水野美紀 バスト小さい族の私が見た束の間の夢と、授乳の厳しい現実

水野美紀 バスト小さい族の私が見た束の間の夢と、授乳の厳しい現実

 42歳で電撃結婚、翌年には高齢出産。激動2年を経た女優・水野美紀さんが、“母性”ホルモンに振り回され、育児に奮闘する日々を開けっぴろげにつづった連載「余力ゼロで生きてます」。今回は、妊娠からのバストサイズの変化と、イメージと全然違かった授乳の現実について。



*  *  *
 チビが束の間、私に見せてくれた夢。

 それは、大きなバスト。

 バストに関しては常々、

「同じ人間なのに個体差ありすぎだろ!」

 と、理不尽に、いや、不思議に思っていた。

 この思いは小池栄子ちゃんに会うたびに再燃する。

 大きければ大きいなりの悩みがあるだろう。

 こればかりは、大は小を兼ねる、とはいかない。

 大きければいいというものではないのだろう。

 しかし、バスト小さい族に属する身としては、

 一度でいいから体験してみたい!
 谷間のある景色を見てみたい!
 大きい族の景色を見てみたい!

 そんな夢を、チビが叶えてくれた。

 安定期に入った妊娠5カ月目頃から、すこーしずつ、胸がふくらんできているような気はしていた。

 しかし、妊娠中はそっちよりもお腹である。

 どんどん大きくなるお腹に目を奪われて、バストの変化にはさほど気がいかない。

 見下ろした時、真っ先に目に飛び込んでくるのはお腹である。

 臨月には1メートル。

 真夏の妊婦だった私は、この時、人生で初めて、胸の下エリアに汗がたまるという経験をした。

 この時は、出産後にちゃんと母乳が出るかどうか、それがすごく心配だった。

 赤ちゃんに母の免疫を渡してあげたいという気持ちも、もちろんあったが、

「母乳を飲んでもらって体重を戻したい」

 という思いが、ぶっちゃけ強かった。

 妊娠後期の辛い体重コントロール。

 産んだ後にも続けるなんて考えたくない!

 母乳で育てたという知り合いはみな、

「母乳をあげているだけで体重が戻った」

 と言う。

 それ!

 私もそれがいい!

 しかし、こればっかりは産まなきゃ分からない。

 やがて、母乳育児の大変さを知るのであるが……。

 お腹の中でへその緒から栄養をもらって、ぷかぷかしている赤ちゃん。

 上手におっぱいを飲むことができるのだろうかと思ったが、産まれてすぐに、抱っこして、看護師さんに介助してもらって乳首を含ませると、力強くぎゅー、ぎゅーっと吸うではないか。

 ただ、母乳の方はすぐには出ない。

 これも個人差があるようだが、

「退院する頃に出始める人が多いですよ」

 と看護師さん。

 入院中、何度も赤ちゃんに吸ってもらって、

「胸がもげる!」

 と思うほど力強いおっぱいマッサージを看護師さんに施され、

「乳首取れる!」

 と思うほど絞られて、それでもやっと数滴。

 その数滴をすくい取って飲ませる。

「本当に出るようになるんだろうか……」

 と毎日不安に襲われたものの、看護師さんの言った通り、産んで5日目、退院の日には、ようやく蛇口が少し開いて、母乳が出始めた。

 そこからは早かった。

 一気に蛇口全開だ。

 そして、胸が一気に膨らんだ。

 首から下を見下ろすと、未知なる景色がそこに!

 胸の膨らみ、そして谷間である!

「ひゃー、圧巻!」

 なんてはしゃいでいる余裕はない。

 ミルク製造機となった両方のおっぱいは、24時間稼働。

 せっせと飲んでもらわないと、漏れ出すわ張るわで大変なことになるのだ。

 母乳がたまってくると、おっぱいが岩のように硬くなる。

 放っておくと乳腺が詰まって、高熱が出ることも。

 無事に母乳が出たら出たで、今度は出続けるその母乳に対処しなければならない。

 最初の2カ月の勢いはすごかった。

 右のおっぱいを飲ませていると左のおっぱいから滴ってくる。

 飲ませても飲ませても、すぐに胸が張ってくる。

 せっせせっせと飲ませて、出過ぎる分は搾乳して、とやっているうちに、今度は乳首が悲鳴をあげた。

 引っ張られすぎて切れ目が入った。

 それでも止めるわけにはいかない。

 痛みに歯を食いしばりながら、鬼の形相で飲ませる。

 これがキツかった。

 傷が癒えるまで1週間ほど。それまでの間は、チビにくわえさせる前に心の準備をして、大きく深呼吸して、「えいや!」と含ませ、「ぎぃぃ……!!」と食いしばって飲ませていた。

 よくヨーロッパの教会なんかの天井に描かれているような、聖母マリアが羽衣みたいな布をまとって、美しい微笑みをたたえながら、天使の赤ちゃんにおっぱいを飲ませる、優しいタッチの宗教画……。

 授乳ってそんなイメージでいたよ!

 乳首切れるなんて知らなかったよ!

 痛いなら代わりにミルクを飲ませれば……とも思ったが、母乳は止まらないわけだから、結局、搾乳しなければならない。

 乳首への負担は一緒なのである。

 そのうちに強くなったのか、皮が厚くなったのか、二度と切れることはなかった。

 乳首の進化である。

 何かと大変な授乳期ではあったものの、ひと時でも、あの大きなバストを経験できたことには感謝したい。

 噂通り、体重の戻りもスムーズだったし。

 ミルク製造をストップしたおっぱいが、みるみるしぼんで、見慣れた大きさに戻るのも早かったなあ……。


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