害を担う「言語聴覚士」などリハビリ専門職の人数、リハビリをおこなう機能訓練室の面積や使用する器具などだ。患者の入院期間も決まっており、脳卒中では最長180日までとなっている。

「リハビリによる機能の回復は発症後約6カ月までは上昇、その後、固定化されるという根拠ある研究データから算出されています。近年は新しい治療によって6カ月を過ぎても回復する可能性が報告されてきていますが、これも基本となる回復期リハビリをやってこそ、得られる効果です」(安保医師)

 急性期から回復期リハビリへの移行は早いほうが効果的であることもわかっている。横浜新都市脳神経外科病院院長の森本将史医師はこう言う。

「かつてはベッドで絶対安静が一般的でしたが、今は病状が安定していれば手術翌日からでもすぐに急性期リハビリを開始します。ただ、この時期のリハビリは1日20〜30分程度。立ったり、座ったりができるようになったらできるだけ早く回復期病棟に移って、リハビリをするように推奨しています」

 病院内に回復期病棟がない場合、他の病院への転院が必要だ。医療連携室のソーシャルワーカーなどから複数の病院を案内されることが多い。

「その際、近いからという理由だけで選ばないこと。回復期リハビリはまだ発展途上で、病院間の差が大きいといわれています。ぜひご家族は実際に病院を見学し、どんなリハビリを実施しているか、話をよく聞いてください」(森本医師)

(文・狩生聖子)

※週刊朝日オンライン限定

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