新型コロナ感染症の最前線で闘う医療関係者たち。現場からのSOSに耳を傾けなければならない。AERA 2020年5月4日−11日合併号では、ひっ迫した現場と向き合う医療関係者らに話を聞いた。



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●ワクチンに期待開発が進むまで持ちこたえる
服部健史さん(46)北海道医療センター呼吸器内科医師

 当センターは、急性期病院として3次救急を担う一方で、結核診療も行う第二種感染症指定医療機関となっています。

 北海道では全国でも早い段階で新型コロナウイルスの感染が広がり始め、当センターでは2月21日から感染者の受け入れが始まりました。鈴木直道知事が道内に緊急事態宣言を出して、外出をしないように求める7日前のことです。

 これまでに40人ほどの感染者を受け入れてきました。呼吸器内科主導で治療方針を立てて、人工呼吸器や人工肺が必要になるときは、救急科スタッフの力も借りながら治療にあたっています。

 結核診療の歴史がある当センターでは、もともと感染症の経験を積んでいるスタッフが対応にあたることで、大きな混乱なく感染者の受け入れに移行できました。しかし、未知のことも多くスタッフはみな、不安を抱えながら働いています。

 ガウンやマスクをはじめとした医療用具の不足もそうですが、医療従事者の数はもっと不足しており、感染者が更に増えた場合の診療体制の再編成も深刻な問題です。

 道内では、一時減りかけた感染者が4月からまた増え始めています。このままいくと、入院診療だけでの対応は難しくなるでしょう。あらゆることの先行きが不透明で、診療スタッフも精神的にまいってきており、薄氷を踏むような毎日です。

 現在の感染状況を見ていると、「すぐに終息」という状態にはならないと思います。治療はまだ確立したものがなく対症療法が主体となりますが、いくつかの薬剤が有効であるかもしれないとされています。しかし、どこの施設でも入手できるわけではなく、実際に処方をしていますが、すべての人で明らかな効果を実感できるというわけではありません。

 日本ではクラスターを焦点にした調査を行い、外出自粛による行動変容と組み合わせて封じ込めようとしていますが、現在の状況を鑑みると限界がありそうです。世界全体の終息を考えると、ワクチンの開発に期待しています。それまで何とか、現場で持ちこたえたいと考えています。

●強調されるのは落ち度ばかり行政は支援を
小倉嘉雄さん(63)相模原中央病院事務長

 2月13日夕刻、相模原市保健所疾病対策課から一報が入りました。当院から転院して死亡した患者さんが新型コロナウイルスに感染していた、という内容でした。すぐに濃厚接触者を洗い出し、PCR検査が実施されました。担当だった女性看護師と3人の入院患者に感染が確認され、院内感染が疑われるケースとして報道もされました。

 その直後、当院の職員への差別的な言動が報告されるようになりました。感染したわけでもないのに、職員の子どもが保育園の登園を断られたり、職員の配偶者が職場から自宅待機を命じられたり。医療従事者に感染があると病院や施設の落ち度が強調されて、働く職員まで攻撃対象とみられたのだと思います。

 感染が明らかになったアナウンサーには、「感染防止を呼びかける立場なのに」と批判する人もいるかもしれません。でもそれは、正しいのでしょうか。

 ウイルスはわからないところにひそんでいます。当院の病室調査でも、ベッドの収納やテレビのリモコンなど、いろんな所に付着していたことがわかりました。恐怖からくる攻撃が間違った方向に向かわないか、一連のマスコミ報道から2カ月以上がたって、今も心配しています。

 当院では現在は新型コロナの患者さんの受け入れはしていません。しかし、今後感染が広がったときには中等症の感染者を診てほしいと、行政から依頼がきています。2月の一件では職員を差別や偏見の目から守れなかったという思いがありますが、今度は本格的に感染症から職員を守らなければなりません。

 しかし、現状では防護服やフェースシールド、マスク、消毒薬などがほとんど入手できず、このままだと竹やりで戦車に向かうような状況になりかねません。新型コロナ以外の治療も地域に必要とされています。診療を続けられるような支援を行政には求めたいと思います。

(構成/編集部・小田健司)

※AERA 2020年5月4日-11日号