ユーチューブがやめられない8歳の息子、朝起きられず遅刻も… 叱責や罰よりやるべきこと 専門家が解説

ユーチューブがやめられない8歳の息子、朝起きられず遅刻も… 叱責や罰よりやるべきこと 専門家が解説

 親であっても、体罰や子どもの品位を傷つける罰を与えてはいけない。東京都議会で昨年3月に成立した児童虐待防止条例(4月から施行)では、そう明記された。政府も体罰禁止を明記した児童福祉法等改正案を出し、国会審議を始めている。

 誰もが、しつけのノウハウなど知らないまま親になる。それなのに親の言うことを聞かない子にどう対応すればいいのか。

 発達障害の子を持つ親向けにアメリカで開発されたペアレント・トレーニングを指導し、『困っている子の育ちを支えるヒント』の著書がある大正大学准教授・井澗知美さん(心理学)は「指示するときに子どもを威嚇したり、高圧的に出る必要はありません」と話す。実際に、井澗さんが親から受けた悩み相談をもとに、ペアレント・トレーニング超入門講座を紹介する。

*  *  *
【相談】 小学2年生の息子(8)が最近、ユーチューブで動画を観るのにハマっています。約束した時間になっても終わることができず、何度注意しても「もうちょっと」と言って聞きません。しまいには「うるせえ!」などと悪態をつくようになり、夜は寝る時間が23時を過ぎることもあります。そのせいで朝はなかなか起きらなくなり、学校も遅刻しがちです。どうしたら良いでしょうか。(40代女性、会社員)

【井澗さんの解説】 相談室に来られた方に「ほかに困っていることはありませんか?」と聞くと、よく聞くのがテレビやゲームに関する悩みです。それに加え、最近ではスマートフォンやインターネット、SNSとの付き合い方に頭を悩ますシーンも増えているようです。宿題をしない、遅刻しがちという相談も、よく聞いてみるとこの問題が隠れていることもあります。こういうとき親は、有無を言わさず取り上げて険悪になるか、「じゃあ勝手にしなさい」と諦めてしまうかのどちらかのパターンの対応になりがちでしょう。

 でもそれで上手くいくでしょうか? 特に発達に凸凹のある子の場合は、親の本心を感じ取って動いてくれることは難しいかもしれません。また、わかっていてもやめられなくて困っているのかもしれません。必要なのは叱責や罰ではなく、手助け、適切なサポートです。

 今回は、20年以上前から私が指導している「ペアレント・トレーニング」の方法をお伝えします。これは発達障害の子どもを持つ親のためにアメリカで開発されたもので、現在、日本では児童虐待によって分離された親子を再統合するプログラムでも活用されています。基本的には2週間に1回、全10回の講座で、その内容は発達に凸凹のある子の親だけでなく、なんとなく子育てがうまくいかないと感じてる人にも役立つ方法です。

■ステップ1 行動を3つに分ける

 ペアレント・トレーニング講座で最初に取り組むのは、子どもの行動を「好ましい(増やしたい)行動」と「好ましくない(減らしたい)行動」、「許しがたい(なくしたい)行動」の3つに分けることです。

「え? それだけですか?」と拍子抜けする方もいますが、実はこれがとても大事なのです。冒頭のケースで言うと、親がどうにかしたいと思っているのは、ユーチューブを自分でやめらないことなのでしょうか? こちらの指示を聞かないこと、もしくは「うるせえ!」という言葉なのかもしれません。2、3日のことを振り返って、書き出してみましょう。グループでやるとそれぞれの家庭のカラーが出て新しい発見があるのですが、夫婦でやっても違うはずです。

 ある母親は書き出した後、「これは自分の価値観だ」と言いました。そうなんです。子どもの言動の何を好ましい、好ましくないと感じるかは、すべて親の価値観であり、自分が受けた教育や社会の影響を受けています。そこに正しい・間違っているという基準はありません。それに気がつくと、少し心に余裕が生まれると思います。

 そして「反抗的」「悪い子」と思っていた子でも、同時に良い行動もしていることがわかります。また、子どものどんな行動にフォーカスして対応していくかを絞れるようにもなるのです。

■ステップ2 好ましい行動をほめる

 困っている親にとって、最初に手を付けたいと思うのは「許しがたい行動」でしょう。でも、それでは親子関係がこじれてしまう危険性があります。忘れないでください! まずは「好ましい行動」から進めるのが、一番の近道です。

 3つに分けたうちの「好ましい行動」をしたとき、または親が頼んだことをしてくれたときに、行動を認めてほめます。コツは行動が100%終わるのを待つのではなく、行動し始めたときにほめることです。これを「25%ルール」と呼んでいます。視線を合わせ、近づいて、穏やかな明るい声で、微笑んで、簡潔に「○○できたね」「○○してくれてありがとう」と伝えます。

 ほめるのが難しいと言う親もいますが(他人の子はほめられても我が子には難しということがあるものです)、最初は演技でもいいですよ。大げさに言う必要もありません。ポジティブな注目を続けると、子どもも「それならお風呂に入ろうかな」と、指示を受けたときに行動に移しやすくなります。そして何よりも「やればできるんだ」という自己肯定感を持ち、苦手なことにも取り組めるようになります。困ったときに周囲に助けを求めることができるのも、この感覚があればこそ。練習あるのみ!です。

 特に発達障害の子、または診断がついていなくても発達に凸凹がある子たちは、小学校に上がるころには「自分はみんなと同じようにできない」と自信を失っていることがよくあります。「ほめてばかりだと、子どもに良くないんじゃないか」「天狗になるのでは」と心配する親御さんもいますが、そんなことはありませんよ。友だちも学校の先生も世間も厳しいので、親ぐらいはたっぷりほめましょう。

 子どもの性格や年齢によって、こっそり認められる方が良かったり、抱きしめると喜ぶなど好きな褒め方が違います。いろいろと試してみて、その子にあった方法を見つけましょう。

■ステップ3 好ましくない行動から注目を外す

 それに慣れてきたら、次は「好ましくない行動」への対応です。親はついイライラして小言を言ってしまいたくなりますが、何度も「寝る時間でしょ」と注意してもダメなら、子どもはやらなきゃいけないことを知っているのにできない状態かもしれません。それなら、好ましくない行動から注目を外して、好ましい行動が出てくるのを待ち、「自分でやめようとした」という行動が始まったらすぐにほめましょう。

 もちろん、しつけとして教えていくことも必要ですし、叱ってはいけないという意味ではありません。たまたまでも、できたときに注目をするのです。どの行動を無視するか、代わりにとってほしい行動は何かをあらかじめ考えておきましょう。

 また、好ましくない行動が起きる場所や時間帯、そのとき同時に起きていること(園から帰って疲れているのかも、など)、親の感情や表情、そうなったときに自分に言い聞かせることなどを書き出し、あらかじめ作戦を立ててから取り組んでみましょう。

■ステップ4 「CCQ」で指示を繰り返す

 小学5年生のある男の子は相談室で、こんなことを話していました。

「うちの親はうざい。俺がテレビを見ていたら、突然、いい加減にしなさい!って怒鳴るんだ。あんな言い方されるとすごい嫌な気分になる」

 母親に聞くと「何度声掛けしても『うん』と言うだけで聞かなかったので、最後に『もう、いい加減にしなさい!』と叱ったんです」と言います。

 別の小学2年生の子は、きつく叱られた後に「俺はダメな子だから、今ここで殺してくれ」台所から包丁を持ってきました。母親は相談室で「こんなことを子どもに言わせるなんて」と泣きながら話してくれました。

 自分の親からそうされてきた人も多いかもしれませんが、指示を伝えるのに威嚇したり、高圧的に出る必要はまったくありません。Calm(穏やかに)、Close(近づいて)、Quiet(静かに)の、CCQを常に意識しましょう。特に、子どもがテレビやユーチューブなど、好きなことに夢中になっているときは、工夫が必要です。近づいて、肩をトントンと叩き、名前を呼んで顔を見る。そして指示は短く具体的に「テレビを消しますよ」と断定的に伝えます。疑問形や小言はやめましょう。

「一度で聞いてほしい」と期待する親は多いものです。しかしその子は、言葉の指示が入りにくいのか、次の行動に移るのに時間がかかるのか、動き出すのに時間がかかるのか、何か困難さをもっているのかもしれません。数分ごとに繰り返してみましょう。理想ではなく現実的に考えます。

 と同時に、できるのにやらないのか、そもそもやれないのか、と考えてみることも大事です。

「あと1分でやるから」と子どもが引き延ばし作戦に出たら、ブロークンレコードというテクニックを使ってみるのも手です。屁理屈に付き合わず、壊れたレコードのように、ただ指示を繰り返すのです。子どもが指示に従いやすくするように、「自分で消す? それともお母さんにリモコンを渡す?」と選択させたり、「○○したら、××できるよ」と肯定文で伝える方法もあります。

■ペアレント・トレーニングで得られるスキル以上のもの

 小学生の子を持つ30代の母親は、10回の講座を終えた感想をこう話してくれました。

「いろんなスキルが使えるようになったのはもちろん嬉しかったけど、子どものことをかわいいと思えるようになったことが一番嬉しかった」

 この母親は「我が子をかわいいと思えない」なんて、誰にも言えずに苦しかっただろうと思います。私もスキルは手段に過ぎないと考えています。私たち専門家ができるのは、人の行動の原則をなるべくわかりやすく伝えることですが、その子が何を好きで、どんなことに喜ぶのか、どんな特徴を持っているのかを知っているのは親です。親が“我が子の専門家”になるのを助けるのが私達の役割だと考えています。

 とにかく小さな成功を見つけることが大事です。うまくいかなくて叱ってしまっても「チャレンジしたから良い」「次またやってみよう」と親も自分自身を25%でほめて、許しましょう。

 ここで解説したのはペアレント・トレーニングのごく一部です。講座は自治体や児童精神科でも開催されていますし、2016年に発足した「日本ペアレント・トレーニング研究会」では指導者育成に力を入れ、より多くの人にこのプログラムを届けたいと考えています。専門書も多く出版されているので、うまくいかないと感じている人は、ぜひ手にとってほしいと思います。

(※自閉症など発達の特性によっては、より厳密なテクニックを要することがあります。その場合は、医療機関など専門家にお尋ねください)

(聞き手/AERA dot.編集部・金城珠代)


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