みのもんた(76)が今年3月末に12年半続いた「秘密のケンミンSHOW」(読売テレビ系)の司会を降板を発表し、レギュラー番組がゼロになることから事実上の「引退」と報じられた。その真相はパーキンソン病によることが文春オンラインの取材で明らかになった。



 みのもんたいわく、番組でアップになったときに「目がうつろになっている」ことからパーキンソン病の診断につながったという。みのもんたと同じくパーキンソン病であると報じられているマイケル・J・フォックスも17日に「引退」をほのめかす自叙伝を発表したばかり。パーキンソン病とはいったいどんな病気なのか――。原因や症状について、週刊朝日ムック『新「名医」の最新治療2020』では、専門医に取材した。

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 厚生労働省が指定する難病の一つであるパーキンソン病。人口千人あたり1〜1.5人、60歳以上では100人に1人、80歳以上では100人に3人の有症率で、高齢者に多い神経疾患だ。頻度は低いが、40歳以下で発症することもあり、若年性パーキンソン病と呼ばれる。若年で発症する場合は、遺伝との関連が深いと考えられている。

 パーキンソン病は進行性の病気で、症状が進むと、歩けなくなったり、認知機能の低下がみられたりすることがある。「寝たきりになるのか」「一生症状に悩まされ続けるのか」など、診断されたときのショックは大きい。

 しかし多くの場合、進行はゆるやかであり、さらに適切な治療をすれば症状の進行を遅らせることができる。薬物療法やリハビリにより進行を遅らせることが可能なため、早期から治療することが大切だ。症状をコントロールできれば、長期にわたって通常の日常生活が送れ、仕事を続けることもできる。

 パーキンソン病は、神経伝達物質の一つであるドパミンが不足することで起きる病気だ。ドパミンは、大脳の下の中脳にある「黒質」と呼ばれる組織でつくられる。黒質はメラニン色素が集まるために黒く見えるが、パーキンソン病患者の中脳を顕微鏡で見ると、黒質の色が薄くなっている。ドパミンは運動機能に関わるため、減少すると、からだが動きにくくなるなど、さまざまな運動症状が出る。

 パーキンソン病の人が最初に気づきやすく、受診のきっかけとなりやすい症状が、手、足、あごなどのふるえ(静止時振戦)だ。じっとしているときに症状が出て、動くとおさまりやすい。「右手だけ」「右足だけ」など片側から始まり、やがて対側に広がっていく。

■急激な症状は出ず、受診が遅れることも

 そのほかの運動症状には、動きだすまでに時間がかかったり、歩く速度が遅くなったりする「運動緩慢」、筋肉が緊張しつづける「筋強剛」、姿勢を保ちにくく、転倒しやすくなる「姿勢保持障害」がある。姿勢保持障害は、病気が進行してから出現することが多い。関東中央病院脳神経内科の織茂智之医師はこう話す。

「パーキンソン病は、脳卒中などのように急激な症状が出るわけではありません。ふるえがない場合、『なんとなく右手が動かしにくい』『なんとなく動作が遅くなった』『パソコンのキーボードが打ちにくい気がする』といった程度の症状なので、脳神経内科への受診が遅れることがあります。特に若年性の場合は肩などの痛みから発生しやすく、整形外科を受診したり、マッサージや鍼灸などの施術を受けたりして、パーキンソン病と診断されるまでに時間がかかる傾向があります」

 さらに、パーキンソン病の運動症状は、薬の副作用のほか、正常圧水頭症、変性疾患などほかの病気でも起きる。また、脳に形態学的な異常が起きるわけではないので、診断が難しい。パーキンソン病というと運動症状が主と考えられてきたが、非運動症状が注目されている。

 重度の便秘や嗅覚の低下、うつ、眠っている間に大声を出したり暴れたりする「レム睡眠行動障害」などが高頻度の非運動症状だ。運動症状に加えてこうした非運動症状があると、パーキンソン病の可能性が高くなる。順天堂大学順天堂医院脳神経内科の大山彦光医師はこう話す。

「最近は、はじめに非運動症状が出現し、経過とともに運動症状が出現するのではないかと考えられています。国際的な学会の現在の診断基準では、運動症状に加えて、嗅覚の異常など非運動症状があるかどうかが、パーキンソン病か、それ以外の病気かを判断する目安になっています」

■20年後に約8割が認知症を発症する

 パーキンソン病の人を20年間追跡した海外の調査では、発症から20年後に約8割が認知症を発症していた。

 パーキンソン病の症状は、認知症の一つであるレビー小体型認知症でも出現する。両者の関係は深く、どちらも「レビー小体病」と位置づけられている。

 パーキンソン病の人のドパミンが不足するのは、神経細胞の中に「αシヌクレイン」というタンパク質が蓄積する過程で神経細胞が死んでしまうことが原因と考えられる。生き残った神経細胞には「αシヌクレイン」の塊の「レビー小体」が認められる。パーキンソン病の人はレビー小体が中脳に出現するが、進行すると、判断や記憶、知覚や思考に関わる大脳皮質にまで広がり、認知症を伴うようになる。

 一方、レビー小体型認知症の人は、レビー小体が最初から大脳皮質にまで広がっている。つまり進行したパーキンソン病とレビー小体型認知症の病態は、ほぼ同じだと考えられている。

「パーキンソン病を発症して1年以内に認知機能の低下がみられたらレビー小体型認知症、それ以降であれば認知症を伴うパーキンソン病と判断するのが一般的です」(織茂医師)

 認知症を伴うパーキンソン病とレビー小体型認知症の治療は、基本的には同じだ。パーキンソン症状を治療しつつ、認知症の治療薬も使用する。

「からだをうまく動かせないと、転倒して寝たきりになり認知症を進行させることになります。このため、運動症状を治療しながら、認知機能も低下させないことが重要です。ただし、パーキンソン病の治療薬の中には、認知機能の低下を引き起こす薬もあるので、より注意して薬を選択することが必要です」(同)

 なぜレビー小体がたまるのか、その原因は明らかになっていない。レビー小体をためないようにすることが、パーキンソン病やレビー小体型認知症の根本的な治療につながると考えられていて、現在研究が進められている。

(文・中寺暁子)

≪取材協力≫
関東中央病院 脳神経内科統括部長 織茂智之医師
順天堂大学順天堂医院 脳神経内科准教授 大山彦光医師

※週刊朝日ムック『新「名医」の最新治療2020』より