「漫画実写化」映画の成功と失敗を分けるもの

「漫画実写化」映画の成功と失敗を分けるもの

「漫画実写化」映画の量産が続く。その質は玉石混交。ファンが納得するかどうかの境目はどこにあるのか。

 日本映画ですっかり「主流」となった漫画原作の実写映画。昭和の日常生活をVFX(視覚効果)で再現した2005年の「ALWAYS 三丁目の夕日」や、実写化不可能とされたSF大作を三部作で映像化した08年の「20世紀少年」など、映像技術の進化にともない「こんな漫画まで?」と思える作品まで、続々と実写化されている。

 今年は、連載30周年を迎えた人気漫画『ジョジョの奇妙な冒険』もついに実写映画化され、公開を控えている。

 とはいえ、名作とされる原作のレベルには遠く及ばない「迷作」が数多く生み出されてきたこともまた事実。成否を分ける分水嶺はどこにあるのか。

『Bバージン』などのヒット作を持つ漫画家の山田玲司さんは、出演したインターネット番組で、漫画の実写化が失敗する要因をいくつか挙げている。

 例えば「俺病」。原作があるにもかかわらず、映画監督が自分の自意識を前面に出してしまうことを指している。

「手塚治虫先生の漫画の映像化では、監督に『俺病』が発症して、原作の良さを殺して駄作になってしまったものが結構多いです」(山田さん)

 また、「たのきん映画への甘え」という要素も指摘する。これはかつてのアイドル「たのきんトリオ」の全盛期に端を発した「人気アイドル主演+漫画原作=両方のファンが来てヒット」という成功モデルのことだ。

 製作委員会方式が当たり前になり、出資に見合ったリターンが厳しく求められる現在の邦画ビジネスでは、一定の集客が見込める人気俳優やアイドルを主演に据えることが「必須」となっている。そこにピッタリはまったのが、大はやりの少女漫画原作映画だ。

●「すべて」より「一点突破」

 原作者が長い年月をかけて築き上げてきた信用と読者との信頼関係を映画産業が「利用する」のが漫画実写化の本質だ、と山田さんは言う。

「僕ら漫画家からすれば、漫画の宣伝の機会として割り切る以外は気持ちの置きどころがない。若い作家さんは特に、映画化をきっかけにもっと幅広く知ってもらえるのではないかと、任せてしまうこともあると思う」

 では逆に、「成功する実写化」とはどんなものなのか。山田さんが挙げたのは、ハリウッドがアメコミを実写化した「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」と「アイアンマン」だ。

「原作のよかった部分を制作者が理解して、そこに今のアイデアをうまく付け加えている。それでいて、『俺の映画にしてやろう』という意識があまり見えない。とはいえ、失敗作との差は紙一重です。センスの違いなのかもしれません」

 映画評論家の前田有一さんは、日本における漫画実写化映画の成功には、

「邦画の予算規模を考えて、適した規模感の漫画原作であることが第一です」

 と語る。邦画の予算はいまも、ハリウッドに遠く及ばない。映像技術が進んだとはいえ、SFやファンタジーはスケール感で見劣りしてしまう。

 前田さんが成功例として挙げたのは、ともに12年公開の「テルマエ・ロマエ」と「るろうに剣心」。現代劇ではないが、原作の要素をすべて取り込もうとせず「一点突破」にかけたことで、興行収入的にも、ファンの評価でも上々の結果となった。

 幕末から維新後の剣士の戦いを描いた「るろうに〜」は、香港映画界で活躍するアクション監督の谷垣健治氏が殺陣を監修し、従来の日本映画とは一味違うアクションシーンを生み出したことで評価を高めた、と前田さん。古代ローマ人が現代日本にタイムスリップして風呂文化に触れる「テルマエ〜」は、主演した阿部寛の好演もあり「笑い」の演出が効果的だった。

●忠実すぎても気になる

 失敗するケースにありがちなのは、原作のキャラクターを変えてしまうこと。漫画の魅力は登場するキャラクターに多くを負っている。ストーリーに少々手を加えても、キャラクターの良さが残せれば成功への道が見える。キャラクターを魅力的に見せるコツは「序盤の笑い」だと前田さん。

「笑いは観客とキャラクターの距離を縮めてくれる。笑いを起こすことで、観客は感情移入しやすくなるのです」

 近年は、過去の失敗を踏まえ、大きく外す漫画実写化映画は減ってきたと前田さんは言う。事前にファンへのリサーチを重ね、原作ファンが譲れないポイントをつかんで映画化するようになってきているからだ。プロデューサー主導の映画作りが主流になり、監督が「俺病」を暴走させることもかなり減った。だが、前田さんはこうも言う。

「たまには、そんな仕組みをぶち壊す作品も見てみたい」

 前出の山田さんも、

「近年は原作をしっかりリスペクトした映像作品も増えてきた」

 と感じる一方で、こうも言う。

「原作に忠実すぎると、逆に原作との違いが気になってくる。そういう作品に何の意味があるのかな、とも思うんですよね」

(編集部・福井洋平)

※AERA 2017年8月7日号

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