本誌では4月に続き、すべての都道府県で緊急事態宣言が解除された(5月25日)後の6月上旬、全国の医師に緊急アンケート第2弾を実施。医師専用のコミュニティーサイトを運営するメドピア社の協力を得て、3日間で約1500人から回答を得た。前回と同様、回答した医師のほとんどは感染症の専門家ではなく、さまざまな回答が寄せられた。



 まずは、緊急事態宣言の解除時期について。最後に宣言が解除された1都3県と北海道では、北海道や神奈川で解除の目安となる基準を一部、満たしていなかったが、「総合的判断」(専門家会議座長の脇田隆字国立感染症研究所長)で解除となった。

 そのためか、北海道と1都3県での解除のタイミングは、その他の(それぞれの医師が住む)地域に比べて、「早い」とする回答が多かった。理由は、「解除すると勘違いする人間が多い。慎重にしてほしかった」(神奈川・50代・一般内科)、「もう少し感染者の動向を見てから決めるべきだ。現に新たな流行がさっそく見られている」(石川・30代・内分泌科)など。

 他方、「新型コロナが恐ろしい感染症であるとは思えないので、国は宣言など出すべきではなかった」(千葉・50代・消化器内科)という回答もあった。

 医療現場の状況は、逼迫(ひっぱく)していた4〜5月よりも「少し余裕が出てきた」という回答が多く、全体の半数ほど。新型コロナが流行する前の状態に近いとする回答も2割あった。

 入手が困難だったマスクや手指消毒用のアルコールに関しては、まだ半数近くが「足りていない」と回答。入手も困難だという。

 アルコールでは、こんな“事件”もあった。

 厚生労働省は3月、新型コロナ対策として、医療機関に手指消毒用エタノールの優先供給を実施した。ところが、「濃度が低い」「値段が高い」といった問題が発生した。そのいきさつを、埼玉県川越市の住宅街でクリニックを開業する、ゆきさだクリニックの行定英明院長(50代)が話す。

「“時価”で優先的に配りますと言われて申し込んだところ、値段が相場の5倍もする。キャンセルをしようとしても、それはできない、と言われました。そもそも時価って、銀座のすし屋じゃあるまいし」

 同様のクレームは「政府が斡旋(あっせん)したアルコールは、1リットル4500円と超々高額。普通は500ミリリットルで286円。こんな政府で大丈夫なのか」(京都・50代・一般内科)と、回答にも寄せられていた。

 行定院長は最終的に発注をキャンセルできたというが、アベノマスクといい、今回の国の対応には首をかしげるばかりだ。

 政府の対応の遅さや、議事録が作成されていなかった件などを指摘する声が目立った一方で、「よくやっている」という回答もあった。

■薬は効果不明 早期で可能性も

 実際に感染者を診察したことがあると答えた医師は2割。前回のアンケートの倍近くになった。

 そうなると聞きたいのが効果についてだ。現時点では新型コロナ治療薬は開発されていないが、抗エボラウイルス薬として作られたレムデシビルが、国内初の新型コロナ薬として承認された。抗インフルエンザウイルス薬のアビガン、吸入ステロイド薬のオルベスコなども、臨床研究・試験中だ。

 感染者を診たと答えた医師のうち、レムデシビルを使ったことがあったのは6%、アビガンは31%。使用していないが61%だった。使わなかった理由には、「専門病院に転院」「専門医が代わって診察」「軽症」などが挙がっていた。

 効果については、「ある」「ない」「分からない」で、意見が割れていたが、アビガンでは「軽症からの悪化は防いでくれる」という回答もあった。

 新型コロナ感染者を受け入れていた獨協医科大学病院(栃木県壬生町)の呼吸器・アレルギー内科の武政聡浩准教授は、アビガンの使用経験がある。感触は、「早期に使うほど効果が上がる印象だった」という。

「アビガンは中国で軽症例によかったというデータも出ています。もっと初期感染のときにアビガンを使えるようだったら、有用性が出たと思います」

■PCRは医師の判断ですべき

 専門家会議に対する意見で多く挙がっていたのが、PCR検査体制への不満だ。そこで、検査体制についても単独で調査した。

 今でこそ医師会などの協力のもとで、地域にPCRが受けられる発熱外来や検査センターなどができつつあり、医師が必要と判断した感染疑いの人は、以前より簡単に検査を受けられるようになった。厚労省によると、6月17日現在、検査センターは全国に203カ所あり、そのほか独自で行っている医療機関がある。だが、今もこうした体制が整っていない地域もあり、「いまだに保健所でブロックされている」(東京・40代・一般内科)という回答もあった。

 前出の武政准教授も、PCRに対しては疑問を感じている一人だ。

「個人的には、韓国のようにドライブスルーを利用してやったほうがよい。それができない日本の情けなさ。保健所の問題というよりも、PCRが制限されていたのを政府が解決しなかったことのほうが問題です」

 ただ、PCRの実施については、「増やすべき」「増やさなくていい」と正反対の意見がある。

 前者では「医師が疑わしいと思う症例、クラスター疑い症例は全例行うべき」(大阪・50代・呼吸器内科)、「医療機関が疑わしいと考えた症例にはきちんとPCRを施行できるようにしてほしい」(宮城・30代・消化器内科)など。

 もちろん、PCRも万全ではない。実際、「陰性というので診ていたら、何回もしてから陽性になったものが多い」(神奈川・60代・アレルギー科)ということも。それでも「性能の限界はあるが、検査数は増やすべきだった」(北海道・40代・小児科)という。

 後者では、「PCRをむやみに増やすべきではない」(東京・60代・一般内科)、「PCRや抗体検査をすればよいというものではない。受け皿を考えて検査しないと、さらなる混乱を招くだけ」(千葉・40代・総合診療科)などがあった。(本誌・山内リカ、秦正理)

※週刊朝日  2020年7月3日号