公文書改ざんを強要され自死した赤木俊夫さん。この事件の真相を求め提訴した妻の代理人が提訴への思いを語った。AERA2020年4月6日号は、代理人の弁護士に独占インタビュー。



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 多くの記者が詰めかけた記者会見。原告代理人の弁護士二人の前には、財務省近畿財務局管財部の職員だった赤木俊夫さん(当時54)の生前の愛読書が並んでいた。白川静『常用字解』、坂本龍一『音楽は自由にする』、『Yellow Magic Orchestra×SUKITA』、日垣隆『折れそうな心の鍛え方』の4冊。書道を嗜(たしな)み音楽を愛し、社交的で人と争うことはない誠実な努力家だったという赤木さんの人柄が伝わってきた。

 3月18日、赤木さんの妻が、国と佐川宣寿元財務省理財局長を相手取り総額約1億1千万円の損害賠償を求めて大阪地裁に提訴した。

 森友学園問題に関する財務省の公文書改ざん問題で、改ざんを指示され、抵抗したものの従わざるを得なかった赤木さんが自ら命を絶ったのは2018年3月7日。いまなぜ提訴に至ったのか。代理人の一人、生越(おごし)照幸弁護士(49)はこう語る。

「夫の死の原因と経緯を、任意でも、情報公開請求しても教えてもらえない。残された道は訴訟しかないと、やむなく訴訟に至ったという経緯です」

 赤木さんの死から2年、この間原告の赤木さんの妻は「体の半分がもぎ取られた」ような苦しみの中にありながら、夫の死の真相を知りたいと思い、佐川元理財局長に説明と謝罪を求める手紙を弁護士を通じて2回送ったが、説明はなかった。麻生太郎財務大臣や佐川元理財局長に墓参に来てほしいという希望を持っていたが、麻生大臣は遺族が来てほしくないと言っているから行っていないと国会で答弁し、そのことにも精神的苦痛を受けた。

 夫の死の真相を知りたいと思った赤木さんの妻は、保有個人情報開示請求をしたが、70ページにも及ぶ開示資料は大部分が黒塗りにされていた。生越弁護士は言う。

「一般労働者の労災の際も個人情報開示請求をすることがあり、誰が何を言ったかという部分はマスキングされますが、どういう理由で認定したかという理由の過程や大枠のストーリーは出てくるものです。このような大部分のマスキングは、ご遺族の知りたいという気持ちに反するような開示の仕方です」

 赤木さんの死はニュースで知った生越弁護士。数多くの過労自殺事件を手掛けているが、今回の訴状を書きながら、改ざんの強要というパワーハラスメント、長時間労働、連続勤務、職場の支援のなさ、休職中のケアの不足など過労自殺の悪いところが全部詰まった事件だとやるせない気持ちになった。

「彼の手記の中に、『抵抗したとはいえ関わった者としての責任をどう取るかずっと考えてきた。しかし事実を公的な場所で説明することができない。今の健康状態ではこの方法を取るしかない』ということが書かれています。訴訟は彼の遺志でもあると思いました」

 訴訟の目的は、赤木さんの自死の原因と経緯を明らかにすること、行政上層部の忖度(そんたく)と保身に基づいた判断で末端の現場の職員が自死に追い込まれるようなことが二度と起こらないようにすること、そして改ざんの経緯を公的な場で説明するという赤木さんの遺志を継ぐこと、だ。(編集部・小柳暁子)

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