カンニング竹山「台風前にネット番組の生放送を中止した決断の裏側」

カンニング竹山「台風前にネット番組の生放送を中止した決断の裏側」

 記録的な大雨をもたらした台風19号。全国で70カ所以上の堤防が決壊し、死者・行方不明者は80人を超えている。お笑い芸人のカンニング竹山さんは「報道されていない地域でも水害や断水の被害が出ていることを知ってほしい」と訴える。一方、出演するネット番組を事前に中止したことが、業界内では話題に。「テレビにも計画運休があっていいのでは?」と投げかける。



*  *  *
 台風19号は、思っていた以上に水害で被害が広がりました。12日の夜に直撃して、13日の朝になってから東日本を中心に10カ所以上で川が氾濫していたことがわかりましたよね。マスコミが追いついていなかったということは以前にもありましたが、結局、夜が明けて上空から見てみないとわからないんだと思うと、人間って意外とアナログなんだなとも感じます。

 東日本大震災のときもそうでしたが、これほど広範囲になると被害が大きかった地域や東京から近い場所に報道が偏って、ほかの地域が見落とされがちです。僕は福島県の友人から連絡があって、知り合いの農家が被害を受けていたり、いつも行く中華料理店が水没していたり……。結構大変なことになっているんだと知りました。相馬市の役所の知り合いからも、がけ崩れで水道管が破裂して断水していると聞きました。復旧の見込みが立たない状況らしいんですよね。心配です。

 東京から遠いこともあって、そういう情報はあまりメディアに出ていないと感じます。NHKは災害報道を続けているけど、民放はニュース以外だとワイドショーが扱っているぐらいになっている。でも意外とこの水害のことは、もっと長く報じた方がいいと思うんですよね。

 震災のときも、報道が続いて「もういいよ」って言われることがありましたけど、それでも必要なのかなと思う。なぜなら、復興・復旧を考えるとよりたくさんの人の知恵が必要だからです。例えば、バラエティー番組を中止してでも、細かい水害の情報が伝われば、助けようという人が出てくるかもしれない。僕も今、何ができるか悩んでいるけど、人数がいるほど、脳みその数が多いほど、知恵が出てくると思うんです。一斉に力になるのは地上波だったりするので、これだけ広範囲の災害だからこそ、民放でもガンガン伝えていくことが必要なのかなと思います。

 このコラムも伝えるという手段の一つだと思うので、テレビで映っていない地域にも水害や断水などの被害がいっぱいあると知ってほしいと思います。福島県も宮城県にも、それ以外の地域にも援助を求めているところがいっぱいあります。

 あと、千葉で停電が続いた台風15号もそうでしたが、これからはこの規模の台風が、慣れていない地域にもどんどん来るようになるのかなと思いますよね。南の方の魚が北上してきているように、我々が子どものころに地元の福岡で体験していたことが関東や東北まで上がってきている気がするんです。きっと台風もそう。そうなると防災で想定してきたことも変わってきますよね。

 僕らは学校で避難訓練をするとき、火災の設定だったけど、関東の人に聞くと地震のための訓練だったそうなんです。だから僕らは上京したてのときは地震の知識がゼロで、どうしたらいいのかわからないこともあったんだけど、その逆が起きているような気がする。僕らは台風に慣れちゃっていたけど、全国的に台風を想定して対策しなきゃいけない時期になったように思う。そういう意味でも、知恵を共有することは必要です。

■テレビも計画運休があっていい

 それに伴ってもうひとつ、画期的な変化があったんです。AbemaTVで毎週土曜日の深夜に僕がMCで生放送をしている「土曜 The NIGHT」というネット番組を休みにしたんです。これまでのテレビだったら、生放送でも収録でも、暴風雨の中、全員が出てきて、絶対やらなきゃいけないものだったんですよ。ニュース以外の番組でも、泊まり込みでもやる。それが普通でした。

 でも土曜の夜に関東を直撃するという予報が出ていて、2日ぐらい前に、番組のプロデューサーから「ゲストが来られないかもしれないけど、どうします?」と連絡がありました。僕に気を使ってくれて「竹山さんが生放送をやりたいならやる態勢はあります」と言ってくれたんですが、スタッフの安全も守りたいし、働き方改革という流れもあり、ここであえて止めるという選択をするのも今の時代の新しいメディアの作り方じゃないかという話をされました。僕も今やる必要はないと思ったので「そういう考え方があるなら、同感です」と。「それでもやらなきゃいけないという考えって時代錯誤のような気がするんですよね」という話をして、最終的にはプロデューサーが2日前という早いタイミングで止めるという判断をしました。

 ありがたいことにそこそこ数字を取っている番組なので、おそらく裏側では社内の許可を取ったり、スポンサーさんに伝えたり、代わりの再放送の準備なんかで大変だっただろうと思う。でも英断だったと思います。それをツイッターでつぶやいたら、台風までの2日間で各局のスタッフから「素晴らしい判断だと思います」と褒められました。やっぱりみんなそういう考えを持っているけど、実際はできないんだろうな。でも、本来そうであるべきだと思うんですよね。

 正直に言うと、ネットだからできたという面はあると思う。この番組の生放送に関わるスタッフは10人ちょっとぐらいで、地上波のテレビで土曜の深夜に生放送をやるとなると50人ぐらいになるし、スポンサーや営業、編成の事情もテレビとは違う。AbemaTVの場合は何チャンネルも持っていて、ニュース番組は放送されていますしね。それでも、新しいメディアはこう変わっていくんだという感動はありました。

 もちろん報道はやらなきゃいけない。でも、本当に今やる必要がある番組なのかという判断をして、できるところから変えていっていいんじゃないか。鉄道の計画運休やコンビニとか店が休みますと事前に決めるのと同じで、テレビも「台風だから別の内容を放送します」というのも、僕はアリだと思うんです。結局は責任者が腹をくくるということでしょうけど、既存のメディアもそうなっていくべきなのかな……。テレビが好きだからこそ、そういうところも変わっていってほしいなと思います。


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