湘南鎌倉総合病院(神奈川県鎌倉市)は、「救急患者を断らない」をモットーとし、最も症状が重い患者を診る3次救急も担う。そのため、同院の救命救急センターの救急搬送件数は、全国トップクラスの年間約1万4千件だ。


 
 現在、新型コロナウイルス感染拡大での救急の混乱が伝えられるなか、救命救急の現場はどうなっているのか。同院で救命救急センター長を務める山上浩医師に最前線での状況を取材した。前回記事「テレビでは伝わらない、救命救急医が見たコロナ最前線!”神奈川モデルが機能。東京はもっと厳しい”」に続き後編をお届けする。

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■現在、各地で院内感染により救急の受け入れを停止するといった事態が起きています。こういったことが起こると、周囲の病院にも影響がありますか?
 
 間違いなくありますね。

 実は、僕は、オーバーシュート(患者の爆発的急増)は、たぶん今までの傾向からして、今後、起こる可能性は高くはないだろうと思っている部分がありまして。それよりもむしろ、どちらかというと、周囲の病院で次々に院内感染が起きて、受け入れのできる病院が少なくなってきたときに、受け入れ可能な病院に、診断がまだついていない患者さんが集中してしまうのが怖いですね。

 そういう状況がなんとか起きないでほしいなと思っています。「コロナの患者数が増える」というよりは、「(院内感染の発生により)受け入れ病院の数が減る」ほうが今は怖いです。そのほうが、特に今の神奈川の患者数のレベルだとよりリアルな話だと思います。

■コロナの感染を疑われる患者さんがきたら、どうされていますか?

 病院の入り口に、当院の職員を配置し、発熱やせき、のどの痛みなどの症状がないかどうか、お声がけしています。そして該当症状がある患者さんは、すべて救急に案内しています。救急の受付では、看護師が症状をきいたり問診をとったりして、トリアージします。そのトリアージ(緊急度に従って手当ての優先順をつけること)で緊急性が高い、たとえば「酸素がすぐ必要」とか「血圧が低くてこの人はすぐ処置が必要」という人は救急のベッドに入れます。

 そうではない人は、平日9〜19時の間は仮設プレハブで発熱外来をやっていますので、そこに行ってもらうようになっています(それ以外の時間は、救命救急センターの隔離された外来スペースにて対応)。こういう体制で、感染を疑われる患者さんが来院した段階から、できるだけ隔離をしているという状況ですね。

■コロナ感染を疑われる患者さんを、どのくらい診ていますか?

 発熱やせきなどコロナ感染の可能性を疑う患者さんを診るのは、多い日で1日に50〜60人です。ただ、ここのところ、発熱、せき、呼吸困難の症状の患者さんが、救急外来の患者さんの半数くらいを占めています。これは今までにない事態です。

 インフルエンザの流行期には発熱の人が救急の半分以上ということは毎年のようにあります。ただ、そうじゃない時期に……これだけ疾患が偏るというのは珍しいかなと思います。例年なら4月はインフルエンザが収束している。この時期に、熱、せき、呼吸困難の症状が半分を占めるのは珍しいです。

 とはいえ、事故などでのケガの患者さんが明らかに減っているので、割合としてそう感じるのかも、という面もあるかと思います。

■脳梗塞や心疾患で運ばれてきたときは、通常と変わらずの対応ですか?

 もちろん通常どおり受け入れて対応します。ただ現在は、例えば心筋梗塞で運ばれてきた人も「コロナに感染している」と想定して、対応しています。患者さんには必ずマスク、対応するスタッフも必ずマスクとゴーグルをつけています。そういう対応を、救急患者さん全てに対して行っています。

■緊急事態宣言下とはいっても、連休で天気がいいと、湘南の海に人出が増えることも予想されます。

 できれば、人出が増えてほしくないとは思います。毎年この時期だと、海辺で遊んでケガをしたりだとか、海洋生物に刺されたりした患者さんがけっこう救急に来るのですが、今年は、まだまったく来ないですね。遊びに出ていないんだなあと感じます。

 このまま遊びに来る人が減ったままで湘南の人出が増えないとありがたいですね。

(AERAムック編集部/大田原恵美)