漫画家&TVウォッチャーのカトリーヌあやこ氏が、「氷と雪に閉ざされた秘境の地 天空のヒマラヤ部族 決死の密着取材150日間」(テレビ朝日系 3月8日20:53〜)をウォッチした。



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 テレビ朝日の名物破天荒ディレクター、「ナスD」こと友寄隆英。アマゾンに行けば、ためらいなく川の水を飲み、魚を生で食らい、謎の染料を全身に塗りたくって、肌がナス色になる。

 そんじょそこらの芸人よりも、よっぽど出来る男・ナスD。そんな彼が新たに目指したのは、ネパールのドルポ地方だ。

「開局60周年記念特別企画」ってことで、金も時間も気合もぶち込んだと思われる2時間半。気合が入りすぎたのか、番組開始40分たっても目的地・ティンギュー村に到着しない。時に風速20メートルの風が吹きすさぶ峠。切り立つ崖。ふいに現れる青い湖。

 ドローン大活躍の映像は美しいけれど、画面右上に「氷と雪に閉ざされた秘境の地 天空のヒマラヤ部族 決死の密着取材150日間」てテロップが最初から最後まで出っぱなし。

 これはあれだ。サッカーの代表戦における「絶対に負けられない戦いがそこにある」だ。テレ朝の「右上にテロップ出さないと死んじゃう」病恐るべし。

 苛酷(かこく)な道のりを歩き倒し、たどり着いた天空の村。ナスDが、あっと言う間に村人の懐に飛び込む。勧められたバター茶を何杯も飲み干し、村の子供の似顔絵を描く(抜群に絵がうまい)。

 さて、テレ朝は、イモト(アヤコ)の代わりにナスDで「世界の果てまでイッテQ!」がやりたいのか、はたまた「世界ウルルン滞在記」か。と、思いきや後半1時間、思いっきり番組のテイストが激変した。

 厳冬期、牧草地を求めて家畜と共に大移動する家族の映像。淡々とした第三者視点のナレーション。

「今年はたくさんヤギが死んだ」。寒さに耐える少女の顔。吹雪にかすむ尾根。もう気分はNHKスペシャル。

 てか、その前のパートではナスDが雪にブルーハワイのシロップかけて、村の子供とキャーキャー食べてたのに! バラエティーなの、紀行ドキュメントなの。ふざけてるの、真面目なの。

 150日間かけた取材。のべ1500時間も撮影したという。あまりに撮影素材がありすぎて、どうまとめたらいいか迷子になったとしか思えない。

 主役はナスDなのか、天空の村人たちなのか、その生活なのか、大自然なのか。さっぱりわからないまま終了。ただひとつわかったのは、絶対に消えないテロップが右上にある。

※週刊朝日  2020年3月27日号