新型コロナウイルスの影響で売り上げが減った飲食店や中小企業への家賃支援策が急務になっている。だが、休業中の家賃の支払いを巡って、コロナが家賃減額を求める根拠になるかどうか専門家の間で意見が分かれている。今後、オーナーとテナントの間で交渉が難航したり、紛争が増えたりする恐れがある。



 安倍晋三首相は4月28日の衆院予算委員会で賃料の支払いが難しい中小企業などへの支援について、

「さらなる対策が必要ならば、ちゅうちょなくやるべきことをやる」

 と答弁し、支援を検討する考えを示した。

 飲食店や中小企業にとって賃料の負担は重い。売り上げの増減にかかわらず、毎月一定の支払いを迫られるからだ。減額や支援が得られなければ、廃業や倒産に追い込まれかねないところも少なくない。与野党とも、危機感を強め、対策の検討や提案に乗り出している。

 支援にあたって避けて通れないのが法的な課題だ。不動産関連の法制度に詳しい吉田修平弁護士は、

「今回のようなケースは、そもそも法的に想定されていなかった」

 と指摘する。

 吉田氏によれば、4月に施行されたばかりの改正民法では、建物の一部が壊れるなどして使えなくなった場合、借り手に責任がないようなら賃料を減らしてもらえるルールがある。現在有効な契約は改正前に結ばれたものが多いが、民法にはもともと、借り手と貸し手のどちらにも責任がない不可抗力の理由で契約を実現できない場合、賃料を払わなくてもよい定めがある。

 ただし、コロナがこうしたケースに当てはまるかは個別の判断が必要だという。

「自主的に営業を自粛する場合は不可抗力とは言えない可能性があります。自治体などから休業を名指しで求められたり、テナントが入居する建物が全館閉鎖したりするなど、もっと強い理由なら、類推的に減額が認められることも考えられます。個別の交渉や協議で左右される部分も大きく、もめるケースが増えるかもしれません」(吉田弁護士)

 法的な課題は支援策にも影を落とす。オーナー側の賃料収入を肩代わりする野党案の場合、家賃を滞納したテナントが何もしなければ「不払い」の扱いになり、たとえオーナーが政府の支援を受けても、賃貸契約は打ち切られてしまう懸念は残る。コロナが家賃減額の根拠になるかどうかがあいまいなままでは、オーナーとテナントの契約関係も明確にしにくく、解除を言い渡されるリスクはより高くなる。

 一方で、テナントへの直接的な融資や給付金などを通じて支援する与党案も、法的な課題は少ないかもしれないが、もらったお金が家賃に回されるとは限らないなどの心配がある。

 危機的状況にある経営者を救う対策はスピード勝負だ。しかし、コロナの法的な位置づけといった支援の前提となる判断こそ、素早さが求められるのではないか。(本誌・池田正史)

※週刊朝日  オンライン限定記事