シニアにとっては歩幅が狭くなると認知機能の低下リスクが高くなる。歩幅が「広い」「普通」「狭い」の3分類のうち、広い人に対して普通の人は1.22倍、狭い人は3.39倍もリスクが高いという調査研究がある。



 この調査研究は国立環境研究所の谷口優主任研究員が2012年に発表したもので、群馬県と新潟県のある地域に住む70歳以上の1149人のうち4年追跡できた666人を対象にした。

 歩幅が男性70.6センチ以上、女性65.1センチ以上を広い、男性61.9センチ以下、女性58.2センチ以下を狭いとし、その間をそれぞれ普通とした。広い、普通、狭いでほぼ3分の1ずつの分布になる。満点が30点の認知機能検査のMMSE(認知症スクリーニング検査)で得点が3点以上低くなった人を認知機能が低下したと判断した。

 谷口さんは次のように説明する。

「認知機能が下がってから歩幅が狭くなるのではありません。脳のなかの微小な変化が足に表れてきます。脳の微小な変化を一番早く検出できるのが歩幅なのです」

 人が一定の速さで足を継続的に動かすのは難しいという。例えば脳の血流が落ちると、歩行が遅くなり、歩幅が狭くなってくる。

 認知機能の低下を示唆してくれるのが歩幅であれば、普段の歩行で歩幅が狭くならないように気をつけるといい。例えば、横断歩道の白線の幅は45センチとされるので、これを踏まないように歩くと、足の大きさを含めて歩幅がほぼ65センチぐらいになるとされる。歩行の際には歩幅のコントロールが簡単な認知機能低下の予防策となる。
 
一方、歩幅をコントロールすることで認知機能を向上させることについて、谷口さんは「難しいと思う」という。運動は選択肢の一つだが、認知症が進行してしまった人は認知機能が下がり続け、効果が期待しにくい。運動と栄養摂取などを併用する必要があると指摘する。

 右利きの人が左手で文字を書くなど、日ごろやらないことをしてみると脳にいい効果があるとされる。脳が普段と違う回路を使い、活性化されるからだ。“逆”や“違うこと”がいいようだ。(本誌・浅井秀樹)

※週刊朝日  2020年7月3日号