4月から約200項目に上り変更された民法が施行される。消費者を守る内容がある一方で、不動産の賃貸などでは注意すべきところも目立つ。



 部屋を借りるときに払った敷金は、原則として契約終了時に戻ってくる。通常の使い方でできた傷や経年劣化については、借り手が負担する必要はない。

 国民生活センターによると、敷金や原状回復費用などを巡る相談件数は、ここ数年1万3千件前後で高止まりしている。国交省はガイドラインで借り手の保護を定めているが、次のような相談も寄せられていた。

「十数年住んだ賃貸アパートを退去したが、大家から請求された原状回復費用が高額。国交省のガイドラインをもとに反論したが、取り合ってもらえない」

 家具を置いたことによる床のへこみや、テレビや冷蔵庫の後ろの黒ずみなどは、「通常の使い方」にあたるので修理費用を負担しなくてよい。一方でペットによるひっかき傷やたばこの汚れなど、負担が認められるケースもある。

「契約書に『入居期間終了時に新築同様にして返す』などと書いてある場合は、経年劣化による傷みでも修理費を求められることがあります。契約を結ぶときにしっかりと確認しましょう」(民法に詳しい吉田修平弁護士)

 土地を貸し借りする期間の上限は50年に延びる。今までは20年までで、それ以上使い続けたい場合は契約を結び直す必要があった。なお、建物を所有する目的で借りた土地は、借地借家法の対象になるので、もともと借りる期間に上限はない。

 建物や設備に欠陥があったり、注文と違っていたりした場合、修理や値引きを要求できる。これまでは契約を解除するか、損した分の賠償を求めることになっていた。

 こうした「欠陥」については、法律上の呼び方も変わる。今までは「瑕疵(かし)」と呼んだが、「契約不適合」になる。

 アパートに備え付けのエアコンや給湯器が壊れたり、雨漏りしたりしたときに、借り手が自分で直せるようになる。修理そのものは本来、大家に責任があることに変わりはない。修理が必要なことを大家に通知しても対応してくれない場合には、借り主が自分で直して費用を請求できる。

 ただし、本当に修理が必要だったのか、費用は適切だったのかなど、トラブルになりそうな点もある。

「民法の修理(修繕)は、マイナスの状態を元のゼロの状態に戻すことです。改築や増築、トタン屋根を瓦ぶき屋根にリニューアルするといったことは認められません。大家と借り手の受け止め方が異なるケースも想定されるので、よりきめ細かい契約書が必要になるでしょう」(同)

 設備の故障や建物の破損があれば、その規模や割合に応じて家賃を下げてもらえる。どのくらい下げるかは大家との交渉次第だ。

「飲食店が入るビルで新型コロナウイルス感染者が出たと想定し、消毒のため休業を余儀なくされた場合はどうなるのか。結論から言えば、ケース・バイ・ケースです。新型コロナウイルスが台風や地震のような天変地異にあたるのか、消毒が国や自治体などの命令にもとづくものなのか、さらには大家や借り手の価値観にも左右されます」(同)

 日本賃貸住宅管理協会は目安を示している。例えばトイレが使えなくなった場合は、1カ月あたりの家賃の2割相当分を、使えない期間に応じて日割りで減らしてもらえる。実際はもっと複雑なので、専門家に相談しよう。

 最後に相続についておさらいする。「配偶者居住権」の制度が始まり、夫が亡くなった後に残された妻が自宅に住み続けながら、一定の現金も確保しやすくなる。

「配偶者短期居住権」の制度も始まる。遺産分割協議がまとまるまで、最低でも6カ月は無償で住み続けられる。妻が自宅を相続できなくても、すぐに自宅を出ていかなくてよくなる。

 7月10日からは、自筆証書遺言を法務局が預かる制度もスタートする。形式的な不備がないかどうかをチェックしてもらえ、紛失や偽造の恐れがなくなる。家庭裁判所での「検認」の手続きもいらなくなる。手数料など決まっていない点もあるので、これから自分で遺言を書く人はチェックしておこう。

 ここまで見てきたもの以外にも請負契約に関するものなど、変更点はいろいろある。全てを把握するのは難しく、悩んだら弁護士ら専門家に相談することが大事だ。

「法律は文字で書かれているので、現実とはどうしてもずれが生じます。解釈や争いの余地は常にあるものです」(同)

 コロナショックで経済が混乱するなか、新年度を迎える。家計も苦しくなるなかお金や暮らしのルールに気を配って、損をしないようにしたい。(本誌・池田正史、浅井秀樹)

※週刊朝日  2020年4月3日号より抜粋