「週刊朝日」が調査する実志願者数ランキングで、今回初めて全50大学が公開に応じた。大学はこれまで、のべ志願者数を公表してきたが、1人の受験生が同じ大学内でいくつ併願しても1人と数える実志願者数を見ると、本当に勢いのある大学がわかる。



 のべ志願者数は、例えば1人の受験生が同じ大学の学部・学科を三つ併願した場合、志願者数を3人と数える。近年、多くの大学で併願受験料の割引など併願制度が充実してのべ志願者数が急増し、大学の人気が測れないという声が出ていた。そこで本誌は2018年から、のべ志願者数上位50大学を対象に実志願者数調査を実施。当初は大半の大学が非公表だったが、公表に転じるようになった。

 ランキングを見てみよう。定員厳格化で入試が難化した影響や、次年度から新テストが始まることから浪人を避けるため、実志願者数を減らす有名私大が目立った。その中で、2年連続2度目の1位となったのが法政大だ。

 学部新設などの改革が奏功。また、近年は入試難度が下がったため、成績上位層の押さえとして、中間層の狙い目として見られるようになり、5万2千人もの志願者を集めたとみられる。

 2位には、意外にも昨年4位の日本大が入った。法政大とはわずか146人差だった。アメリカンフットボール部の危険タックル問題で評判を落とし、昨年は実志願者数が前年比85%と大幅に減少した。しかし、今年は同107%と戻した。

「やはり日大ブランドは強い」と大学通信の安田賢治常務はみる。在学生約7万5千人と日本一のマンモス大学。卒業生が100万人を超え、あらゆる分野で活躍する。各地に付属校があり、地方でも知名度が高い。

「安全志向から早慶やMARCH(明治、青山学院、立教、中央、法政)など上位の大学を受けない代わりに、日大に志願が集まったのでしょう。そこにブランド力の強さがうかがえます。来年は実志願者で首位になって、完全復活となる可能性もあります」(安田常務)

 中堅大学では実志願者数を増やしたところが目立つ。

 最も増加率が高かったのは東京工科大で、前年比117%だった。受験生に人気の人工知能専攻や生命科学・医薬品専攻などを新設。安全志向から上位の人気理系大学が敬遠される中、志願者を集めた。

 次いで高かったのは関東学院大で、前年比112%。13年から学部の新設・改組に取り組み、看護学部、国際文化学部など9学部を新たに設置。22年には横浜市都心部に新キャンパスを開設予定だ。担当者は言う。

「取り組みを丁寧に伝えて、毎年、コツコツと実志願者を増やしてきた。大々的に広報すると、一気に志願者が増えて倍率が上がり、翌年敬遠されてしまいます」

 大学関係者からはOBの小泉進次郎環境相の効果も指摘されている。昨年、フリーアナウンサーの滝川クリステルさんとの結婚や、初入閣で話題に。出身大学も、地元の神奈川県を中心に注目を集めたようだ。

 反対に大きく減少したのは駒澤大で、前年比69%だった。昨年、のべ志願者数が前年比9%増えた一方で、合格者を17%も絞った。難化した結果、安全志向の受験生に極端に嫌われた形だ。

 神戸市や周辺の大学も減少が目立つ。関西学院大が前年比88%、神戸学院大が同82%だ。駿台教育研究所進学情報事業部の石原賢一部長は理由について、「神戸の地盤沈下」と指摘する。

 神戸市は人口減少が続く。政令指定都市の間では人口で長らく5位だったが、15年に福岡市、19年に川崎市に抜かれ、7位に。加えて受験生の地元志向も強まり、大阪や京都などからの志願者集めが難しくなっている。

「神戸はかつて新興住宅地があり、若い世代も多かったのですが、今は高齢化しています。11年前に阪神電鉄と近鉄で直通運転が始まって交通の便が良くなったことで、勢いのある大阪の大学に志願者を取られています。街レベルでの対策も必要でしょう」(石原部長)

 近年、実志願者数を伸ばしている大学はどこか。17年の数字と比較してみた。

 増加数で見ると、千葉工業大が約3800人増やした。同大には、全17学科を併願しても1学科分の受験料(一般入試の場合3万円)しかかからない併願制度がある。それが多くの実志願者数を集めた理由とみられる。また、試験日前日まで出願を受け付ける体制を整え、安全志向の受験生の受け皿になっている。

 それだけではない。入学後の学習支援が手厚く、学生サポートセンターでは数学や物理などの基礎学力を専門講師が個別指導している。また、キャンパスの校舎を刷新し、最新の設備を整えた。同大の広報担当者は「学生の満足度も向上し、高校教諭からの評判も良くなっている」と話す。

 増加率で見ると、桜美林大が17年比で157%と最も高く、武蔵野大が143%、東京都市大が131%で続いた。いずれの大学も学部やキャンパスを新設したり、キャリア支援を手厚くしたりするなど改革に取り組んでおり、評判を上げている。

 一方、実志願者数を大きく減らした大学を見ると、早慶や同志社大、明治大、東洋大などの人気大学がずらりと並ぶ。受験生の安全志向から軒並み大きく減らした格好だ。今後いかに実志願者数を増やすかが問われそうだ。

 今年は新型コロナウイルスの影響で、オープンキャンパスや説明会が開催できないなど、志願者集めが難しくなると見られる。これまで以上に大学の実力が問われる状況になっている。(本誌・吉崎洋夫、緒方麦)

※週刊朝日  2020年5月8日−15日号