YouTubeで「現役僧侶が現代人の悩みに答える」という一風変わったコンテンツがヒットを飛ばしている。動画配信には「一対一以上の可能性」もあるという。AERA 2020年3月30日号から。



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「もう、本当に泣けてきた」「自分の事言われてるみたいで胸に刺さります」「少し自分にも取り入れてみます」……。

 これらは、YouTubeチャンネル「大愚和尚の一問一答」で配信された説法「自分を変えていくヒント」に対し、視聴者から寄せられた声だ。同番組は、愛知県小牧市で540年続く福厳寺の31代住職、大愚元勝和尚(47)が2014年にスタートした。大愚和尚が寄せられた悩みに対し「答え」を語っていくスタイルで、口コミで人気が広がった。月5千人ペースで登録者数が増加し、3年目には登録者数が19万6千人を超えた。

「最初の数年は、お檀家さんから反発がありました」

 大愚和尚はそう明かす。当初は、弟子と2人でひっそりと始めたのだという。

 きっかけは、過食と拒食、リストカットを繰り返す少女の相談を、その母親から受けたことだった。客間で母親の話を聞いていると、隣に座っていた少女がいきなり手首を切った。幸いにも傷は浅く、出血はすぐ止まったが、大愚和尚は「このまま黙っていてはいけない」と感じたという。

 少女は悩みを人に言えずに苦しんでいる。家族はそんな少女を見ることに苦しみを覚えている。葛藤を抱え、もがき苦しんでいる人々がいる。

「仏教は、お釈迦様によって発見され、伝えられた『苦しみの手放し方』です。もっと積極的に、それを人々に伝える努力をすべきだと。その手段として、YouTubeに思い至ったのです」

 毎週1〜2回、大愚和尚はカメラを前に「苦しみの手放し方」を語る。中には1時間近くに及ぶ説法もある。「あまり長いと見る人が離れてしまう。3分くらいにまとめた方がいい」とアドバイスを受けたこともあるが、あえて「そのまま」にこだわっている。

「対面して相談を受けるときと同じでありたい。『死にたいんです』という人に、『死にたくなくなる三つのポイント』なんてまとめられないでしょう」

「一問一答」を始めて、YouTubeだからこそのよさにも気づいた。まず、相談者が本当の自分を、正直にさらけ出せること。次に、苦しみを「詳細に記述して送る」という作業を通して、苦しみが可視化され、自分で苦しみの原因に気づけること。苦しみには共通したパターンがあると知ることができること。

「そして、老若男女問わず、日本国内はもちろん海外の人も、苦悩に対する救いを仏教に求めているともわかりました」

 一問一答の回答待ち相談数は、現在1300件以上にのぼる。相談者は自分の相談への回答を待つ間、すでに配信されている動画を見る。そして、苦しんでいるのは自分だけではなく、ほかの人への説法が自分の苦しみにも響くことに気づくケースは少なくない。

「一対一での説法にはない可能性を、YouTubeは持っていると実感しています」

 現代人の寺離れが指摘されて久しい。20年後には、全国7万以上の仏教寺院のうち、3分の1は消滅するとも言われている。「スマホで説法」というとファンキーに聞こえるかもしれないが、苦しみを抱えている人に向け伝える機会を多く持ちたいと踏み出した新たな一歩だ。(ライター・羽根田真智)

※AERA 2020年3月30日号