“墓じまい”は簡単じゃない? 根回しや高額出費も…専門家が解説

“墓じまい”は簡単じゃない? 根回しや高額出費も…専門家が解説

 管理する人がいないなどの理由から、お墓をなくす“墓じまい”を選択する人がいる。お墓を更地にするだけなら、別に大変ではないのでは……というのは甘い考えで、実は数多くのプロセスが必要となる。その一部をご紹介する。



「父方の祖父母が眠るお墓が神戸市の山の中にあるのですが、最後にお参りできたのは2年前。高齢化で墓参する人が減ったせいか、昔からあった近所の花屋も閉店してしまい、せっかく来たのに花すらお供えできなかったのが申し訳なくて……」

 と語るのは、関西出身ながら東京で30年近く生活する会社員のAさん(52)。Aさんのような東京在住の地方出身者にとって、「高齢になった両親が亡くなったら、故郷のお墓を誰が管理するのか?」は“今そこにある難題”である。

 少子高齢化、都市部への人口流入、先祖供養に対する意識の変化などを背景に、今ある墓を別の場所に移す「改葬」または散骨などによる「墓じまい」を迫られる人が増えている。いずれも、生身の人間の移動に比べ、「遺骨」を墓から取り出して別の場所で供養するまでの作業には驚くほどの手間やお金がかかる。改葬はまだしも、墓じまいは墓を更地に戻すだけでしょう、と思ったらこれが大間違い。

「墓じまいというと、田舎にある誰もお参りできないお墓をなくす手続きをしておしまい、と思われている方が多いようです。でも遺骨をそのまま放置しておくわけにはいきませんから、古い墓を撤去したら、その中にあった遺骨を必ずどこか別の場所に移さないといけません(散骨や永代供養も『移す』という考え方)。つまり新しい場所への遺骨の移動が完了して初めて、『墓じまい』といえるのです」

 と強調するのは、葬儀・お墓・終活ソーシャルワーカーの吉川美津子さん。ちなみに墓の中の遺骨を勝手に処分するのは犯罪だ。刑法190条の遺骨遺棄罪に問われると、懲役3年以下の刑に処される可能性すらある。

「墓地埋葬法ができた1948(昭和23)年以前に建てられたお墓は、村単位で管理していたり、田んぼや畑の中にあったりして、土地の権利関係も非常に複雑です。今から70年以上前というと、地方によっては土葬も多かった時代。現在は火葬して焼いた骨、つまり焼骨しか受け付けてくれません。もし墓じまいしようと思っているお墓から、土葬されたと思われる先祖の遺骨が出てきた場合は、そのご遺体の分も、自治体から火葬許可証をもらって、火葬場で骨をもう一度焼く手間も必要になります」

 墓じまいには、とにかくたくさんの証明書や許可証が必要になる。その書類は大きく分けて三つ。新たな遺骨の受け入れ先からもらう「受け入れ証明書」、遺骨が確かにその場所に埋まっていたことを現在の墓の管理者が証明する「埋蔵証明」。この二つの書類に、現在、墓がある土地の自治体が発行する「改葬許可申請書」(埋蔵証明との一体型もあり)を添えて提出することで、初めて「改葬許可証」を発行してもらえる仕組みだ。

 証明書を機械的に集めればいいわけでもない。墓じまいの各ステップには、気苦労の多い根回しや手続き、高額の出費が待っている。最初の難関は、家族や親戚の了承を得ること。墓を守る地方在住の両親が健在の場合、「先祖代々のお墓を移動するなんて、もってのほか」と否定的な意見もある。

「長年、檀家として支えてきた菩提寺からお墓を撤去するには、檀家を抜ける際に支払う離檀料やお墓から魂を抜くための抜魂法要のお布施を渡す必要があります。その相場は通常のお布施が5万円なら、その2〜3倍の10万〜15万円が目安です。寺院に何の相談もせず事務的に手続きを進めたことで関係がこじれ、100万円以上の離檀料を要求された人も。提示された離檀料を拒否すると、墓じまいに必要な埋蔵証明への署名を渋るケースもあるようです。なるべく円満に、事を荒立てず、墓じまいせざるをえないこちらの事情を理解してもらうことが大切になります」(吉川さん)

(経済ジャーナリスト・安住拓哉/編集部・中島晶子)

※AERA 2018年8月13−20日合併号


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