歯医者ではなぜ途中でスタッフに交代するの? 歯科医師がずっと診てくれない意外な理由

歯医者ではなぜ途中でスタッフに交代するの? 歯科医師がずっと診てくれない意外な理由

 歯の治療途中で歯科医師から、女性スタッフに交代することがあります。そんなとき、「この人は何をする人? 歯科医師はなぜ最後まで診てくれないの?」と不安になります。女性は何をするスタッフなのでしょうか。その仕事は歯科医師ではだめなのでしょうか。テレビなどでおなじみの歯周病専門医、若林健史歯科医師に疑問をぶつけてみました。



*  *  *
 歯の治療のあとに歯石を取り除いたり、歯みがきを指導したりするのは歯科衛生士の役割です。治療中に交代した女性スタッフがこの処置をしてくれているとすれば、それは歯科衛生士のことでしょう。

 歯科衛生士は養成機関で3年以上学び、歯科衛生士国家試験を合格した人だけが就ける専門職です。その役割には大きく次の三つがあります。(1)むし歯や歯周病の予防処置(2)歯科診療の補助(3)歯科保健指導。

 皆さんが歯科医院でやってもらっている処置は主に(1)(2)です。

 なお、患者さんが歯科医院でよく見かけるスタッフには、歯科助手の人もいますが、こちらは歯科診療の準備や診療の補助、受付事務など一般的な雑務を行う業務です。国家資格や法律などで特に定義、分類されているものではありません。

 当然、患者さんの口の中に直接触れることはできません(一部の歯科医院では歯科衛生士の仕事をやらせているところもあるようですが、それはNGです)。

 実は歯科医師も歯石の除去をはじめとするクリーニング、歯みがき指導など、歯科衛生士がやることはすべてできることになっています。では、なぜ役割分担をしているのでしょうか。

 一番の理由は、こうした処置のスキルは歯科医師よりも歯科衛生士のほうが断然、高いからです。

 実際、私たち歯科医が歯学部で学んだ時間の何倍もの時間、彼女たちは養成機関でクリーニングや歯みがき指導を学び、経験を積んできています。

 患者さんにとっても専門性の高い歯科衛生士に施術をしてもらうことで予防効果が上がるので、メリットは大きいのです。

 そして、その分、歯科医師は治療に専念でき、互いが得意な仕事に従事することで、よりよい治療ができます。例えば入れ歯やかぶせ物などの補綴(ほてつ)物を作る際に、歯科医師が歯の型取りをします。型が合うかどうかはミクロン単位の違いがあり、このとき出血があると正確な型が取れません。

 そこで歯科衛生士に歯や歯ぐきをきれいにしてもらい、そののちに型を取ると、驚くくらい正確な型を取ることが可能になるのです。

 型の採取後、補綴物を作るのは歯科技工士の役割です。熟練した歯科技工士の中には歯科衛生士の資格を取っている人もいます。歯科衛生士の技術を学ぶことで、より精巧な補綴物を製作したいというこだわりからです。

■男性の歯科衛生士もいる

 なお、「女性の職業」という印象が強い歯科衛生士ですが、最近は男性も少しずつ増えてきました。以前は歯科衛生士法で女性だけの職業と定められていたのが法改正により、男性も歯科衛生士の資格を取得できるようになりました。

 私が知っているだけで男性の歯科衛生士は3人いますが、みなさん、勉強熱心です。ちなみにそのうちの1人とは勉強会で会ったのですが、最初は女性と一緒にいたので、歯科医師だと思っていたのです。聞くと逆で、女性のほうが歯科医院の院長でした。

 このように、歯科医師の世界は男女の区別がなく働きやすいところです。歯科衛生士についても、やる気のある男性にはどんどん、参入してきてほしいですね。

 最後に、最近では歯科衛生士や歯科助手のほかにも、看護師や保育士、さらにデンタルコーディネーターと呼ばれる職種を置く歯科医院も出てきています。

 保育士は患者さんのお子さんなどを預かる役割、看護師はインプラントや歯周病で行う骨再生の治療などのために血液採取を担当することが多いですね。看護師は同時に歯科助手も兼ねていることが多いようです。

 デンタルコーディネーターは歯科医師に代わり、治療の詳細を患者さんに説明する役割を担います。

 職種や名前は名札に明記されているのが一般的です。また、待合室やホームページなどに紹介されていることもあります。

 主治医が他のスタッフにバトンタッチする場合は、「歯の清掃ですので、歯科衛生士の◯◯に交代します」

 という具合に説明があってしかるべきですが、それがない場合は、「どんなことをする専門家なのですか?」と遠慮なく聞いてみてください。

 口の中の治療は自分でみることができない分、不安を感じやすいことは確かです。疑問を解消することで、ぜひ、安心して治療を受けてほしいと思います。

◯若林健史(わかばやし・けんじ)/歯科医師。若林歯科医院院長。1982年、日本大学松戸歯学部卒業。89年、東京都渋谷区代官山にて開業。2014年、代官山から恵比寿南に移転。日本大学客員教授、日本歯周病学会理事、日本臨床歯周病学会副理事長を務める。歯周病専門医・指導医として、歯科医師向けや一般市民向けの講演多数。テレビCMにも出演


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