すでに世界で3千万人超に行われたワクチン接種。副反応の発生頻度やその対処法がわかってきた。AERA 2021年1月25日号から。

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 菅義偉首相は1月4日、2月下旬までにワクチン接種を開始すべく準備していると述べた。

 政府は3種類のワクチンを輸入する計画だ。まず入ってくるのが米ファイザー社と独ビオンテック社が開発したワクチン。昨年12月中旬にファイザー社が厚生労働省に承認申請をした時点では、国内の治験データがまとまるのが2月の予定で、接種開始は早くても3月とみられていた。だが、4日の会見で、首相はファイザー社に今月中に治験データをまとめてほしいと強く要望したと説明した。

 その他に輸入するのは米モデルナ社と米国立保健研究所が開発したワクチンと、英アストラゼネカ社と英オックスフォード大が開発したワクチンで、3種類とも数週間の間をあけて2回の接種が必要とされている。ファイザー社以外は承認に必要な国内の治験がまだ終わっていない。

 接種はまず医療従事者や保健所の職員ら患者と接する可能性の高い人、高齢者など重症化リスクの高い人を優先して行われる。どのワクチンの治験も現時点では小児のデータが限られるため、当面は16歳以上が対象となる見通しだ。

 ファイザー社のワクチン接種を2月下旬に始められたとしても、国際的にみれば遅い開始になる。世界保健機関(WHO)によると、1月8日現在、すでに42カ国が接種を始めた。

 オックスフォード大の研究者らによる「Our World in Data」によると、1月13日現在、世界ではすでに3257万人が接種を受けた。最も多いのは米国で1028万人。次いで中国の1千万人、英国の307万人、イスラエルの205万人、アラブ首長国連邦の139万人、イタリアの89万人、ロシアの80万人と続く。

 ファイザー社のワクチンは欧米やシンガポールなどで緊急使用の承認を受け、接種が進む。WHOが昨年末に緊急使用を認めたため、途上国でも接種が広がると予想される。モデルナ社のワクチンは米国や欧州、イスラエルなどで承認され、一部の国で接種が始まった。アストラゼネカ社のものも昨年末から英国やインド、メキシコなどで承認され、接種が始まりつつある。

 これら以外に中国のシノバック社とシノファーム社がそれぞれ開発したワクチン、ロシアのガマレヤ研究所と国防省の開発したワクチンの接種も行われている。中国もロシアも、治験終了前に医療従事者らへの接種を始めた。米国に次いで2番目に感染者の多いインドも今月、自国企業バーラト・バイオテック社の開発したワクチンを、治験の結果を待たず承認した。

 日本が輸入するうち2種類は、「RNAワクチン」で、新型コロナウイルスの遺伝情報の一部と同じ遺伝情報を持つRNAでできている。もう1種類は、無毒化したアデノウイルスに、新型コロナの遺伝情報の一部と同じ遺伝情報を持つDNAを組み込んだものだ。

 ワクチンの効果は、企業によると、ファイザー社とモデルナ社のものはどちらも約95%、アストラゼネカ社のものは接種量によって62〜90%で平均すると約70%だったという。

 RNAワクチンはこれまで接種されたことがない。アデノウイルスを使ったワクチンもほとんど使われたことがない。このため、懸念されるのは副反応だ。

 ファイザー社やモデルナ社のワクチンの接種が始まった英米では、接種直後に、生命に関わることもあるアレルギー反応「アナフィラキシーショック」を起こした人が報告された。

 米疾病対策センター(CDC)によると、1月6日現在、米国内でワクチンを打った29人が、ショックを起こした。100万人当たり約11人の頻度で、インフルエンザの不活化ワクチンの発生頻度より10倍近く高いという。ただし、CDCのワクチン責任者は6日の会見で、「頻度が相対的に高くても、(絶対数でみれば)非常にまれな出来事。想定の範囲内の副反応で、対処法もある。ワクチン接種のメリットの方が大きい」と強調した。

米国では、ワクチン接種後15分程度はその場で体調に変化が起きないか様子をみることになっている。ショックのほとんどは接種後15分以内に起きているので、起きても発作を抑える薬を打つなど対応できるという。

 東京大学医科学研究所の石井健教授はこう説明する。

「新型コロナウイルスのワクチンは、打った部分が腫れる、接種後に発熱するといった副反応もインフルエンザワクチンよりも強く出る。体の免疫がより強く反応しているからで、ワクチンの効果がより高い証しでもある」

 石井教授は、アナフィラキシーショックを起こした経験のないアトピーなどのアレルギー患者は、接種後30分ほど観察が必要になるが、ワクチンの接種は可能だという。

「今後、接種を受ける人数が増えれば想定外の副反応が起きるかもしれないので、接種は慎重に進める必要があるものの、ワクチンを必要以上に怖がるべきではない。新型コロナウイルス感染症はインフルエンザよりも致死率の高いことや、自分の重症化リスクを踏まえ、接種のリスクとベネフィットを冷静に判断して決めてほしい」

(科学ジャーナリスト・大岩ゆり)

※AERA 2021年1月25日号より抜粋