犯罪を呼ぶ「空き家」をなくす! 専門家「遺品整理は基本」

犯罪を呼ぶ「空き家」をなくす! 専門家「遺品整理は基本」

 2013年の日本の総住宅数は6063万戸。そのうちの空き家数は820万戸で、空き家率は13.5%。18年の最新データは本年4月以降に公表されるが、空き家は物件そのものが犯罪に利用されることもあれば、その周囲に被害をもたらすこともある。空き家の防犯対策はまず。「家の敷地内の見通しをよくしておくこと」というが、他には何があるか。赤根千鶴子氏が取材した。



*  *  *
 自分がもし泥棒として自分の家に侵入するのであれば“どのルートで?”“どういう方法で?”ということをシミュレーションしておくことも必要だと、立正大学文学部教授で犯罪学者の小宮信夫さんは語る。

「家に侵入するため電信柱をよじ登ってくる、あるいはカーポートを登って2階から侵入してくる場合だってあるのです。一度家族で客観的に自分たちの家を眺めてみてください。そしてたとえばカーポートが犯罪者の侵入や逃走の手助けになりそうだと気づいたのなら、そのルートに花のプランターなどをいっぱい置いて、“邪魔なものがいっぱいある場所”“飛び移りにくい場所”にする等々、防犯対策を実行に移すのです。侵入するのは窓かドアからですから、もちろんそのパーツを強化しておくことも大切ですが」

 防犯アナリストの桜井礼子さんは、窓に防犯フィルムを貼ることや、古い窓を防犯ガラスに変えることなども提案する。

「防犯フィルムを窓のカギの部分だけに貼る方がたまにいらっしゃるのですが、これでは外から見ると『ここの部分に防犯フィルムが貼ってあります』というのがわかってしまうんです。防犯フィルムを貼るのであれば、窓全面に貼ることです。その場合は施工業者にやってもらうことになると思います」

 また予算に余裕があるならば、「セキュリティーシステムの導入を検討してもいいでしょう。私がいま申し上げているのは、自主防犯警報システムのこと。たとえばもし窓が勝手に開けられようものなら、外で大きな音が鳴り、なおかつ自分のスマホに緊急で連絡が入ったりするようなシステムを使うとか。留守中に侵入者があった場合スマホから遠隔監視するネットワークカメラがあります。カメラによってはスピーカーが内蔵されているものもありますから、留守中に不審者の侵入があったときは、スマホを使って相手を音声で威嚇できる……等々、いまはいろいろなものがあるんです。そういった防犯システムの利用も視野に入れてみてはどうでしょうか」。

 侵入者があったとき、音は鳴らなくても外でパトライトが回るようにしておくだけでも、防犯効果は違うという。

「大切なことは、『ウチは防犯対策をきっちりやっていますよ』とアピールすることなのです」

 しかしそれは、そもそも空き家になっている家自体にも必要なことである。

「そう、空き家の周辺の家も、そして空き家自体も、犯罪を遠ざけるためのキーワードは一緒です。『入りにくくする』『見えやすくする』。防犯対策はこの二つのキーワードに凝縮されています」(前出・小宮さん)

 空き家自体が中に入りやすい場所であれば、入り込んで犯罪に利用される可能性は多々ある。

「女性を連れ込んで性的な暴行を働く、あるいはたむろする場所として利用されるということもあります。06年に岐阜県中津川市で13歳の少女が15歳の少年に殺されました。この事件は個人の住居ではなく廃墟となっていたパチンコ店で起きたものですが、やはり人がきちんと管理していないということが丸わかりの場所は、犯罪を誘発してしまうのです」(前出・小宮さん)

 空き家というものは、人から見られてはまずいことに利用されるという。

「16年には空き家を使って大麻を栽培していた男が逮捕されています。また昨年は刑務所から逃走した受刑者が、空き家の屋根裏に身を隠していたこともニュースになりました。空き家は中にモノが置いたままだと、それらが盗られたり、人が入り込んで居座られたり、放火される危険性もあることを忘れてはいけません」(前出・桜井さん)

 最近は空き家にモノを盗みに入る泥棒も増えていると、NPO法人「空家・空地管理センター」代表理事の上田真一さんは言う。「家の中にあるものが盗られてしまうケースもありますが、近年多いのはエアコンの室外機が勝手に持ち去られてしまうことです。室外機ならわざわざ家の中に入らなくても持っていけますし売却すればお金になります。そうしたことが起きないようにするためには、やはり所有している空き家は定期的に点検に行くことです。そして意識的に、空き家にはモノは置かないようにすることが大切です」

 空き家を所有している人はそもそも「余裕のある人」だと、上田さんは指摘する。

「空き家を所有するには税金もかかりますし、管理費用もかかります。でもお金にそんなに困っていらっしゃらない方であれば、残しておいても自分たちが困ることはない。だからとりあえずは“現状維持”ということになり、空き家になるのです」

 空き家の多くは、もともとは自分の実家であったりする。そうすればそこには親との思い出もあり、処分に二の足を踏んでしまうのが世の常だ。

「親が亡くなるまで手放さなかった家やモノを子どもである自分たちが処分していいのかどうか、親が亡くなって初めて皆が悩むのです」

 空き家を増やさないようにするためには、やはり親が元気なうちに家、親の所有物を親の死後にどうするか、話し合っておくことだ。

「できれば親が60代くらいのうちに子どもと話し合いを始めるほうがいいと思います。1回の話し合いでまとまるような話ではありませんから、自分たちの死後の話であってもタブー視しないでコミュニケーションをとっておくことが大切です。そして親は子どもたちの考えをきちんと理解すること、子どもたちも親の思いを受けとめながら、その中で妥協点を見つけておくことが理想的です」

 家の活用方法は、実にさまざまだ。そこに家族の誰かが住むこともできるし、家族が住まなくても建物を守りたいのであれば、そこをリフォームして人に貸すという方法もある。建物ではなく土地を守りたいのであれば、家を解体して駐車場として人に貸す方法もある。また、もし親にも子にも活用の意思がないのであれば、売却という選択肢もある。選択肢はいろいろあるが、「結局どうする」という話の筋道は、親の生前に家族で整理しておくのだ。

 そしていざ親から家を相続したときは、遺品の整理はきちんと期限を決めて行うようにする。

「まあ少しの間は置いておこうよ、と何も決めないでいると、結局は考えること自体が億劫になってしまい、それが空き家の放置につながっていきます。まずは、『遺品の整理は今年中』等の期限を決め、そのあとの家の活用プランも軌道に乗せていくことが大事です」

 遺品整理は、面倒くさがる人が非常に多い。

「なんといっても家一軒分のモノがありますからね。でも遺品整理は何も仕分けから処分まで、全部自分で行うことはないんです」

 ポイントはまず「いるもの・捨てたくないものだけを選ぶこと」だ。「『いるもの』『捨てたくないもの』『主にいらないけれど、捨てたくないもの』を、相続した家から運び出してみてください。そしてそれ以外のモノは業者さんに持っていってもらうというやり方もありますよ」

 そして「いるもの」は自分の家に置いておく。だがそれだけでも結構な量になるはずだ。だから「捨てたくないけど、まあどうかなあ」と迷うレベルのものに関しては貸しコンテナを1年だけ契約し、そこに保管する。そして1年後にもう一回見てそのときにいらなかったら捨てるようにする。

「遺品整理の仕方にも合う、合わないがありますから、自分に一番合う方法でやられるのがいいと思いますが、何もしないで空き家に置きっぱなしにしておいて、全部がホコリだらけになる、あるいは雨漏りなどで全部使えなくなる……などといったことになるともったいないです。また置きっぱなしにしているうちに盗られてしまうこともありますので、遺品整理は空き家対策の基本です」

 空き家の活用をすぐに始めなくても、所有するのであれば「管理されている物件である」ということを周囲にわからせることも肝心だ。「私たちのような管理会社が入った場合は、管理会社の看板を空き家に設置します。ここは○○が定期巡回している空き家です、と看板を設置するだけでも、犯罪の抑止につながります。また所有する空き家の近隣住民の人たちとのコミュニケーションも大切にして問題が起こらないようにするのがベストです」

 自分が住んでいる場所、そして自分が空き家を所有している場所。結局そのどちらの地域の治安も守っていくには、“すぐ先の未来”を予測して先手を打っていくことが重要なのだ。いつの時代も、問題の先送りと見て見ぬフリは不幸を呼ぶ。

 そのことを、心にとめておかねばなるまい。

※週刊朝日  2019年3月1日号より抜粋


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