気がついていないだけで実はあなたも普段、“しゃべり”で周囲の地雷を踏んでいる可能性が! 心配な方は、いまのうちに直しましょう。いまからでも決して遅くはありません。ライフジャーナリストの赤根千鶴子さんが円満な人間関係を築いていく、話し方の極意をその道のプロに聞いた。



「あの人、あんな偉そうな話し方をしなければいいのに」「いちいちあんな余分なことを話さなければいいのに」。他人を見て心の中でそんなふうに思うことは、誰でもよくあることだろう。

 だが、ここでちょっと自分自身のことも振り返ってみてほしい。普段、自分は本当に人をイライラさせるような話し方をしていないだろうか? まわりをカチンとさせる物言いをしていないだろうか? 人間は話し方ひとつでも印象がガラリと変わるもの。ならばいまの年齢に合った、人生にプラスになる話し方テクニックを学びたい。

 まず発音・発声からレクチャーしてくれたのは『愛される話し方』(朝日新書)などの著書がある、キャスターの吉川美代子さんだ。吉川さんはTBSアナウンススクールの校長を12年間務めた教育者でもある。

「シニア世代になると、年齢と共にどうしても声の元気もなくなりがちです。でも“聞き取りやすい声”というものは、コミュニケーションの基本だと思います」

 おっしゃるとおり。確かにボソボソしゃべりでは、会話は長続きしないものだ。

「発音をクリアにするためには、舌が根元からきちんと動いていることが大切なのです。舌がよく動くようにするためには、口を大きく開けないで『あいうえお』『かきくけこ』と五十音を発音するトレーニングをおすすめします」

 唇を閉じ気味にしてこのトレーニングを行うと「あ」「い」「う」「え」「お」だけでも音によって舌の位置が全然違うのがよくわかる。「唇を動かす必要はありません。舌だけが軽やかに動く感覚を身につけて、クリアな発音をキープしていきましょう」

 そして発声をするときは、のどに力を入れて話すのではなく、丹田(へその下)を意識して話す。

「『よろしくお願いします』という言葉だけでも、のどの辺りから声を出すのと、丹田に力を入れて言うのとでは、響き方が違うのがわかると思います。丹田に『音のかたまり』があって、ここから声が出ているんだと意識するといいかもしれません」

 6年前にTBSを定年退職した吉川さん。定年後はどんな場所でも、誰に対しても、まずは「個」として対等な立場で丁寧な言葉で話すことが大切だと言う。

「趣味の集まり、サークル活動等いろいろな場があると思いますが、会社勤めのときのように、肩書による上下関係はない場所なのだということをよく理解しておかないといけません」

 見た目が自分よりも若い人でも、実は自分よりも相当年上……なんてこともある。にもかかわらず、「あなたさー」と相手を年下扱いしたような話し方をするのは、自分から嫌われるタネをまくようなもの。

「また、わざわざ難しい表現を使って話さないことも大事です。たとえば『おっとり刀で駆けつけた』とわざわざ慣用句を使って話すのではなく、シンプルに『急いで駆けつけた』と話したほうがいい。おっとり刀というのは『押っ取り刀』。刀を腰にさす暇もなく、鷲掴みにして急いで……という意味ですが、“おっとり”という音を聞いて“のんびり”と誤解する方もいますから」

 世の中、自分の常識がどこでも通じるわけではない。

「教養があるということは素晴らしいことですよ。でも自分が言いたいことをいつでも上手に人に伝えるためには、常時、誰にでも理解してもらえる表現で話すことです。普通の日常会話の中で横文字のカタカナ語を乱発するのも、私はやめたほうがいいと思います」

 大切なのは、会話を交わす相手の中に“「ん?」と思うような違和感”が生まれないよう、相手を思いやって言葉を伝えること。あの手この手で自分を大きく見せようと振る舞うことは、一番人に嫌われる。

「『個』としての自分に自信がないと、つい昔の肩書に頼ったり、社会的な地位が高い親族の名前を出したりもしがちですが、それも絶対やめたほうがいいです。『私の親族は○○の社長です』と言われても、言われた相手は『で、あなたはなあに?』と思うだけです」

 老後の人づきあいは「個」対「個」なのだ。ここからは本当に自分の「個」としての実力が試されると思ったほうがよい。

「自分以外のものに寄りかかったりしないで、自分の“人間力”を磨いていくことが大切なのです」

※週刊朝日  2020年2月21日号より抜粋