放送作家・鈴木おさむさんが、今を生きる同世代の方々におくる連載『1970年代生まれの団ジュニたちへ』。今回のテーマは「プロレス観戦」。



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 大相撲初場所が始まり、残念ながら横綱白鵬は休場してしまったが、今年の正月、白鵬関のおかげでおもしろい経験が出来た。

 僕は毎年、白鵬関とお相撲さんと忘年会をやっています。当然ながらかなりの酒量になるわけですが、今年はその忘年会に人気絶頂・新日本プロレスのオカダ・カズチカ選手が来たのです。

 そこで盛り上がり、白鵬関が1月5日の新日本プロレスの東京ドームを見に行くことになり、「おさむさんも行こうよ」と誘われて、僕も行かせていただくことに。

 僕は小学生の時に長州力選手にハマってからのかなりのプロレス、しかも新日本プロレスのファン。オカダ選手自らチケットを取っていただき、行ったわけです。隣の席に横綱白鵬が座りました。ちなみに白鵬関、体が大きいので二席分を一人で使います。

 一番前のリングサイド席。しかも目の前に実況席。白鵬関が入ってきた瞬間、かなり目立つ。沸いていました。白鵬関はプロレスにそんなに詳しくなかったので、僕が解説していきます。

 メインイベントになり、オカダ・カズチカ選手が入場してきた時から白鵬関の顔つきが変わりました。笑顔から闘う目になったのです。そして言いました。「しなやかな筋肉してるな〜」と。そこから、トップアスリートとして、オカダ選手の体つきと筋肉のバランスなどを話し始めました。そして、試合が始まると、オカダ選手の戦いを解説し始めたのです。というのも、白鵬関、お父さんがモンゴルのレスリングの選手。しかもオリンピックに出たメダリストです。だからレスリングはかなり詳しい。横で現役横綱が解説するプロレスは贅沢です。

 オカダ・カズチカ選手の対戦相手は内藤哲也選手。会場のファンは半々で「オカダコール」と「内藤コール」が入り交じる。当然僕と横綱はオカダコール。僕らの真後ろに内藤ファンが集団でいて、かなりの声で内藤コールをしてました。

 その日、内藤選手は膝を痛めていました。試合中盤、オカダ選手は内藤選手の怪我している足を持ち上げて、膝をマットにドスンと落とす攻撃をしました。会場の内藤ファンが一斉にブーイングです。すると白鵬関は、右手を挙げて大声で「もう一丁!!」と叫んだのです。それが聞こえたのかわかりませんが、オカダ選手、もう一度、内藤選手の膝を攻撃。そして会場大ブーイング。と、白鵬関、再び右手を挙げて「もう一丁いったれー!」と叫びました。

 後ろの内藤ファンの視線は確実に僕らに刺さっています。その声が聞こえたかどうかわかりませんが、オカダ選手、もう一回攻撃しました。後ろの内藤ファンは大ブーイングです。たぶん、僕らにも。あとで聞いた話ですが、内藤ファンが後ろにいたからこそ、横綱も燃えたらしいです。

 結果、最後は内藤選手が勝ち、オカダ選手は負けました。すると、白鵬関、後ろを振り向き内藤選手のファンに「おめでとうございます」と頭を下げていました。横綱はプロレスの見方もプロでした。