新型コロナウイルスの収束が見えないまま、4月に突入しそうな日本。このままでは、例年の5月病よりも重たいメンタル不調に陥る人が増えると予測するのが、自衛隊で長年、メンタル教官として災害派遣など厳しいストレスと向き合う自衛官の心の健康を支え、『自衛隊メンタル教官が教える 心の疲れをとる技術』(朝日新書)の著書もある下園壮太氏。下園さんにコロナ騒動による疲労に対処する方法について話を伺った。短期集中連載(全4回)でお送りする。最終回は「コロナ・ストレスによる疲労解消法」について。

※第3回「自衛隊メンタル教官が勧める、家族のコロナへの不安を軽減する『任務解除ミーティング』とは?」はこちら

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■コロナ・ストレスがコロナうつになりかねない、4つの要因

 戦場は、「漠然とした不安」に満ちています。漠然とした不安の中で、軍隊で一番重視するのが、「疲労のコントロール」です。なぜなら、不安は激しくエネルギーを消耗させる感情で、必ず疲労が溜まっていくからです。

 今回のコロナ・ストレスはうつを悪化させる要因となる、4つの感覚を刺激します。それは、自責感、不安感、無力感、負担感です。

・自分が感染にかかわっているかもしれないという自責感。
・感染したら死ぬかもしれない、という直接の不安や将来への不安感。
・病気に対して何もできない、経済も自分たちではどうしようもないという無力感。
・ずっと不安を持ち続け、警戒し続ける負担感や、環境の変化に対応しなければならない負担感。

 まさしく、「コロナうつ」と言えるような、悪条件が揃っています。中でも、時間とともに拡大するのが負担感です。

 軍隊でも、医療従事者は戦闘や災害派遣といった出来事の直後のストレス反応に注目しますが、本当に継続的に現場の責任を負わなければならない指揮官はむしろ、「兵士の疲労」をケアします。

 というのも、しばらくたって危機が落ち着いたころ、調子を崩す人が増えるからです。

 危機の最中は、危険に対処するためにアドレナリンが出て疲労を感じさせませんし、環境の変化も、当初は緊張感が勝るために、あまり疲労を感じません。

 しかし普段よりも過剰な活動をしている分は、確実に疲労として蓄積されます。これが自覚できない、「ステルス疲労」です。

 戦場でも、警戒レベルが高いときは、兵士はむしろ元気です。問題は、それが低下した時で、これまで溜め込んできた疲労が急に表面化します。

■ステルス疲労を回復させる、一番の方法

 例年、4月の新入学や異動による新しい職場環境の緊張がほぐれた時期にやってくるのが、5月・6月病です。さらに今年は、コロナ・ストレスで、2月から4月の環境変化に対応するための負担が多くなっています。いつもより早く、またいつもより少し重い5月病が自分自身や家族、あるいは職場の仲間に出てくることを想定しておく必要があります。

 子どもなら、不登校、職場なら新人の突然の退職願いなどを想定しておいたほうがいいでしょう。年配の人は、コロナ以外の体調不良に見舞われやすくなります。若い人に較べて、エネルギー量が減っているので、疲労が余計にこたえるからです。

 ストレスは、ストレスの量だけで決まるわけではありません。これまで溜め込んだストレスの量と、ストレスを減らす力などの差し引きで決まります。現在は、蓄積疲労が溜まっているだけでなく、ストレス解消手段が減少しています。ジム通いがストレス解消法だった人にとっては、単に娯楽が少なくなったという以上に、新たなストレスを溜めこんでいるのです。

 また、時差出勤やテレワークで、普段の忙しさに較べたら、休むことができていると思っている人もいるでしょう。「自分は休めている」という印象を持ちがちですが、テレワークという変化に対応するだけでも、大きな負担なのです。「自分は休めている」も、ステルス疲労を溜めている人に多い思い込みなので、注意が必要です。

 では負担感を減らし、ステルス疲労で倒れないために何が一番有効なのでしょうか。実は、一番の対策は「睡眠」です。人間が疲労をとり、エネルギーを回復させる手段は、二つしかありません。「栄養をとること」「休息や睡眠をとること」です。

 現代社会に不足しているのは、栄養よりも休息・睡眠です。コロナ・ストレスに負けて、コロナうつに陥らないためには、いつも以上に睡眠を大切にし、いつもより1時間多く睡眠をとるようにしてみてください。睡眠がしっかり取れていれば、メンタルの不調に陥ることは少ないのです。

 逆に、いつもより明らかに眠れなくなったら、それはメンタル不調のサインです。できるだけ早くメンタルヘルスの専門家に相談してください。