特別定額給付金の支給がすべての自治体で始まった。もちろん自身の生活を立て直すことが第一。それが整ったら、意思を持って使いたい。使い方次第で自分が好きなものを応援し、社会に還元することができる。AERA 2020年6月29日号に掲載された記事を紹介する。



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 栃木県在住の会社員女性(49)は先日、家族と相談し、特別定額給付金を旅行に使った。行き先は栃木県内の、普段なら躊躇するような金額の高級温泉旅館だ。

「越県」を避けるために栃木県在住者のみを受け入れており、部屋の稼働を半分にするなど、新型コロナ感染拡大対策をしっかりとっていると感じられるところを選んだ。

 滞在中は一歩も外に出ず、旅館で地元のこだわり食材を楽しんだ。スタッフからは「コロナで不安ななか、この宿を選んで来てくださってありがとうございます」と声を掛けられた。

「不安な状況下でもお金を回したいと思い、貯金という考えはありませんでした」(女性)

 国民1人あたり一律10万円が配られる特別定額給付金。総務省は16日までに全1741市区町村で給付が始まったと発表し、その使い道に思いを巡らす人は多い。アエラが6月13〜16日にかけてインターネットで行ったアンケートでは、9割以上の人が使い道を「決めている」「だいたい決めている」と回答した。

 消費経済ジャーナリストの松崎のり子さんはこう話す。

「給付金は、コロナ禍で苦労している国民みんなの役に立つことに使い、広く経済を回すことが望ましい。ただし、そのためにはベースとなる自分の生活がしっかり整っていることが大前提です」

「毎月勤労統計調査」によれば、4月の残業代や休日手当は前年同月比12%減。夏・冬のボーナスが減額される可能性も高い。家庭の収支がどうなっているか現状を確認することが第1ステップだ。

 家賃や税金など、必要な支払いがある人は、まずはそこに回す必要がある。自営業や個人事業主の人のなかには、収入の減少や失業で、国民年金保険料を納めることが困難な人もいるだろう。保険料の免除制度はあるものの、免除された期間分、年金を受け取る際に減額されてしまう。10万円を保険料にすれば、将来への影響を小さくすることができる。

 それらをクリアした第2ステップが、社会への還元だ。新型コロナによる収入減や今後の生活に対する不安が少ない人は、消費や寄付に回すことで、社会に貢献できる。

 松崎さんが還元先候補の一つとして挙げるのが、ふるさと納税だ。

 緊急事態宣言が出された時、財源不足で独自の休業補償などを出せない自治体は少なくなかった。第2波に備えて今後も自治体にかかる負担は大きく、インバウンドで潤っていた観光地の打撃も計り知れない。

「だからこそ、国からもらったお金で困っている自治体を応援することは、意義ある使い方だと思います」(松崎さん)

 ふるさと納税で控除される金額は収入や家族構成などで変わってくる。給与収入400万円で共働きや独身なら4万2千円、600万円なら7万7千円程度が上限、といった具合だ。これを超えると控除はされないが、行きたかった旅行先やゆかりのある自治体などに、純粋な寄付という気持ちでプラスアルファで申し込んでみるのもいいだろう。

 コロナ禍で苦境に陥った生産者や販売者、飲食店やホテルなどを支援するサイトや、公演中止に追い込まれた劇団やミュージシャンを応援するクラウドファンディングも多数立ち上がっている。こうしたサイトを利用する手もある。松崎さん自身は、チケットを購入したが中止になったクラシックの演奏会の払い戻しをせず、そのまま寄付する予定だという。

「公益財団法人の形態を取るオーケストラなどは、利益を出せない構造なので有事に備えた積み立てをすることができません。『密』を回避するためには今後も客を減らさざるを得ず、収益が下がるでしょうし、国に代わってお金を落とそうと思います」(同)

 家計簿&家計管理アドバイザーのあきさん(42)は、今年14歳、10歳、6歳になる子どもと夫の5人暮らし。総額50万円が入ってくることになる。

「大学生以上なら子どものお金は子どものものとすべきかもしれませんが、我が家はまだ小さいので、世帯単位で使う予定です」

(ライター・羽根田真智)

※AERA 2020年6月29日号より抜粋