カマンベールチーズが、アルツハイマー型認知症の予防につながるかもしれないと期待を集めている。

 認知機能が低下すると、脳の栄養分とも呼ばれるBDNF(脳由来神経栄養因子)というたんぱく質の血中濃度が減る。ところが、桜美林大学と東京都健康長寿医療センター、明治の共同研究グループの発表によると、カマンベールチーズを食べることでBDNFの値が上昇した。

 試験は70歳以上の軽度認知障害の女性71人を二つのグループに分けて行われ、片方にカマンベールチーズ、もう片方にプロセスチーズを1日2ピース、それぞれ3カ月食べてもらった。次に食べない期間を3カ月おき、グループを入れ替えて同様の試験をした。

 その結果、カマンベールチーズ摂取時にはBDNFの値が6・18%増加し、プロセスチーズでは2・66%減少したという。

 桜美林大学老年学総合研究所の鈴木隆雄所長は、BDNFについてこう説明する。

「脳神経細胞の成長や維持を促すたんぱく質で、記憶をつかさどる海馬という領域に多く含まれています。BDNFが減ると、海馬の神経細胞がダメージを受けます。BDNFは加齢とともに低下していくものですが、大幅に下がる病気の一つにアルツハイマー病があります」

 BDNFを維持するには運動が有効とされているが、高齢になると運動が困難になることもある。そこで、普段の食事で摂取できるカマンベールチーズに目を向けたという。

「実験で使用したカマンベールチーズとプロセスチーズは、塩分やエネルギーなどはほぼ同じ。ただ違うのは、白カビがあるかないかだけです」(鈴木氏)

 カマンベールチーズが表面の白カビによって熟成する過程で生じるオレイン酸とアンモニアが反応し、オレアミドやデヒドロエルゴステロールといった物質が作られる。このオレアミドについて、東京都健康長寿医療センター研究所の金憲経研究部長は言う。

「カマンベールチーズは、オレアミドが0.56マイクログラム。白カビのないチーズは0.05マイクログラム。白カビのあるカマンベールチーズのほうが10倍以上も高い。オレアミドは、中枢神経系の免疫担当であるミクログリアの過剰な炎症を抑制する作用があるとされています」

 ただ、現段階では認知機能低下の予防に効果があるとまでは言い切れないという。

「カマンベールチーズを食べることでBDNFの値が改善されることには意義がありますが、認知症や認知機能の改善につながる可能性が示唆されるという段階にとどまります」(金氏)

 さらなる検証を待ちたい。(本誌・岩下明日香)

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