「紀州のドン・ファン」と呼ばれた和歌山県田辺市の資産家・野崎幸助氏(当時77)が2018年5月に謎の死を遂げてから、もうすぐ2年が経過しようとしている。



 野崎氏の胃の内容物などからは致死量を超える覚醒剤が検出されており、死因は急性覚醒剤中毒。三回忌を前にした今も真相は不明で、事件と事故の両面で懸命の捜査が続く。

「2年近く経つので、野崎氏の死亡当時の捜査員からはかなり入れ替わって捜査を継続している。野崎氏と関わりがあった人物には、たいてい事情を聴いた。自宅の妻と家政婦だけがいる場所で覚醒剤を飲み物などに混入させたとみられる手口があまりに怪奇で、まだ事件か事故かも判然としない」(捜査関係者)

 野崎氏は貸金業で財を成した一方、篤志家として地元の田辺市などに多額の寄付をしてきた。地元の有力政治家の支援者で、55歳下のSさんと結婚式を計画していた時には、この政治家にも出席を求めていた。

「貸金業時代に借り主などから何らかの恨みを買っていないかと捜査したが、目立った手掛かりは見つからなかった。そこで、その後は地元政界ルートも洗っている。野崎氏が生前、付き合いのあった地元の政界関係者に話を聞いている」(同)

 警察から事情聴取を受けたというある政界関係者は、本誌にこう語る。

「野崎氏の死についていろいろ聞かれましたが、2年くらい会っていなくて、特別、話すことはなかった」

 野崎氏は生前、国会議員の秘書とも交流があった。

 本誌既報のとおり、野崎氏は田辺市に自身の遺産を全額寄付する遺言書を残していたが、その遺言書も国会議員の元秘書宛てに届いたものだった。

 田辺市は家庭裁判所の「検認」を経て、遺言書を真正と判断して遺産の受け取りを表明している。野崎氏と20年来の交友があった知人はこう語る

「野崎氏に高利でカネを貸し付けられた人は田辺市にも多く、市が遺産を受け取ることには反発もある。それに、野崎氏の親族から『筆跡が、ある弁護士事務所に勤める事務員に似ている』と、遺言書の真贋をめぐってクレームがついているそうです」

「謎の死」の真相だけでなく、「遺産」をめぐる対立も複雑怪奇。視界が晴れる日は来るのだろうか。(今西憲之)

※週刊朝日  2020年5月8‐15日合併号