新型コロナ関連のニュースばかり追っていると、心落ち込み、ストレスを感じ、不安に苛まれることもあるだろう。この時だからこそ笑ってほしい! コラムニスト・作詞家のジェーン・スーさんの最新刊『揉まれて、ゆるんで、癒されて』(朝日文庫)から、心の疲れが吹っ飛ぶエッセイをお届け。今回の話は、失恋でボロボロの後輩女子を労わりに訪れた、ストレッチ系マッサージ店。後輩女子は尻伸ばしで、ジェーンさんは肩周りのストレッチで叫び声を上げるハメに。これって四十肩の前兆?

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 大・大・大好きな20代の可愛い後輩女子が、ザックリ失恋いたしました! おめでとう!

 深夜の号泣電話は激しい嗚咽で話の7割が聞き取れず、急遽、翌日に会おうということになりました。

 翌夕、駅で私を待っていた彼女の姿はいつもよりずっと小さく見えました。この世の終わりとばかりに憔悴しきっています。わかる、わかるよその気持ち。

 しかし私は「こういう時代もあったよなー」と、スンスン泣く彼女を見てなんだかニコニコしてしまうのでした。大丈夫、大丈夫。時間がぜーんぶ解決してくれるから。

 彼女が災難だったのは、失恋と転職と、初めてのひとり暮らしが同時期に発生したことです。あれ、つらいよね。そのトリプルコンボすら経験済みなのは、私が彼女よりずっと長く生きているからにほかなりません。

 先輩面してご飯でもご馳走しようかと思いましたが、聞けば失恋・転職・引越しの三重奏で、生まれて初めて体にコリを感じているとのこと。加えて「いままでに一度もマッサージを体験したことがない」と言うではありませんか。まさにマッサージデビュタントに相応しいタイミング! その初体験に同行しない手はありません。奢るよ! マッサージ!

 目を腫らせた彼女を連れて行ったのは、麻布十番のストレッチ系リラクゼーション店。ここ数年で一気に店舗数を伸ばしているお店です。心身ともに縮こまってしまった彼女に、本来ののびのびとした姿を取り戻してもらいましょう。

 ジャージに着替え、隣同士で施術用ベッドに横になります。仕切りはないので、お互いの様子は(見ようと思えば)丸見えです。

 手慣れた手つきのストレッチに身を任せながら、「ここは一気に店舗を増やしたけれど、どこまでが直営で、どこからがフランチャイズなんだろう?」なんてことを考えていたら

「ぃぃぃぃぃ痛い! ぃぃ痛い!」

 と、隣のベッドから彼女の小さな叫び声が聞こえてきました。見ると、お尻のあたりをグイグイ伸ばされています。そうでしょう、そうでしょう。失恋とは痛みを伴う自己改革。せめて体だけはスッキリさせて、また大きく羽ばたいて!

 余裕たっぷりで悶絶失恋女子の姿を眺めていましたが、肩周りのストレッチで今度は私がイダダダダダ! と叫び声をあげるハメに。うっかり忘れていたけれど、私は中年。これって、遠い昔に親が患っていた四十肩の前兆なのでは? イヤだ、もうそんな年頃か。

 20代半ばと40代前半の女ふたり、持家も伴侶も子どももない点では同類ですが、後者の体は確実に老いている。「全米よ、これが悪い見本だ!」という気分になりましたが、まぁこれも人生だ。

 60分で6600円、体の可動域を広げた失恋女子と中年女は、肩甲骨を広げ、ホルモンを焼きに夜の街へと羽ばたきました。失恋には肉も効くのです。