東京医科大学が女子や浪人生を差別していた不正入試問題で、東京地裁判決は、不利益を被った受験生に受験料などを返還するよう大学側に命じた。今回の判決は、入試以外のあらゆる場での女性差別に警鐘を鳴らすものとなりそうだ。AERA 2020年3月23日号では、今回の訴訟の社会的な意義に迫った。



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 東京医大をめぐっては、今回の訴訟とは別に元受験生の女性38人が「性別というコントロールできない属性を理由に不利に扱われた」として、同大に慰謝料などを求める訴訟を東京地裁に起こしている。弁護団事務局長の山崎新弁護士は、今回の判決を追い風と受け止める。

「不正が認められた2次試験の受験生だけでなく、1次試験で不合格となった受験生に対しても違法な差別が行われ、法的保護に値すると認められました。この事実認定は、受験生の精神的苦痛に対する賠償を求めている私たちの主張の補強材料にもなります」

 その上で山崎弁護士は、女性差別防止の観点から判決の意義をこう強調する。

「憲法の法の下の平等に照らして違法判決を導いた点は意義深い。就職や昇進などさまざまな形で残る女性差別に対する社会全体への警鐘にもなります」

 一方、「医師の働き方に対する警鐘にならなければならない」と話すのは労働政策研究・研修機構の内藤忍副主任研究員だ。

 一連の医大の不正入試問題の背景にあるのは、医師の働き方の問題だ。医師の多くが、長時間労働で休みが取れない苛烈な労働環境にあることが、「育児責任を担うことが多い」などとして女性医師の採用を敬遠する誤った風潮につながってきた。そうした労働環境のゆがみが、入り口である医学部入試の時点で女性差別という形で露呈した、と内藤さんはみる。

「医師の働き方は苛烈だから、女性の採用が少ないのは仕方がない、との認識が社会に一定程度あり、それが入り口である大学入試の不正にもつながっていました。しかし今回の判決で、それは違法だということが明示されました。判決を重視し、不正入試の要因に連なる医師の働き方自体を変えなければなりません」

 内藤さんは「苛烈な働き方をしているのは医師に限らない」とし、こう続ける。

「日本の労働者全般の基準が長時間労働で、育児をしない前提の男性労働者像にフィックスされていることがそもそもの問題です。今回の判決を労働者全般の働き方を問うものとして労働界が受け止めることを期待します」

 今回の判決は、企業の採用にも一石を投じる可能性がある。

 16年には女性活躍推進法が施行され、従業員に占める女性の割合や採用の女性比率、男女別の倍率といった項目のうち一つ以上を開示するよう大企業に義務づけた。だが最低限の項目しか公開しないなど、情報の開示に消極的な企業も多いのが実情だ。企業の募集や採用段階での男女差別は男女雇用機会均等法で禁止されているが、大学入試と同様、採用選考でも女性応募者への「減点」が行われているとの指摘は尽きない。

 内藤さんは「採用後の昇進や賃金差別と比べ、採用時の男女差別は立証が困難なため是正されてこなかった。男女別の採用倍率を必ず公表するよう義務付けるなど、採用時の男女差別を是正する施策が必要だ」と訴える。(編集部・渡辺豪)

※AERA 2020年3月23日号より抜粋