作家・北原みのり氏の週刊朝日連載「ニッポンスッポンポンNEO」。今回は働く女性たちの企業を超えた横のつながりについて。



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 韓国ドラマ「よくおごってくれる綺麗なお姉さん」。タイトルからは想像できないけれど、年の差のある(女性が上)男女の恋愛を主軸にしながらも、韓国社会の#MeTooや#KuTooの空気が伝わるフェミドラマだった。

 日韓の職場環境は、“女側から”見ると、とても似ている。例えば女性のヒールは“まともな社会人”の証しだが、男性たちは会社では革靴を脱ぎ、ゴム草履で過ごす。大切な接待の場では「美人」が切り札に使われ、コミュニケーションを理由に行われる会社の飲み会では、酔っていれば許される前提でセクハラが横行する。そういう組織では、女性たちは簡単に分断される。声をあげるかあげないか、上司とご飯を食べるか食べないか。差別されるとは、しなくてもいい選択を迫られ、仲間と手をつなげないことだ。

 3月8日の国際女性デーに、大手メディアの女性記者たちが、組織を超え、ジェンダー平等のため連帯しようと声をあげた。

 性暴力に抗議するフラワーデモを呼びかけたことで、全国のメディアの女性たちと知り合えた。社内の性差別に苦しむ人は少なくなく、性暴力問題の企画が通らない現実もある。「事件報道は被害者が気の毒」と却下されたり、「性暴力が問題なのはわかったから!」と逆切れされたり、「女はいいね」と意味不明なことを言われたり、「公私混同」と意味不明な誹謗中傷の体験は珍しくない。

 地方の新聞社には、90年代初頭まで女性トイレがない建物も珍しくなかったという。セクハラを報じながらセクハラ被害に遭う日常だ。そんな男性社会で女性記者が味わう苦悩は、華やかなマスコミの高所得女性の特権などではない。だからこそ、先輩と後輩の縦のつながり、そして社を超えた横のつながりによって生まれた連帯は、革命的だと思う。もうこれ以上、私たちは分断させられるわけにはいかないのだから。

 まぁなかには「日本にシスターフッド(女性同士の連帯)はなかった」「日本の#MeTooはメディアが始めた」など勉強不足なことを公言する記者もいるが、これを機に学んでほしい。長いシスターフッドの歴史、名もない女性たちの#MeTooが、今の女性を支えているのだ。

 朝日新聞初の女性記者は竹中繁だが、考えてみれば彼女は「よくおごってくれる綺麗なお姉さん」である。女性の連帯を求め、職種の違う女性たちが集う「月曜クラブ」という勉強会を社内で主催した。そこには神近市子をはじめ、日本の女性運動に欠かせないフェミニストが集まった。なにより竹中繁は、8歳年下の鳩山一郎と恋に落ち子どもを身ごもる。明治のことだ。身分違いに、年齢差で結婚は許されなかったが、自らの仕事を続け、女性と共に新しい時代をつくろうと、女性の道を切り拓いた。

 そんな女性たち。気前よく、私たちにたくさん与えようと働くお姉さんの連帯が私たちには必要だ。メディアの女性たちの連帯に、だから私も加わりたい。

※週刊朝日  2020年3月27日号