働き方を変えるには、今の自分にできることを知り、先を見通す作業が欠かせない。15年後にやりたいことを思い描き、働くペースや環境を整える一歩を踏み出そう。AERA2020年2月17日号では、自らが納得できるキャリアを築くための具体的な方法を紹介する。



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 これからの働き方を考えるために、欠かせないことは何か。

 まずは自分を知ること。そのために必須の作業は、働き手としての自分の価値を知ることだ。専門分野の資格や技能、知識だけではない。これまでに培った経験や人間関係、仕事をする上で大事にしている価値観も立派な資産になる。

 働くペースを緩めたからといって、「下り坂」と思う必要はない。

「働き方に上りも下りもありません。自分の納得のいくキャリアを築くためには『視点の転換』が必要です」

 リクルートキャリアコンサルティングの久安美沙子・ソリューション開発室長はこう強調する。視点を変える最初のステップとして、キャリア資産を「働く上での価値観」「変化対応力」「強み・持ち味」「人脈」の4類型に大別。点検シートを用いて、キャリアの具体化や「見える化」を促している。

 今回本誌は、主に大手企業の40歳以上を対象に有料で実施している研修の内容を取材。点検シートの抜粋と共に公開する。

「働く上での価値観」とは、どんなことに重きを置いて働いてきたか、という軸を指す。「自分のアイデアを活(い)かせる」「社会に貢献しているという実感を持つ」など久安さんらが行う研修では45項目を列挙。何を大事にしたいのか自覚できれば、職種ではなく、価値観が合うかどうかで仕事を選ぶことも可能になる。

「変化対応力」では、変化をチャンスと受け止められるかを問う「変化への前向きさ」のほか、「変化への柔軟性」「楽観性」「自分なりの判断軸をもっているか」といった特性も点検する。

「できていない」ことが多い場合、これから意識していきたいことを決め、周囲で得意としている人の行動を観察し、できることから真似(まね)をするのが有効という。日常の仕事を通して意識的に取り組みたい。

「強み・持ち味」は、「対人」「対課題」「対自己」に分け、掘り下げていく。人と向き合うとき、他者との信頼関係を築く「人間関係を作る力」があるか。課題と向き合うとき「アイデアを形にする力」があるか。自己と向き合う際、感情に流されないように自分をコントロールする「自分の状態を整える力」があるか、といった具合に強みの本質を浮かび上がらせる。チームで働くのがよいのか、独立するほうが自分を生かせるのか、働く環境に目を向けるきっかけにもなる。

 自己診断で挙げた強みも、いざというとき発揮できなければ意味がない。次に取り組むのは逆境の記憶の棚卸しだ。

 不本意な異動を命じられたとき、どうやってモチベーション維持に努めたか。そのとき、どういう強みや持ち味を発揮して乗り越えたのか。こうした経験をいつでも記憶の棚から取り出せるようにしておけば、実践での応用力や再現性が高まる。

 自分の過去から現在を俯瞰(ふかん)した後、いよいよ将来を考えるステップに入る。

 大事なのは目先ではなく、「15年後」をイメージすることだ。なぜ15年なのか。5年だとある程度、具体的に見通せるが、15年だと想像力が必要になる。その人らしい自由な発想を抽出することができるのだ。

 政府の報告書や自社の中期経営計画をヒントに、社会や自分の会社にどんな変化が起きているか、どんな影響を自分に及ぼしそうか、という観点から15年後の未来を想像する。そこに結婚、子育て、住宅購入、介護などプライベート上の環境変化の予測も加えてみよう。

 15年後を具体的にイメージすることで、社会のどういう変化を自分はチャンスと捉えたいのかが見えるはずだ。その上で今、どう行動するべきなのか、現在の問題に立ち戻ろう。

 ここであらためて「今の会社で一番やりたいこと」「今の会社で2番目にやりたいこと」「今の会社以外で自分がやりたいこと」の3点について考えると、問題が整理されて視界がクリアになる、というわけだ。

 仕上げはアクションプランの明示だ。大事なのはどんなに小さなことでも、やりたいことの実現に向けて「明日、何をするのか」を具体的に決めること。たとえば、社内の別の部署に移りたいのであれば、その部署の人に話を聞く。転職を希望するのであれば、転職サイトを見たり、社外に出た先輩の話を聞いたりする。大学の同窓会に参加し、他業界の状況や考え方を知ることでもよい。

 どう働くかは、どう生きるかということでもある。問われているのは、目先の仕事だけでなく、自分の人生をトータルでどう組み立てていきたいのか、という主体的な構想力だ。納得のいく生き方は自分にしか決められない。(編集部・渡辺豪)

※AERA 2020年2月17日号より抜粋