3月25日発売のアエラ増刊「AERAMoney今さら聞けないお金の基本」では、経済評論家の勝間和代さんにインタビュー。新型コロナウイルスで日本全体が守りの境地に入っている今、「お金を守る」という視点で取材した。勝間さんの興味深い話の中から、とっておきの発言を抜粋してお届けする。



*  *  *
 ストレートな疑問をぶつけた。「なぜお金が貯まらないのでしょうか」と。

 勝間さんは「お金が貯まらない人は『時間割引率』の高い人です」と即答した。

 時間割引率とは行動経済学の用語で、将来もらえる価値をどれだけ小さく見積もるか、ということ。時間割引率が高い人は、今の楽しみだけを考えて大事な未来に目を向けない傾向がある。

「典型的な例は消費者金融と宝くじです。消費者金融は重い金利が将来の負担になるのに『今、現金が必要だから』と借りる。宝くじは『夢を買う』と言いながらお金を出しますが、買った夢は抽選日に高い確率で消えます。お金の貯まらない人は、これと似た行動を無意識にとっているんです」

 お金が貯まらない=稼いだ分を全部使ってしまっているということだが、まずは貯金ができる体質になるために、買い物について話してもらおう。よろしくない消費の例として勝間さんが引き合いに出すのが、「総菜のカボチャ」の煮付けである。

「コンビニやスーパーでは小さいカボチャの煮付けが数切れで200〜300円。こんな高いものをどうして買うのだろうと(笑)。旬の季節なら、カボチャ4分の1個が150円くらいで買えますよね。家で煮るか蒸すかすれば、総菜カボチャの半額で数倍の量をおいしく食べられるのに……」

 スーパーマーケットでの勝間さんの行動には一定の「法則」がある。

「私は、スーパーで売り場中央の棚には行きません」

 店舗の配置の仕組みがきちんとわかっている人ならではのわかりやすい視点だ。

「スーパーの壁際には肉や野菜など冷凍・冷蔵、つまり陳列に電源が必要な商品が置かれます。売り場中央部には、同じ食品でも調理工場で作られた製品が置いてあるケースが多いんです。工場で作る食べ物は人件費や印刷・宣伝費、物流費と、ちょっとの原材料費でできています。食べ物を買いに来ているのに、払ったお金の大部分が違うところに使われているのは……」

 そもそも勝間さんは、スーパーに行って品物を選び、レジで会計をする時間のロス、重いものを持ち帰る体力のロスを避けるためにネットスーパーを愛用している。

 勝間さんは、単純に倹約という意味での節約を勧めているのではない。無駄な買い物をしないようにするということだ。

「無駄遣いとは『価値のないものを買うこと』です。価値のあるものは高くてもお金を払っていいと思います。価値と値段のつり合いがとれたものを買う、つまりコストパフォーマンスが高いものを選んでほしいなと思います」

 お給料から家賃や水道光熱費などの固定費を引いた残りが「今月使えるお金」。その2割を貯金なり投資なりに回して、残り8割で自分が「コスパ良好!」と思った品物だけを買う生活を続けていれば、そんなにお金には不自由しないはずだという。お金が貯まらない人、無駄遣いが多い人に教えたい視点はまだある。

「人の評価を全く気にしないことです。人の目を気にして、本当はこっちでいいと思っているのにワンランク上のものを買ってしまっていませんか?」

「すみません、買ってます」と思わず声に出して謝ってしまった。

「経済学に『地位財』『非地位財』という考え方があります。地位財は他人と比べるためのもの。ブランド品などがこれに該当します。一方、非地位財は自分の利便性のためにあり、他人と比較せずに満足が得られるものです。地位財は最大級の無駄です」

 勝間さんはさらに問う。

「使わないものを買っていませんか?」

 えっ、使わないものをわざわざ買うわけは……。

「バーゲンで安いからと買って、一回も着なかった服や靴はないですか? 洋服の場合、値段がいくらであっても、着ない服は高い買い物です。私はアウトレットやバーゲンには行きません。アウトレットはアウトレット専用商品のことが多いですし、バーゲン品って『売れ残り』を上手に言い換えただけですよね」

 大笑いしてしまった。売れ残り、全くもってその通り。

「私の洋服は半分くらいがユニクロと、さらに格安のジーユー。残り半分は『エアークローゼット』(月額制の洋服レンタルサービス/ライトプラン7480円+送料330円<税込み>〜)です。かばんは今、ブランド品のボッテガ・ヴェネタを月7000円程度でレンタルしていますが、使い心地がいいので買い取ろうと思っています。かばんは店頭でいくら吟味しても、使ってみなければわかりませんから」

 ボッテガ・ヴェネタのかばんといえば数十万円。上質でツヤのある柔らかい革を使っている。革なのに、さほど重くない。20万円も30万円も出して外れると痛手だが、使ってみてよかったので、高くても買う。確かに勝間さんは単なる倹約家ではないことがよくわかる。

「下着はいわゆる一流メーカーの品物を買っています。つけ心地が安いものとは全く違ううえ、たくさん洗濯をして長く使っても型くずれしにくいからです。私は、買い物をするときは『使用回数で割り算をしよう』とアドバイスしています。下着もかばんも靴も、毎日使いますから1日あたりの金額に直せば安いものです。自分にとって便利で気持ちよく使える品物が見つかれば、高くてもお金を出していいんですよ」

 人の目にとらわれず、自分で考えて、選ぶものや買うものをロジカルに決めていく。その際には常にコストパフォーマンスを考える。これが勝間流「消費の極意」である。(構成/大場宏明、編集部・中島晶子、伊藤忍)

※アエラ増刊『AERA Money 今さら聞けない貯金の基本』の記事に加筆・再構成