東京、名古屋、大阪 大地震「危ない街」全国ランキング

東京、名古屋、大阪 大地震「危ない街」全国ランキング

 近い将来に発生が懸念される南海トラフ、首都直下地震。編集部では、政府統計や、研究機関などが公表しているデータから、各自治体の地震の危険度を調査した。あなたの住んでいる街は安全だろうか。



 四つのプレートが摩擦をひき起こし、活断層もひしめく地震列島の日本。巨大地震は津波を引き起こす可能性もあり、被害は甚大になる。歴史上、幾度となく起きている南海トラフ、首都直下がいま、迫っている。

 東京都中央区にある晴海埠頭。現在、東京五輪に向け、選手村の工事が着々と進んでいる。ここには地上50階、高さ170メートルを超える2棟の超高層マンションの建設も予定されている。晴海、勝どき、月島、豊洲といった湾岸エリアは人気があり、再開発でタワーマンションが次々と建てられている。

 しかし、今や首都直下や南海トラフといった大地震のリスクを考えると、地盤が弱いとされている湾岸周辺の高層マンションはちょっと心配ではないだろうか。

 隅田川を望むマンションの30階に3年前に引っ越し、夫と2人の子どもの4人で住んでいるという女性(36)は、地震への不安はあるが、「これまでに震度4以上は経験したことがなく、大地震について深く考えたことはなかった」という。最新設備を誇るタワーマンションなら大きな被害を受けることはない、と漠然とした安心感を持つ人は多い。

 しかし、名古屋大学減災連携研究センターの福和伸夫教授はこう釘を刺す。

「超高層ビルは安全とは言い切れない」

 たしかに超高層ビルは最新の技術が使われ、地震に強いと言われてきた。建物が地震の揺れと一緒に柔らかく揺れ、地震の揺れを減少させるからだ。福和教授が指摘する。

「今のビルは建築基準法の耐震基準ぎりぎりで造られているものが多い。となると、想定以上の地震の揺れが来たときに建物が耐えられず、損壊する可能性もある。実験で超高層ビルを模した建物を激しく揺さぶったところ、一見無傷。しかし、柱と梁の間で破断している箇所が見つかった。絶対に安全というわけではない」

 首都直下の地震が起こったらどうなるのか。内閣府がこんなシミュレーションを出している。

 木造住宅が密集する地域を震度7の地震が襲い、2階建ての家屋の多くが1階を押しつぶす形で倒壊。都内の埋め立てによって造られた湾岸地域では、超高層の建物が激しく揺さぶられ、住居であれば室内の家具が大きく移動する。

 ビルのガラスが割れ、破片が地上に降り注ぐ。道路は破壊され、自動車事故や鉄道の脱線、山間部では土砂崩れが発生し、多くの住宅が押し流され……。

 建物の全壊・焼失は61万棟、死者は2万3千人に上り、経済被害は95兆3千億円と試算されている。これが南海トラフにいたっては、死者23万1千人、建物の全壊・焼失は209万4千棟、経済被害は171兆6千億円と想像を絶する被害になる。こうした大地震が、30年以内に70〜80%の確率で起きるというのだ。

 本誌編集部は、国立研究開発法人「防災科学技術研究所」(茨城県つくば市)が公開している最新データから、今後30年以内に震度6以上の地震が起きる確率を調べ、まとめた。

 3大都市(東京、名古屋、大阪)で今後30年以内に震度6以上の地震が起きる確率が60%以上の地区についてまとめたものだ。東京では11区があてはまり、トップの江戸川から中央までの7区は、いずれも震度6弱以上の確率が80%を超えている。

 地域的に見ると、海に近く、川の河口付近の区が目立つ。

『資産価値を守る!大災害に強い町、弱い町』(朝日新書)の著者で、不動産などのコンサルティング会社の代表取締役を務める山崎隆さんは、こうした湾岸エリアの地盤についてこう指摘する。

「工場などが立っていたこれらの土地は、ほとんどの場合、低湿地や埋め立て地。泥の表層をコンクリートなどで固めているイメージ。もともと人が住むことを想定した場所ではなかった。直下型の地震など、自然災害には最も弱い地盤です。高層マンションが倒壊するかはわからないが、少なくともゆがんだり、傾いたりはするので、命を失うことはないとしても、住み続けるのは難しくなるのでは」

 東京と同様に、名古屋市、大阪市でも地盤が弱い地域で、大地震のリスクが非常に高くなっている。

 名古屋市では全16区のうち、震度6弱以上となる確率が60%以上の区が8あった。この中には、名古屋駅など中心地がある中村区も含まれている。市の試算では、震度7の地震で死者数は最大6700人。中村区のほか、中川、港、南の計4区に被害が集中し、全死者数の8割以上を占めるとしている。

 大阪市では、鶴見区、都島区などの北東部で震度6弱以上が60%以上の確率になっている。試算では南海トラフでの死者数は12万人に及ぶとされる。

 3大都市以外の全国の自治体で地震のリスクが高い地域を見ていこう。

 東日本の30位以内を見ると、千葉、神奈川両県の自治体が圧倒的に多い。

 目立つのは千葉県だ。県東部、太平洋側にある山武市や多古町などでは震度6強以上の確率が50%近くになっており、6弱では90%を超える。東京湾に面する習志野、市川両市などでも6強が40%近い確率になっている。

 立命館大学環太平洋文明研究センター長で自然災害に詳しい高橋学教授はこの地域についてこう見る。

「最近、東京湾や千葉市辺りを震源とする地震が増えており、リスクは確実に高まっています。昨年、北海道で東日本大震災の余震とみられる震度7の地震が起きましたが、千葉や茨城ではまだその余震とされる大きな地震が起きていない。今後、大きな余震が起きる可能性があることも知っておいてもらいたいです」

 神奈川県では、相模湾に面する茅ケ崎市が震度6強以上となる確率が41.2%と最も高い。横浜市では内陸の港北区や戸塚区などで震度6強が35%、川崎市も内陸の中原区と幸区が6強の確率が33%前後と高くなっている。

 次に西日本のリスクを見ると、東日本よりも圧倒的に数値が高い。

 静岡県の袋井市、浜松市南区、御前崎市、高知県北川村では、震度6強以上の確率が70%を超えた。30位の静岡県吉田町でも61%あり、東日本で1位だった山梨県中央市の52.8%より高い。

 たしかに、南海トラフの位置を考えれば、西日本のほうがリスクが高くなるのは自然だが、高橋教授はこう指摘する。

「今年4月ごろから、和歌山県南部、三重県南部、紀伊水道、徳島県南部、高知県で地震が増えている。南海トラフ地震はほぼ起き始めていると言ってもいい。最悪のケースは、南海トラフと連動して(相模湾から房総半島南東沖にかけての)相模トラフも動く『スーパー南海地震』が起きる可能性もある。そうなると、チリで起きた観測史上最大の地震M9.5に匹敵する地震もあり得ます」

 今回、気象庁の震度データベースを使い、各自治体の過去10年間の地震の回数を調べたところ、茨城県日立市が4510回で全国1位、次いで福島県いわき市が4101回だった。全国平均が323回なので10倍以上揺れていたことになる。東日本大震災の余震や誘発して起きた地震によって回数が増えた。

 地震が多く起きれば、ゆがみが解消され、地震のリスクが減ると見る人もいるが、東北大学災害科学国際研究所の遠田晋次教授はこう指摘する。

「小さい地震が起きれば起きるほど、大きい地震も起きやすくなる。中長期的にみれば、東日本大震災でゆがみが解消された地域はあるかもしれないが、基本的には地震が続くことで、大きな地震が起きる素地ができていると見たほうがいいです」

 対策はどうするべきか。水害については、各自治体で公表している「ハザードマップ」を参照することが有効だ。公表しているリスクの内容は自治体によりけりだが、洪水や土砂災害などで被害を受ける地域を詳細に説明している。

 しかし、課題もある。地域防災に詳しい山梨大の秦康範准教授はこう指摘する。

「ハザードマップがあっても大きな河川のリスクを対象にしており、中小河川は明らかになっていないことが多い。そのため、ハザードマップでリスクがないように見えても、単に調査をしていないだけのことがある。ハザードマップは安全マップではないということを理解しておくことが重要です」

 ハザードマップの整備が進まない背景に政治家やつながりが強い地主層の反発がある、と指摘するのは前滋賀県知事の嘉田由紀子参院議員だ。

 知事を務めた14年に「流域治水推進条例」を定めた。県が農業用水路など中小の河川も含む浸水リスクを調べ、安全度マップをつくり、不動産取引などで活用することを義務付けたものだ。

「保守派の県議や市長らが『なんで地価が下がることをするんや』と猛烈に反発した。旧地主層とのつながりが強いためです。この構図は全国どこにでもあり、高度経済成長以降、災害リスクがあることを十分に知らされずにきた。その結果、危険な土地に住宅が増え、そうした地域で被害が多発しています」

 ならば土地の情報を自分で調べることも重要だ。不動産コンサルタントの長嶋修さんは、国土地理院の「治水地形分類図」を勧める。昔の地形図や航空写真などを見ることができ、自分が住む土地が低地なのか、湿地なのか、旧河川なのか、把握することができる。

「不動産業者が『大丈夫』と言ったとしても、実は昔そこには川があり、地震で建物が傾いたという事例もある。自分で調べることが大事です」

 災害への備えはどうするべきか。防災コンサルタントの三舩康道さんは「基本的なことを実行することが重要だ」と話す。地震に対しては、家具を固定し、動かないようにする。水害には、鉄筋の高い建物などあらかじめ避難する場所を決めておき、行政の避難勧告には従う。2階や3階にゴムボートを用意しておくのもいいという。

「自然災害に想定外はつきものです。災害が起きたときにどうするか、シミュレーションをして準備をしておくこと。それが生死を分けるポイントだと思います」

 災害とどう向き合い、付き合っていくか。この機会に、もしも、を想定した備えをしていただきたい。(本誌・吉崎洋夫、緒方麦)

※週刊朝日  2019年9月13日号より抜粋


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